オークス馬の貫禄をみせるか?メイショウマンボ
2013/10/13(日)
武幸四郎騎手五年ぶりのG1制覇となった今春のオークス。涙の勝利の裏側には、オーナー、生産者、調教師……、様々な人間ドラマが存在していた。そんな多くの人々の夢を結実させたメイショウマンボ。その母メイショウモモカから担当し続け、母娘と見守ってきたベテラン、塩見覚調教助手の目線から、秋華賞へ挑むメイショウマンボについて語っていただいた。
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デビューからローズSまで
-:新馬前から振り返っていただきたいのですが、デビュー時の体重が492キロで、牝馬にしては大型ですね。
塩見覚調教助手:背が高かったですからね。新馬の時はまだ、お腹周りも余裕があったし、レースを使ってからの馬だと思っていました。でも、楽に良い時計が出ていたので、飯田君(飯田祐史技術調教師・元騎手)も「新馬勝ちは行けますよ」というぐらいの雰囲気はあったんですね。ただ体は余裕残しでした。
-:1戦1勝のまま、阪神ジュベナイルフィリーズでしたね。
塩:新馬戦が阪神JFからちょうど2週間前の日曜日。レースから上がってくるなり、「阪神JFに登録しておいて」と今村助手にね。日曜の夕方までの申請期限の中で、そんな流れでしたよ。
-:それで、阪神ジュベナイルフィリーズを使って。でも、春を使っていって、桜花賞でも4番人気になっていますが、あの時は外枠でタメが作れなかった、という敗因でしたよね?
塩:う~ん、ホンマのとこはどうなんやろねえ……。未だにホンマはわからないんですよ。フィリーズレビューで仕上げて、こっちは獣医さんに見てもらって、絶好調のつもりでは出しているんですけどね。
-:その「?」という状態から、感動的なオークスに繋がる訳で。
塩:いや、負け過ぎましたからね。“こんなもんなんかな”というのも半分はありましたよ。“隙間、隙間”で来てたじゃないですか、桜花賞まで。ある意味、飯田厩舎特有の隙間を狙って行っていて、“本当の一流所とやると、こんなもんなんかな”というのが半分あったのと、“でも、走らん過ぎやろ”というのも半分あって、オークスの時は、ちょっと見せ場を作りたい、という感じで。勝つとは丸っきり思ってなかったので。“見せ場を作ろうや!”みたいな感じでは行きましたけどね。
-:そのオークスですが、理想的な枠に入って、インのポケットでジッとしていました。
塩:完璧でしたもんね、ジッとしていて。それで、出したい時にシュッと、そのまま出せてみたいな。
-:人気のデニムアンドルビーらは後ろから行って、より外を回らないといけないですからね。
塩:そうですね。エバーブロッサムだって、似たようなところにはいるんですけれど、コーナーリングで結構ロスがあったし。
-:内にいた利点と、渋太い末脚を早めに活かしたレースだったと思いますね。前走のローズSでは「リフレッシュ出来た」と中間にも、お話を聞かせていただいて、トレセンにいる時は20キロ増だったじゃないですか。そこから意外に減ったなと思いました。
塩:いや、毎回、桜花賞の時までは、トレセンで480~482㌔ぐらいなんですよ。それで、当日に馬運車で汗をかくんですよね。バタバタしている訳じゃないのに、昂っているんでしょう。だから、当日の細かい手入れなんて出来ませんもん、危なくて。おしりの方とか、ビュンビュン蹴って。それで、「危ない、危ない!」と言って、止めているんですけどね。
-:近場でも10キロぐらい減るのですか?
塩:京都、阪神でも10キロぐらいは普通に減ります。だから、僕の中では追い切って、次の日には体重を量って、そこがずっと目安なんで。カイバは、その日の朝はちょっと残したり、競馬場に行ったら6~7割ぐらいしか食べなかったり、ということがあって、そんな当日の馬体重より、追い切った次の日の体重を注意しているので。
-:その気にされているローズSの当週の最終追い切りが終わった後の体重というのは、どれぐらいだったのですか?
