関係者の素顔に迫るインタビューを競馬ラボがオリジナルで独占掲載中!

小滝崇調教助手

1番人気で挑んだオークストライアル、フローラSでは力の違いを見せつけ快勝。西の秘密兵器どころか本命馬として名乗りを上げたデニムアンドルビー(牝3、栗東・角居厩舎)だが、バックボーンを辿ればそれも必然。意外にも“初のオープン馬の担当”という小滝崇調教助手に、この中間の上積みや大一番を前にしたお嬢様デニムの素顔を伺ってきた。

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初めて触るオープン馬で重賞勝利

-:フローラSは見事な勝利でしたね。おめでとうございます。大胆なレースでしたが担当者の小滝さんにとってはヒヤッとした内容だったかもしれませんね。

小滝崇調教助手:ありがとうございます!クリスチャン・デムーロ騎手が乗って、未勝利を勝ってくれた時の印象がズゴく強かったので、直線で伸びてくれたら良いなと思っていました。まさかあんな位置から行くとは思わなくて。“どういうレースをするのかな?大丈夫かな”と思いながら観ていました。いつの間にかモニターの画面が変わったら、もう勝負の圏内にいたので、“これはもしかしたら!”と思いました。正直、レース前は“権利がとれたら……”と控えめに思っていたので、勝った時は僕が驚いてしまいました。(今まで)オープン馬も触ったことがなかったので、初めての重賞のレースで勝てるとも思ってなかったし、“あれよあれよ”という間に勝った感じでした(笑)。すごく逞しい競馬をする子だなとも思わされましたね。

-:見た目だけで言ったら非力そうで、素軽い体をしています。その反面、力強さは感じなかったので、あの馬場で差し切った脚にはびっくりしました。

小:フローラSの1週前追い切りでは坂路の馬場が悪い状態でした。本当は、もっと軽めに乗らないといけないところだったんですが、馬なりで54秒ぐらい出てしまったんです。他の馬が55秒あたりで手一杯なところをぶっちぎっちゃって、案外パワーはあるんだなと思いましたね。確かに軽いフワッとしたキャンターをする馬なので、“軽さが売りなのかな?”と思っていましたし。初めの頃は厩舎でも「スゴく軽さがあって、芝向きの良い馬。力が付いていけばイイね」という評価だったんです。

-:見るからにバネがあって、弾むような感じですよね。

小:よく「弾む」と言われますね。

-:フローラSでは、最後方からスタートして、3~4コーナーでスッと上がって行きました。あそこで脚を使って、上がり33秒台でまとめる馬は少ないですよ。キレだけではなく、長い脚を使ってるなと思いました。普通はあそこからラップを上げて行ったら、脚が上がりそうなところでしょう?それでも上がりが33秒8というのはスゴい。

小:ハイ、僕もビックリしましたね。

-:逆にこの馬を良馬場で走らせたら、“どんな競馬をするんだ?”と思ったんです。我々はそこが未知数だけに、普段乗っている感触を教えてください。

小:少し雨が降って、馬場が悪かったですからね。良馬場だと、どうなるんでしょうねえ。ああいう軽いキャンターをするので、軽ければ軽いにはこしたことはないんでしょうけれど。先ほど坂路の話もしましたけれど、重い馬場は苦にしないとは思うんです。1回見てみたいですね、綺麗な馬場でどんなにキレるのか。

不安があったカイバ食いも解消

-:しかも、これだけの血統ですから。母系を辿っていっても、トゥザヴィクトリーをはじめ、実績馬が沢山出てきますよね。担当者としても名誉なことですね。

小:スゴい良血馬なので、血統好きのファンにはたまらないと思いますね。そういう意味では僕も血統ファンと同じ気持ちかもしれません。

-:血統的な背景だけじゃなく、性格的にも扱いやすい馬に見えます。

小:最近でこそ、少しは競走馬らしいピリピリした感じが若干ありますけれど、馬房の中でもジッとして、馬を繋ぐことをしなくて良いぐらいです。血統の良さから来る“お嬢さん”という感じですね。

-:それだけ人と良い関係を築けているとも言えますね。

小:沢山、人間に触れてもらってるんでしょうね。産まれた時から大事に触られてきている馬だと思うので、牧場時代からの育成が、この馬の性格の良さにもつながっているんだと思います。

-:幸せな馬ですよね。

小:ハイ。今も厩舎のみんなにかわいがってもらってます(笑)。



-:乗っていて、性格面からくる乗りやすさというのはありますか?

