G1制すもチャレンジャースピリットのフェノーメノ
2013/6/23(日)
無冠に終わった昨年から一転、2013年は早くも天皇賞(春)でタイトルを手にしたフェノーメノ(牡4、美浦・戸田厩舎)。オルフェーヴルは不在、宝塚記念はまさに4歳世代の最強馬決定戦となるが、連勝中のゴールドシップに勝負付けをするため、JCで先着されたジェンティルドンナにリベンジするため、その調整には抜かりがない。今回は競馬ラボに初登場となる佐々木勝利調教助手に、デビュー当時から現在まで、ロングインタビューで天皇賞馬の素顔を伺ってきた。
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フェノーメノが全国区になるまで
-:それでは、よろしくお願いします。佐々木助手にご登場いただきますのは初めてになりますので、まずはフェノーメノの入厩当初の印象から教えてください。
佐々木勝利調教助手:よろしくお願い致します。当初は結構、物見が激しくて新馬っぽいというか幼い面を残していました。はじめは札幌に入厩したのですが、ゲート試験も二回落ちてますし、走ったら急に止まったりとか、物見のアクションが大きかったり、手を焼く子だな、という印象はありました。その頃の乗り味は目立ったところはみられませんでしたが、馬体であるとか、雰囲気がある馬だとも思いましたね。だんだん調教していくうちにオッと思うような感じにはなってきたので。
-:他の調教師さんが「あの馬はいいね」とデビュー前から言っていたのを聞きました。
佐:そうなんですか。見栄えはいいですよね。黒光りして。ただアクションがすごい大きかったので。厩務員さんとかもムチを持ってしつけるように今もちゃんとやっています。でも、古馬になってからはだいぶどっしりした感じというか、落ち着きが出てきましたけど。
-:ゲートも入りが悪かったりというのは駐立の部分とかですか?
佐:入りや駐立というよりも、ゲートを出るときですね。ボンって出るとドンって止まったり、何かに反応したり。乗り手の意志を伝えるのに時間がかかって苦労したことはありますね。段々と調教していくうちに集中力は増してきたというか、追い切りとかも「オッ」というところが出てきて、レースが楽しみに新馬の時はなりました。当時からレースセンスはいいですよね。新馬を使った時もゴール板過ぎても、すぐ右前を向いていましたし、そこで気を抜いて余裕がありましたものね。着差以上のモノを感じました。
-:新馬戦は2000mでしたね。それほど人気はなかったですよね。4番人気と。
佐:結構強い馬が揃ってましたからね。
-:そして、二戦目のホープフルS。結果は少し崩れてしまいましたけど。
佐:前が壁になったりチグハグなレースになりましたよね。トビの大きい馬なので。
-:馬込みを気にするところはありましたか?
佐:そういうのはないですね。前に馬を置いていても我慢できるので。ただトビが大きいので、こうチグハグになるとリズムに乗れない部分がありますね。
-:それが中山で結果が出せなかった理由でもありますか?
佐:そうですね。
-:まだデキていなかった、競走馬として完成途上だったということですね。
佐:ただ右回りがどうこうとかそういうのは全くありません。右回りも左回りも問題なく手前は変えられるし、スムーズな調教はできていたのでね。ただ、レースの流れという意味では、トビが大きいし、広いほうが対応しやすかったので。弥生賞の時などは最後1ハロンまで最後方ですからね。
-:それでいて、一番外からでしたね。
佐:馬群から出て、そこからの脚が1頭だけ違うのを見たら、“コイツはひょっとしたら……”って気持ちになりましたよ。実際、それからの馬ですよね。今は定着しましたが、ある程度は前で流れを作ったほうが、リズムに乗せたほうが、やっぱりいいですね。結果に繋がっていますよ。
-:ダービーの前など、佐々木助手が苦労していたことは知っているんですけれど、あの頃はこうローテーションがキツかったり、レースに合わせて馬を作らなきゃいけない厳しさだったり。一番苦しかった時期はあのあたりですか。
佐:そういうわけでもないですね。次に使うレースなどは決まっていたので。青葉賞が絶対に負けられないレースだったのですが、そこで結果を出せて。それから、“レースから、とにかく無事に帰ってきてくれ”という思いが強くなりました。さらにダービーの時はトモに力強さがさらに出てきて、結果は残念でしたけど最後まで馬は伸びていましたからね。
-:あの短い期間でも乗っていて成長したなと感じることはありましたか?さっきのトモに力強さがさらに出てきて、みたいな。
佐:踏み込みも力強くなってきましたし。でも、当時、コントロールが外れた部分もあったので、今はそれがもう安定してきましたね。天皇賞(春)でも折り合えるというか、そういう自分のペースで競馬ができるようになったという。
急成長と天皇賞(春)を振り返って
