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藤原和男調教助手

昨年の天皇賞(秋)は2年5ヶ月ぶりの勝利が感動を呼び、さらに騎乗したミルコ・デムーロ騎手の敬礼がエイシンフラッシュのG1・2勝目に花を添えた。内がポッカリと開いて、そこからのヴィクトリーロードは鳥肌モノだったが、今期は連覇に向けた前哨戦の毎日王冠を快勝。6歳秋にして益々順調に調整されている。今回は藤原英師の弟である藤原和男調教助手に、陣営一丸となっている大目標への意気込みを尋ねてきた。

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6歳秋にして精神面の成長顕著

-:連覇が懸かるエイシンフラッシュ(牡6、栗東・藤原英厩舎)についてお伺いします。毎日王冠は鮮やかな、この馬らしい勝ち方でした。毎日王冠前の追い切りは、若干余裕も残しているのかな、という風に思いましたがどうでしょうか。

藤原和男調教助手:そうでもないけどね。結構きっちり仕上げていましたよ。

-:毎日王冠を勝った後の、エイシンフラッシュのコンディションを教えて下さい。

藤:まだ2週前のことなので、そんなには変わっていませんね。

-:レースで福永ジョッキーが騎乗するのは約3年ぶりでしたが、追い切りの時から「すごく乗りやすくなった」という驚きを持っていました。それがそのままレースにも出た感じでしたが、和男さんから見たら毎日王冠はどのようなレースでしたか?

藤:よう考えて乗っていたと思います。待つところと行くところと、ちゃんと彼も分かっとったから、きっちりハマったみたいな。

-:去年の天皇賞(秋)は2年5ヶ月ぶりの勝利だったわけですが、あの毎日王冠の勝ちっぷりは、かつて2年5ヶ月も勝てなかった馬とは思えないくらい鮮やかでした。今となっては乗りやすさも出てきましたし、4歳頃のフラッシュとは違うというイメージを持っても大丈夫ですか?

藤:やっぱり歳を重ねて精神面が成長したことで、集中力が出てきて、折り合いも前よりつくようになってきているから、変わってきてますよ。年齢を重ねて、かつてはがむしゃらに走っていたところが、集中して、待つところは待てるようになって、ちゃんとレースで力が出せるようになったと思います。

-:エイシンフラッシュは、周りが暴れすぎたりとか、放馬の馬が来たりだとか、そういう部分で取り乱すところもあるような、繊細な馬だったと思います。その辺も随分改善されてきたでしょうか?

藤:それもだいぶ精神面の成長で補えていると思います。



-:藤原厩舎の中では、ボス的な馬ですよね。

藤:そうやね。オーラがある(笑)。

-:そのボスが今期に変わってきた部分というのはあるのでしょうか。

藤:香港が終わって、牧場に帰って、山元トレセンで獣医さんとか装蹄師さんに、じっくりケアしてもらいました。変わったというか、入念なケアをしてもらった分、順調にメニューを消化できました。

-:その積み重ねが、毎日王冠のあの鮮やかな勝ちっぷりに繋がったということですね。

藤:そうですね。見ている方からしたら、調教とか物足りなかったかもしれないけど。

-:一日の調教の瞬間だけじゃなく、時間をかけてしっかりと段取りを踏めていたということですね。今回も中間はそんなに速い追い切りが必要なく、いい意味で、前走と同じくらいの状態で出られると思いますが、連覇が懸かっている一戦ですよね。その辺はプレッシャーというか、いい意味での緊張感があると思いますが、いかがでしょう?

藤:ここまで、皆で色々やってきているから、勝てるところは勝たんとね。

-:ここはもう藤原厩舎一丸となって、勝ちに来ている一戦だと。

藤:その通りですね。

人に「ちゃんと乗れ!」と求めてくる馬

-:今朝の1週前の追い切りは、デムーロ騎手が乗って単走で追われました。動きはどうでしたか?

藤:そんなに速い時計は出してないけど、動きは良かったね。まず上がってきた時に「引っかかる」と言っていたけど、それは去年の毎日王冠終わった時もそうやったから。まだ気が乗ってるというか、それで来週辺りにスッと抜けるのかな。こんな間隔が狭いのはあんまりないから、まだ馬の気が抜けきれてないね。来週やって、抜く感じです。

-:来週もそんなに速い時計を出す予定はないですか?