小:すごく乗りやすい馬ですね。どこかで変なことをする訳でもないですし、なだめるのに苦労するとか、走る気がないとかそういうのもないです。本当にお利口で、優等生ですよね。

-:これまでのパフォーマンス、しかも気性にもスキがないとすれば、心配は馬体重ぐらいですか?

小:それも全然、気にしていません。今のところは大丈夫だと思います。初めの頃は、たしかにカイバ食いが悪かったんですが、前回使った時も「カイバ食いに不安がある中で、ドンドン解消されてきて」というコメントが、メディアには出ていましたよね。今はもうカイバ食いで困ることもないですし、競馬を使い始めた頃に比べると、体重の変動が少ないんですよ。

-:フローラSの時もスゴく余裕があったのが、絞れてああなった訳ではなく、輸送にも耐えられるようなくらい、体重の変動が少なくなってきたと。

小:前回はプラス2キロですよね。今までは京都、阪神で競馬に使っていたんですけれど、トレセンから向こうに運んでも絶えず微々たる変動で、プラス2キロとかマイナス2キロあたり。多分、落ちる肉がそんなにないと思うんですよね。もう仕上がった体なので。ちょっと筋肉を守る脂肪があって女の子らしいラインが出ていると思います。

-:体脂肪率が少なく、輸送での変動も少ない馬なんですね。

小:よくトレセンで計った体重からマイナスになって、京都、阪神に行くのにも減る馬がいますけれど、そういうイメージはありませんよ。

1週前はオールザットジャズとの併せ馬

-:今日(5/8)の追い切りの動きはいかがでしたか?

小:1週前の追い切りなのでオールザットジャズと一緒に併せました。角居先生から「最後は仕掛けてくれ。オールザットジャズに付いて行く感じで」という話でした。オールザットジャズの岩田さんが内から来るのをずっと待ちながら、向こうが来るのを確認してから追い出す感じだったんです。オールザットジャズはスゴくキレる脚があるので、一瞬でスパーンと離されちゃうんですけれど、それにスッと反応して付いていけました。

-:デニムアンドルビーもキレるタイプじゃないですか?

小:先生も「どっちがキレるのかなあ」と、追い切りの前に言っていました。冗談混じりにね(笑)。

-:どうでしたか。どっちがキレる感じでしたか?

小:今回はデニムが先行してオールザットジャズを待ってる感じでしたから、その分は見劣りましたかもしれません。でも、そこで差が開く訳でもなく、一緒の脚をつかってくれました。すぐにパッと反応してくれたので。相手もG1を使う馬なので、どっちが速いとかは言えないですけれど、オールザットジャズ相手でも負けない脚は持っていると思いますね。

-:時計的にはどれぐらいでしたか?

小:今日は6ハロン84秒ぐらいですね(CW 6F:84.1-67.7-52.7-38.8-11.8秒)。僕が乗ったデニムアンドルビーの終いが 11秒8、岩田騎手のオールザットジャズが11秒6。僕と岩田さんの体重差を考えれば上等じゃないですか?

-:ちなみに小滝さんは60キロ以上ありますよね?

小:軽くありますよ。岩田さんプラス1俵背負ったぐらいですかね(笑)。10キロ以上あるんじゃないですか。

-:来週の追い切りは、まだ分からないと思いますけど、そんなにはやらないでしょうね。

小:そうですね。今週ビッシリやったので、来週はちょっと体を動かす程度で良いと思います。

小滝崇調教助手インタビュー(後半)
「あくまで自然体。状態は言うことなし。」はコチラ→

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【小滝崇】 Takashi Kotaki

小学生の時にエアダブリンやナリタブライアンのレースを観て、競馬の仕事に就くことを目指す。とりわけエアダブリンは高校の夏休みに牧場まで見に行ったほど。
卒業後はノーザンホースパーク、現ノーザンファーム空港牧場、山元トレセンでそれぞれ働き、23歳でトレセンに配属になり野元昭厩舎に配属される。
思い出に残っている馬はエーシンコンファーとエーシンジャッカル。
解散後は現在所属している角居勝彦厩舎に異動して現在に至る。
持ち乗り助手として、デニムアンドルビーを担当している。