関係者の素顔に迫るインタビューを競馬ラボがオリジナルで独占掲載中!

今浪隆利厩務員

5着に敗れた天皇賞(春)までは“現役最強馬”に近い存在としてファンに支持されていたゴールドシップ(牡4、栗東・須貝厩舎)。4強と取り沙汰されながら、この宝塚記念はチャレンジャー色も強くなるが、立ち位置はそれで圧勝した皐月賞を思い出さずにはいられない。女房役としてすっかりお馴染みの今浪隆利厩務員に、競馬ラボだからこそ切り込める質問などを遠慮なくぶつけてきた。

天皇賞(春)の感想と出遅れ癖の理由

-:前回の天皇賞(春)はまさか負けるとは思わなかったファンが多かったはずですけれど、今浪さんの率直なお気持ちというのは?

今浪隆利厩務員:レース自体は結構走っている方じゃないかなと思います。展開もあるし、高速競馬になって前をカットされても、あまり差のない5着に来てるから、あの馬なりにはものすごく走っていると思いますけどね。

-:極限の馬場で?

今:そう。直前に高速というか、芝を刈ってしまったので……。それがちょっと響いたかなと。

-:思い返せば今回の天皇賞だけじゃなくて、ダービーの時も同じような雰囲気があったんですけれど、もしかしたらゴールドシップの適距離というのも、3200よりは2000mぐらいの方がいいのでしょうか?

今:そうですね。3000mよりは2400ぐらいの距離が一番あの馬には合ってるんじゃないかと。

-:有馬記念での強さをどこかで見せてもらいたいなと思うんですけれど、ひとつの課題というか、あの馬の癖というか、スタートをポッコリ出るという?

今:僕を追っ掛けてくるんですよね。だから、最初の頃はゲートの中に入ってて、ジッとしてて、僕が出て向こうに行くと何か前掻きをしてみたり、探してみたりするので、ちょこっとポコンという感じで。なるだけゲートでは出てすぐ、馬から隠れるようにしてるんだけど、前からのアレがあったもんやから、どうしてもその癖が抜けないようになった感じで。

-:今浪さんを捜しちゃってるところがあると?

今:そう。どうしても目で追っ掛けているような気がするんですよ。





-:その辺が良い意味で競馬モードに集中してくれると?

今:輪乗りとかそういう時はメッチャおとなしいからね。メンコを外しても何をしても。ダービーの時でも早めに外してみても、周りがワァーとなっても普通通り、普段のゴールドシップやったから。コレは競馬の時は全然違うな、というのはわかりましたね、落ち着いて。

-:結局、5着になってしまったので、負けた敗因とか色々と言った人もいたんですけれど、前回の気になったポイントとしては返し馬で立ち上がったり、ブッ飛んでいくようなところがなかったですね?

今:なるたけ、それをさせないようにしてるんですけれどね。もし、何かがあったら怖いから。

-:それは栗東でのトレーニング通り、成果として出たと?

今:練習でジャンピングをさせないように教えていってるから。それは段々、馬も分かってきて、それをしないようになって。

-:宝塚で応援しているファンも馬場入りの時に立ち上がったり、ブッ飛んでいかなくても元気がないということではないと?

今:元気がないということはないと思うね。

-:状態も良かったし、展開と馬場という諸々があって、前回の5着というレース結果になってしまったということですね。結果的にはファンの期待を裏切ってしまった訳ですけれど、今浪さん自身はゴールドシップは一生懸命走ってきたと。

今:一生懸命走ってきたと思っていますね。

吉澤WESTでリフレッシュ

-:レース後の疲れなどはいかがでしたか。

今:疲れとかああいうのはあまりなかったけれど、やっぱり目に見えない疲れというのが、なんぼかあるんじゃないかなと思ってます。

-:やっぱり硬い馬場を走った後は脚とか、関節とか、腱とかそういうところの疲れを一番心配しました。

今:全然、心配はなかったですけれどね。あとは牧場(吉澤ステーブルWEST)に依頼して、リフレッシュさせてくれれば良いなという感じで。

-:ジャスタウェイの放牧先が吉澤ステーブルに変わって、成果が出たのか、前回のエプソムCで2着と好走しましたね。勝ったと思って、榎本助手に「おめでとう」とメールを送っちゃったんです……。

今:勝ったと思いましたけどね。僕もパッと見てて、「アッ、勝ったわ」と思って。それからテレビを切って、次の日、ココに来て聞いて、「エッ」となったんだけどね。そんな感じだったけど……。

-:吉澤ステーブルの効果が、宝塚でも出たら良いですね?