塩:500なんです。多分、見た目も変わらないし、カイバもずっと同じように食べているんで、当日の朝までは500キロをキープしていると思うんです。まあ、レース前の日は神経質に量りに行ってないし、それぐらいやと思うんです。当日は減っているので……。
-:14キロ減ってのローズSだったんですね。
塩:(オークス当日からは)プラス8でしょ。でもね、オークスの時は前日入りやから、また違うと思うんですよ。当然、オークスで馬を降ろす時に細くなったな、とは思ったんですけど、その日はやっぱり食いが悪かったんです。夜飼いぐらいから、幾らか戻ってきたんかな。それで、その日の朝からは普通に食べられるぐらいになっているんで。やっぱり競馬なので、前走との比較があるんですけど、僕としたら、桜花賞の時の方がよりリアルかな、という気はしているんです。
-:じゃあ、前走の体重というのは桜花賞から換算してプラス18キロ?
塩:だから、2~4キロはその時のボロ1個やそんな感じなんで。大体、トレセンで20キロ増えていて、競馬でも20キロぐらいやから、そうかなと。今回はもうちょっと増えているかも知れん。先週、土曜に追い切って、土曜日に量ったら、508あったので。
-:それは完全に成長分ですか?
塩:成長分というより、使って筋肉に張りが出た分、筋肉分やと思います。楽して増えている分でもないし、カイバを増やして増えている分でもないんで……。楽にはなるんですけど、そこまで気にせんとこ、とは思ってはいるんですけどね。
-:当日の馬体重なんですけど、どれぐらい増えると思っておいたら良いですか?
塩:明日量って、どうかなと(10/4に量って504㌔)。でも、先週で8キロ増やったでしょ。ローズSの時も504、502、500って、ほぼ減ってないんですよ。増えることはないけど、減っても2キロずつとか、4キロ減ったらラッキーみたいな。
-:508から10キロ減ったら、498じゃないですか。498やったら、前走から換算したらプラス12に。
塩:いや、トレセンは500でいってます。当日は僕にもよくわからへんから、常にトレセンで量る方がわかりやすいんで。
-:今、現状ではプラス8と?
塩:プラス8で、ローズSの時よりプラス8なんで。何ぼか今日、(調整を)やってるんで、太ることはないでしょうけど、ちょっと……。
-:プラス12になることはないでしょうと?
塩:そうです。でも、2とか4ぐらいは。本当は使って絞れてくるのが理想というか、普通なんでしょうけど。ただ、体つきなんかはローズSの時とは全然違うんでね。
今村康成調教助手:また筋肉が盛ってきたんでね。
-:あの時もそうでしたよ。オークスの時も1週前の時はそれ程?
塩:そうです。あれは1週間で。
今:多分、追い切った後にちょっとシュッとして、また盛ってきた感じですよね。
塩:多分、人間のアレと一緒で、一遍筋細胞を壊して、付けるんでしょ。だから今回、ローズSが終わった後、本当にシュッとしたんですよ。やっぱり獣医さんに「シュッとしたよね。でも、全体の筋肉量がないから」と言われたんです。2週間ぐらい攻め馬をやったんで、1カ月の間に馬はだいぶ良くなって、ローズSは迎えたんですけど……。まあ、良くなってというか、当然、牧場で1カ月は丸っきり休ませて、本当にガタンと筋肉が落ちて、それから乗り始めても800(mの馬場)ぐらいやからな。長めには乗ってくれてはったみたいやけど、500でキャンターぐらいなんで。でも、太くもなく、細くもなくちょうど良い体やったけど、筋肉量が全然、落ちて帰ってきたんで。それから、調教とレースで(筋肉が)付いてきてという感じなんで。
-:今朝、体を見せてもらったら、お尻の丸味とか幅とか、その辺が?
