ゴールドシップと一枚岩の結束で捲土重来へ
2013/6/30(日)

天皇賞(春)で“まさか”の敗戦を喫したゴールドシップ(牡4、栗東・須貝厩舎)だが、このインタビューでは、それが“まさか”ではなかったことを妙に納得させられる。内田博幸騎手の発言にはそれだけの説得力があり、またゴールドシップへの愛情、そしてコミュニケーションの重要さを節々から感じとることができた。やはりこのコンビを愛さずにはいられない……。今年の宝塚記念を展望する上で必見のエピソードが詰まっている。
-:今回は栗東で2週間(6/11から)、ゴールドシップに付きっきりといいますか、連日のように調教で騎乗されると聞きました。
内田博幸騎手:乗らない日もありますけれどね。これは馬もそうだし、厩舎スタッフの方々との信頼関係を築くことになるし、良いことだと思います。やはり素晴らしい馬たちが出てくるレースですからね。ジョッキーの僕は調教という形しか力になれませんけれど、20数年間競馬に携わってきて、自分の中にある経験とか、スタッフの経験を活かして、ゴールドシップが良いレースをするように話し合いができて、厳しさもあり、楽しさもありで競馬に向かえれば一番良いんじゃないですかね。
やはり厳しいばっかりだと良い知恵も出ないし、冷静な判断もできない。まして楽しいだけだと、それも同じで良い判断ができないし、良い知恵も出ないので。そのバランスが上手く取れるような形になっていけば一番良いかなと思いますしね。
-:内田騎手は通常は美浦にいらっしゃるんですけれど、美浦にいらっしゃるジョッキーが栗東に2週間いるということはどのような考えがあってのことでしょうか?
内:これだけのG1だし、日本の凄いトップクラスの馬が出てくる。なおかつ、世界でも戦って結果を出している馬が出てくるのでね。そういう馬たちと、どれぐらいの力加減が、実際にレースをしてみてあるのかということを知ってみたいしね。今後のゴールドシップの活躍の場がどういう風になるか分かりませんけれど、そういった線引きにもなるんじゃないかなと思うので、こうすることによって、良い結果になるんじゃないかと思いますけどね。
-:普段はレース、もしくは、直前の追い切りだけゴールドシップに乗られていたのですけれど、普段の追い切りじゃないゴールドシップの動きはどんな印象を持たれましたか?
内:フットワーク良く走ってくれるので、あんまり気持ち良く走らせちゃうと追い切りになっちゃうのでね。その辺はある程度、人間がコントロールして。
-:何か新しい発見がありましたか、ゴールドシップがこういう馬かと?
内:いや、新しい発見というのは。現状、この馬が元気で、レースを走りたいなと思うような気分であれば一番良いかなと思いますね。
-:結構、ゴールドシップというのは我が強いというか……。
内:そうですね。我の強さの塊ですね。
-:そういう面で調教も楽ではないような気がするんですけど?
内:厩務員さんに曳っ張ってもらったりしなきゃいけない面がたくさんありますしね。ちょっと気難しいところもありますけれど、それが逆に負けん気の強さにも繋がっているので。良いほうに出ているように思いますしね。
-:まだ、内田騎手は落とされていないですか?
内:若い頃は元気が良すぎたようですけれど、みんなが考えて、色々とこの馬のためにやっていることが、形になっているのでね。だから、大丈夫です。毎日、毎日の積み重ねが今に繋がっていると思いますよ。


-:3歳の時はG1を3つ勝って、これ以上ない活躍をしたゴールドシップですが、特に有馬記念でのマクりきる脚。しかも、そこから突き離す脚は、今までで一番スゴかった印象があります。ファンのみんなもそれを覚えていて、春の天皇賞ではもっと強いゴールドシップを期待していたと思うのですが、5着に終わってしまいました。内田騎手からみられて、馬自体は懸命に頑張って走っているという風に感じましたか?
内:懸命に頑張って走れてるというよりも、どこか走りたくなかったみたいですよね。みんな良かれと思って、仕上げてきてますし、僕もそのつもりで乗っています。でも、当日、今考えてみれば馬場に入っていく気合や輪乗りしている時の気迫とかも……。3歳の勝っていた時は、ちょっと乗っている方が怖いと思うぐらいの気迫があったんですけどね。ちょっとその日は今イチそういうのが伝わってこなかったというか。だから走りたくない日だったんじゃないですかね。
たまたま、それが天皇賞であって。どんなに強い馬でも全部のレースを勝てる訳じゃないので。1度ぐらいは負けることもありますし、それを負けたことによって、逆にああした方が良い、こうした方が良いと学ぶこともできるので。次に繋がっていけば良いんじゃないかな。負けて悔しいのは携わっている厩務員さんや助手さんや調教師の先生とかもそう、馬主さんも。ジョッキーは手綱をとって、一番最後の結果を出す仕事ですから。
-:あのレースでゴールドシップは負けてしまった訳で、我々ファンはあのレースから何を学んだら良いのでしょう。宝塚記念の馬場入りのポイントというのは、良い頃のような立ち上がるぐらいの気合いが?
内:立ち上がること、暴れることが良いことじゃないけれど、乗っていて“ちょっとコレはかなり気を付けなければいけない”と思わないと。それぐらい伝わってくるモノがあって欲しいな。でも、今の状態は良い感じ来てますよ。
-:我々はパドックで馬体を見たり、ジョッキーが跨ってからの気合を見たりするんですけれど、どういう仕草だとゴールドシップの覇気があると思ったら良いですか。
内:乗って感じるものなので、なかなか言葉にはしにくいですよね、でも、堂々として立派に“俺様”という感じで周っていれば、間違いないんじゃないかと思いますけどね。
-:神戸新聞杯ぐらいから、馬場入りの時は立ち上がるような出方をして、僕らもビックリしていたんです。良いことではないけれど、元気がないよりはあれぐらいみなぎっていても悪くないんですね。
内:あれぐらいの怖い雰囲気があった方が力は出せるんじゃないですか。
-:ゴールドシップの細かい距離適性はどう思われますか。
内:短い距離が合っているということはないんでね。中距離、長距離が一番この馬には合っていると思います。本当にゴールドシップの体が全開で、走っていける状態と気分さえ乗っていれば、宝塚記念でも大丈夫じゃないかなと思いますけどね。
-:気分が乗っていれば、有馬記念のような軽いマクりで、スッと動いていけるところに違いが出てくると思うのですが?
内:生き物ですから。血が通って、心臓があって、脳があって、眼で見て、色んなモノを感じて馬も走っている訳で、“今日は良いぞという時”と“何か今イチだなという時”は、人間でもあるのでね。ましてやしゃべれない500キロもある馬体が、あれだけのスピードで走っていくということは、色んな馬が周りを走っている中でも、競争心がグッと出て、「やるぞ!」となっている時もあれば、そういう気持ちがあっても、後半に何か気持ちと体が付いてこないというのもあるんじゃないでしょうかね。
ゴールドシップの内田博幸騎手インタビュー(後半)
「前に行くことも……。ヤル気に任せての位置取り」はコチラ→
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■最近の主な重賞勝利 |
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公営・大井競馬所属から1989年に騎手デビュー。 |