今:今回の放牧はリフレッシュしたみたいで、馬が大きくというか、ちょっと太めで帰ってきた感じがありましたから、調整はスゴくしやすかったね。ガレて帰ってくるよりはちょっと太めで絞る。筋肉を残して贅肉を取るという分にしては、今回はスゴくやりやすかった。



-:今朝(6/12)は併せ馬で1週前追い切りだったんですけれど、併せた馬はどの馬だったのでしょうか?

今:シルクシュナイダー。この馬はダート馬だし、終いの脚の良い馬やから良いパートナーになるんじゃないかなという。

-:ご覧になっていかがでしたか?

今:テンはちょっと遅いなという気持ちがありましたから。「15-15(1F15秒) 」で入って、終いを重点的みたいな感じでやったみたいやから。だけど、反応がものスゴく良かったね、今日は。ゴーサイン出した後の反応がガァーンと抜け出して、1馬身半から2馬身引き離すという動きがあったのが、一番プラスになるんじゃないですかね。

-:一時より坂路で動くようになってきましたね。

今:坂路はいつも54~55が精一杯の馬だったんだけれど、この頃は楽に上がってこれる。その分、昔に比べたら力を付けてきたと思うな。

-:宝塚記念では天皇賞よりも人気は落とすかもしれませんが、状態に関しては甲乙付け難いですか?

今:状態に関しては良いですよ。甲乙付け難いですね。

-:その中でどっちが良いですか、天皇賞前と今回は?

今:あんまり変わらないと思うけれど、今回の方が馬がリフレッシュして帰ってきたもんだから、精神的な面からして状態は良い方じゃないですかね。

阪神ならパンパンの良馬場でも!

-:ゴールドシップと言ったら、雨に強い馬というので有名ですが、梅雨時期なのに雨が全然降らない。それがちょっと心配する要素ではありませんか?

今:何とか今週の週末は降る予定ではあるし、どっちかと言えば降った方がありがたいという感じですね。

-:もし、天皇賞と同じ硬い馬場でも阪神と京都ではちょっと違いますからね。

今:違いますからね、何にしても。この前の2歳の新馬(レッドリヴェール)の時に馬場に入ってみたけれど、スゴい芝が伸びて、“コレはシップには合ってるんじゃないか”という気持ちが一瞬フワッと、その時に思いましたね。

-:レッドリヴェールですね。おめでとうございます。勝った後、ファンの方々はアレがゴールドシップの厩務員さんだと思っていたはずです。

今:ありがとうございます。つい知らん間に言葉が出て「ステイゴールド産駒はお任せ」と言ってしまって。そういうエピソードもあって、ヘヘヘ(笑)。言うつもりはなかったんやけど、ポロッと出てしまって。

-:あのレースもG1厩務員さんが一杯出られていたレースで。

今:そうですね、ヘヘヘ(笑)。

-:その中で新馬勝ちを収められたと。ただ、あの時の馬場状態の話をすると、あそこからまた、刈ってるんですよ。

今:そうですね。すでに刈ってると。

-:ココからは芝が伸びるのを待つよりも雨が降る方が手っ取り早いんで。

今:だけど、ゴールドシップに関しては阪神ならパンパン馬場でも合っていると思います。競馬に使った時でもみんな良のパンパン馬場で、神戸新聞杯、阪神大賞典の時も良い馬場やったし、刈ってたし。だから、阪神の馬場はものすごく合っていると思いますけどね。中山と同じような馬場の感じやから、底力は出せるんじゃないかなという気持ちはありますね。

-:京都は直線が平坦ですけれど、阪神には坂があるんで、そこでゴールドシップのスタミナが?

今:底力を出してくれれば良いと思いますけどね。

ゴールドシップの今浪隆利調教助手インタビュー(後半)
「もうフェノーメノには負けたくない」はコチラ→

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【今浪 隆利】Takatoshi Imanami

昭和33年9月20日生まれ。小倉競馬場の間近で育ち、16歳の時に名古屋競馬場に見習い助手(赤帽子)として入る。そこで3年間、優駿牧場で1年の勤務を経て、JRAの内藤繁春厩舎の一員に。その後は中尾正厩舎に解散までの24年間勤務。当時の思い出を「大分、先生に鍛えられた。こういう馬はこういう風に、ああいう馬はああいう風にやった方が良いというのを聞かされて、煩い馬は煩いなりのやり方、扱い方を学ばせてもらった」と語る。担当馬の初重賞はシングルロマンの京阪杯。開業と同時に須貝尚介厩舎に入り、ゴールドシップと共に怒涛の日々を過ごす。