-:昨日、追い切りの後で蛯名騎手が「自分が乗る時と、佐々木さんが乗る時で違うことが、もう馬がわかっているみたいだ」と言っていました。
佐:馬もそう思うほど、だいぶしっかりしてきたということで。まぁオンとオフはしっかりできるようになりましたよね。
-:それはいつぐらいからなんですか。
佐:今年の日経賞くらいからですかね。
-:そういった状況の中でも、秋はしっかりと結果が出ていましたね。
佐:でも、あの頃は右に左にブレていました。今年の日経賞あたりから追い切りとかでもまっすぐ走れるようにはなってきてますね。
-:ステイゴールド産駒というのはあるんですか?オルフェーヴルとかゴールドシップみたいに右か左にこう。
佐:オルフェーヴルなんかはありますよね。右に行ってしまう癖が。そういうのはあったんですけれど、だいぶブレずにまっすぐ走っていますよね。天皇賞の追い切りもそうですし、今回もそうですよね。
-:過去のVTRを見ると青葉賞は抜けるときに内からこういったり、右回りだったら内にモタレたりと。ありましたものね。
佐:右回りだと左に行くときもあるんですよね。だいぶそれも調教で改善されてきましたが。
-:みんな受け継いでいるのかもしれないですよね。フェイトフルウォーなんかも、普段から立ち上がるし、大変だと言っていたので。一癖二癖あるのが、この産駒なんですかね。そういうのも魅力的といえば魅力的なんでしょうけれど。
佐:比較的、古馬になってから風格が出たというか、落ち着いてきてますね。ドッシリしてきたというか。まぁオンとオフが今はリラックスしていい時とか、今はやらなくちゃいけない、っていうのが、しっかりできつつあるというか、できていますね。
-:オルフェーヴルとゴールドシップは、同じステイゴールド産駒なんですけれど、先ほどは共通する部分を聞いたんですけれど、似てないなと思う点もいくつかあると思うんですけど、どうですか。
佐:どっしりしてるっていうか、風格が出てきたっていうのか、向こうもあるんでしょうけど、ステイゴールド産駒にしては落ち着いてるんじゃないですかね。オンとオフがしっかり使い分けられるような。レースの時も装鞍所、パドックとかでも落ち着いていて、ジョッキーが乗り出したら急にスイッチ入るというか、無駄なことをあまりしなくなってきてるんですかね。
-:前走の天皇賞(春)なんですけれども、昨年、菊花賞をパスして天皇賞(秋)に向かったことで、距離を不安する声もありました。そこはどうに感じていましたか?初めての関西遠征でもありましたし。
佐:輸送とか距離とかやってみなければわからない部分もありましたけど。でも、我慢がきいて、調教でも折り合うようになってますし、コントロールしやすくなってる分だけ、それを生かせるかなという思いもありました。
-:天皇賞(春)の前に特別対策というか、普段と変わったことは何かありましたか?
佐:折り合いに気をつけるようにはしていました。ムキにならないようには調整したつもりです。
-:やろうと思えば、時計がかなり出てしまう馬ですよね。レース前はゴールドシップの1強ムードでしたけど。
佐:向こうはG1を何個も勝ってますし、こっちは関係者みんなが挑戦者の立場というか、そういう気持ちで挑みましたね。
-:結構自信はあったんですか?厩舎のモチベーション的には。
佐:そういうのはありましたね。
-:トレセンでは結構評判になっていましたけれど。日経賞の後、中間の状態がもの凄く良いと。やっぱり佐々木さんも日頃接して感じていましたか。
佐:そうですね。ひと叩きして、状態が上がっていることは感じました。あとは自分のポジションで、リズムよく運べればと思って見ていました。さすがに声が出ましたけどね。
-:直線半ばくらいで勝利を確信しましたか。
佐:ゴール板を過ぎるまでわからなかったです。でも、一回コーナーで先頭に立ってどの馬も抜かしてないですよね。突き放すというか強いレース内容でしたね。
-:時計も速かったですし、淀みのない流れだったので結構タフなレースだったと思いますが、レース後の状態というのは。
佐:見た目ではいつものレース後の感じでした。
-:そういう面では体力とか付いてきたという感じですか。
佐:そうですね。スタミナとかも兼ねそろえてきましたね。
-:天皇賞(春)の前に「香港に行くかも」という話もありましたね。
佐:あったんでしょうけどね。先生とオーナーさんとの話し合いで今の(フェノー)メノなら行けるんじゃないかっていう結論に至ったんだと思います。
-:そして、宝塚記念を視野にという感じでしたか。天皇賞のレース後もいつもと変わらない感じであれば、次の調整もしやすいというか、目標も立てやすいですからね。
佐:そうですね。使ったことで、息とかそういう面では心配はありませんでしたからね。追い切りもずっと最初からこなしていたので。
フェノーメノの佐々木勝利調教助手インタビュー(後半)
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