塩:全然、良くなっていますよね。
-:ここからあと1週間と競馬場で気合が乗ったら、もうちょっとパリッと見えてくると?
塩:多分、気が乗ったら、もうちょっと馬が(良く)見えてくるでしょうけど。
-:トレセンにいる時の体と競馬場に行った時の体というのは全然、違いますからね、気合が入ってね?
塩:ただ、ローズSとの比較ですよね、今回。ローズSの時よりはそれを差し引いても多分、良くは映ると思いますけどね。本当に見た目は良くなってるんでね。
-:それは塩見助手の手腕ではなく、馬の本能で?
塩:だから、そんなに苦労してませんよ、僕。エサもバリバリと食うし。
-:牝馬にとってエサを食うというのは最大のポイントですからね?
塩:最初の頃は自分で乗らされてたけど、今は今村助手がほとんど乗ってくれるでしょ。まあまあ、飯田君もちょこっと乗るけど。ホンマに僕が大変やと思うのは獣医待ちぐらいかな(笑)。
不十分な調整ながらも、格好をつけた前哨戦
-:ローズSで一つ気になった点は、あの内容で外枠を克服出来たと思うんです。それでも、最後は久々の分、ちょっと息が上がった、という感じだったんですけれど、幸四郎ジョッキーは敢えてムチの回数を少なくして乗っていたのかな、とも思いました。
塩:最後の最後にムチを落としたと聞いています。それに、(ムチで)叩かなかったんじゃなくて、もう馬の息が上がったというか……。ちょうど牧場から帰ってきて1カ月やったんですよ。それで牧場でも信楽牧場は800(m)ぐらいの馬場しかないのかな。そこでも敢えて、テキの方から「(調教を)やらんで良いから。15-15もやらなくていいから」と言って、やらんとこっちに連れて帰って来ていたんです。1週間ぐらい普通のところを乗るまでも、500(m)やら段階を踏みながら、1週間ぐらい掛けているんですよ。もう1週間して、15-15にステップアップ。だから、1週間掛けて、初めての15-15から、競馬まで2週間なのでね。獣医さんが見ていると「9割方出来上がっているよ」と言って。心臓とかはそうやったんかもしれませんけど、2週間ではね。他の陣営のこともあったんで、戦前は言ってはいなかったとはいえ、2週間であの競馬が出来たら十分やな、と思っていて。
-:最後の直線も最初は外に張って、それを幸四郎ジョッキーが直す仕草が目立って。ムチも多分、外に行っているから、あんまり使えなかったのかなと?
塩:乗っていたわけじゃないから、詳しくはわからへんけど、最後の100は止まったというか、そこでガス欠やな、という……。
-:でも、すごく内容の良いレースでしたね。
塩:いやいや、本当にトライアルにしてはエバーよりもデニムよりも一番良いステップを踏めたかなという気はしていますけどね。デニムも勝ったけど、前に進んでいかへんところがね……。まあ、次はどうなるかわかんないですけどね。
こっちは前に付けられる分、俺の方が有利やで、みたいなのはありますよね。後ろからブッコ抜かれたら、それはそれで諦めが付くし。多分、体が出来ていたら、離れたところから来られても対処出来へんけど、馬がある程度のところまで出来ていれば、馬が来ても、もうちょっと頑張れると思うんですよ。
-:まさにオークスのような。
塩:そうそう。あれでも馬群から抜けてからも、ちょっと遊んでいるというのか、フワッとなっているんで、あれがもうちょっと来られていても、もっと頑張れるかな、という気はしているんで。
-:タイプが違って、デニムアンドルビーは鋭い末脚を活かした馬ですけど、こっちはもうちょっと長く良い脚を使うタイプの渋太さがあります。
塩:ありますね。抜ける時はブンと抜けるけど、その後は馬がMAXのままは行かんような気がしているんですよ。だから、乗りにくいんやろなとは思います。
メイショウマンボの塩見覚調教助手インタビュー(後半)
「一週前追いきりの感触と状態」はコチラ→
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