藤:そこそこ強くはやると思う。今日よりはちょっと強めで、終い重点のように。





10/18(金) CWコースで84.8-67.9-52.8-39.0-13.3秒(馬なり)をマーク


-:当然、連覇に向けて視界良好と思っておいていいですね。去年の毎日王冠、結果的には着順は9着でしたけれど、その時のコンディションもすごく良かったですし。

藤:やっぱりあれはドバイ帰りで、見えへん部分があったんやろうね。

-:ドバイから帰って、宝塚記念使っての疲れですかね。でもそこから短い間隔で立て直して、天皇賞で2年5ヶ月ぶりに勝ったわけです。この馬はちまたでは、スローの瞬発力勝負の時に強いと言われていますが、僕としては意見が違っていて、一瞬の脚が凄いだけだったら、直線の長い府中でダービーを勝ったり、天皇賞を勝ったりできないと思うんですよ。それだけじゃない面があると思うんです。実際に乗っている和男さんから見て、エイシンフラッシュの脚はどういう印象ですか?

藤:脚というよりかは、すごく頭がいいね。乗っていても、思いっきり乗らないと馬が怒るみたいな。「ちゃんと乗れ!」って求めてくるような面があるんです。

-:それは乗っている人にしかわからない部分ですか?

藤:やっぱりソローッと乗っていたら、伝わってるみたいやな。

-:乗り難しい馬ですかね?

藤:うん難しい。毎日王冠の時の祐一にも「思い切って乗れよ」って言ったくらい。

-:そんなに後ろでジッと我慢して乗るっていうタイプでもなく、ある程度前に行って我慢するというレースでも、十分通用する感じですね。天皇賞は、去年のように、なるべくエイシンフラッシュの闘争心に火がつくように、4コーナーから直線までを組み立てられたらいいですね。

藤:今はその操縦性の良さのような部分が一番の武器かな。

-:昔はもっとかかっていましたものね。ルメール騎手が乗っていた有馬記念でさえも、本気で押さえ込んでいるシーンがあったり。持っている力は昔とそんなに変わらなくても、前半のリラックス度が今のほうがいいので、それが全部ゴール前に還元できているというイメージでいいですか?

藤:そうだと思いますね。

-:エイシンフラッシュの連覇を楽しみにしているファンに、メッセージをお願いします。藤原先生も勝負師で「狙ったレースは取りに行きたい」という性格の方なので、いろいろ考えられていると思うし、その前段階として、山元トレセンでの調整から、毎日王冠、天皇賞といいステップを踏めていますからね。

藤:今のところは順調ですから、来週は勝ちに行くつもりです。

-:枠もそんなに外に当たらない方がいいですよね?

藤:まあスタートの良さも武器やしね。どこでもそんなに不安はないです。

-:僕らは楽しみにしておいたらいいですね。

藤:うん。お願いします。

-:ありがとうございました。

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【藤原 和男】 Kazuo Fujiwara

栗東トレセンでは誰もが知る兄弟の三男。次男が厩舎にも所属している藤原英昭調教師で、長男は加用厩舎で調教助手を務めている。夏村厩舎でこの世界に入り、その後は北橋厩舎に所属してエイシンプレストンの調教を担当。当時の思い出について「あの馬で人生変わったみたいなもの。人との繋がりも増えたし、色んな経験をさせてもらった。悪いところの修正も大事だけど、良いところはドンドン伸ばせることを馬に教わった」と語る。小学生から始めた乗馬のテクニックと、類まれなる経験を生かして名門厩舎の屋台骨を支える。


【高橋 章夫】 Akio Takahashi

1968年、兵庫県西宮市生まれ。独学でモノクロ写真を撮りはじめ、写真事務所勤務を経て、97年にフリーカメラマンに。
栗東トレセンに通い始めて17年。『競馬ラボ』『競馬最強の法則』ほか、競馬以外にも雑誌、単行本で人物や料理撮影などを行なう。これまでに取材した騎手・調教師などのトレセン関係者は数百人に及び、栗東トレセンではその名を知らぬ者がいないほどの存在。取材者としては、異色の競馬観と知識を持ち、懇意にしている秋山真一郎騎手、川島信二騎手らとは、毎週のように競馬談義に花を咲かせている。
毎週、ファインダー越しに競走馬と騎手の機微を鋭く観察。馬の感情や個性を大事に競馬に向き合うことがポリシー。競走馬の顔を撮るのも趣味の一つ。