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須貝尚介調教師

一連の競馬から意外性が売りのゴールドシップではあるが、単勝1.2倍という圧倒的支持を集めた京都大賞典がまさかの5着。ジャパンカップは日本ダービーで5着に敗れて以来の東京2400mとなり、この舞台を制するのは、同馬にとって一番といっても過言ではない試練かも知れない。出走すれば密着取材はお馴染みの厩舎から、今回は須貝尚介調教師が自ら前哨戦の敗因を紐解き、迎える大一番に向けての意気込みを語ってくれた。

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京都大賞典の敗因はこう見る

-:ジャパンカップに出走予定のゴールドシップ(牡4、栗東・須貝厩舎)について伺います。今朝(11/13)追い切りが終わったところですが、今回はいつもとパターンが違い、ゴールドシップが先行して、僚馬のラトルスネーク(牡5、オープン)が後ろから追いかけるという珍しい形になりました。この追い切りの意図を教えて下さい。

須貝尚介調教師:もう日数的にも戦闘モードに入れていかないといけないのでね。ラトルスネークは時計の出る馬なので、ゴールドシップを先に行かせて、ラトルを後ろから追いかけさせてゴールドシップを常に息の入れにくい状態にさせようと。それでも終いは本来のゴールドシップの走りを見せてくれたからね。馬体が沈んでくれた。こういう風になることを想定してやりましたけど、よかったんじゃないですか。

-:追い切りを行った時間帯が、若干遅い時間帯でしたね。馬場が荒れてきたタイミングで時計が53秒台。終いもよかったですし、実質は51秒台くらいに近い走りじゃないですか?

尚:かなり馬場が悪い時だったね。それでも時計どうこうよりも、走りを見たかったのでね。ただ、ああいう馬場でもグッと沈んで、伸びてきてくれたことが良かったです。


「京都大賞典も具合は物凄くよかったんです。ただ、具合云々よりも当日に敗戦の原因がかなり多かったからね」


-:その辺は「須貝尚介流」の調整で、京都大賞典とは違うコンディションで出せそうですか?

尚:いやいや、京都大賞典も具合は物凄くよかったんです。ただ、具合云々よりも当日に敗戦の原因がかなり多かったからね。いきなり34度くらいまで気温が上がったし、外枠(8枠12番)から、ずっと外を走るようなレース展開になってしまったというように、負の要素ははっきりしています。体調は本当に良かっただけに、かわいそうなレースになりすぎたよね。あの時のデキがあれば、今回も全然チャンスは有ると思う。特にこの馬は涼しくなってくることで、本来の強さが発揮できると思うので。

-:有馬記念を勝っているくらいですからね。

尚:有馬記念もそうだし、冬場のほうが勝っているから。夏場より冬のほうが、元気がいいみたいだね。

-:では、この頃気温がグッと下がってきているのは、ゴールドシップにとってはプラスだと。

尚:そういう風に出てきてくれればいいんだけどね。



-:外枠とおっしゃっていましたが、宝塚記念も外枠(8枠10番)でした。枠云々で負けるような馬だとは、正直、思えないのですが。

尚:当日の暑さが堪え過ぎたよね。レース展開もあったし、いきなりゲートを出てから、あまりにもストレスを感じさせるようなレースをしてしまったから。今度はその辺りを内田君が考えて乗るだろうと思います。

-:では次は、後ろめの位置でレースを進めると?

尚:そうではなく、 “ギアの入れ方を間違えたらアカンよ”という指示をしているからね。前回はそれを間違えたレースになってしまった。

-:ポジションではなく、この馬本来のギアの入れ方で、ということですか?

尚:この馬のギアが5速まであるとしたら、この前はゲートを出て3速まで、いきなり入れてしまった。それを2速、3速と段階を踏んで入れなければいけない。位置取りどうのこうのじゃなくて、この馬自身のギアの入れ方を間違えなかったら、トップスピードに入れた時に、必ずいい脚を使ってくれると思っています。



強い馬は馬場を理由にはできない

-:次に馬場状態に関してですが、ファンの中には、"ゴールドシップはタフな馬だ"というイメージがあるので、重い馬場が得意で、時計の速い府中の硬い馬場が苦手だと思われている人もいると思うんですが、先生はどのようにお考えですか?

尚:3歳の時とは馬も違うんだけども、共同通信杯で速い馬場を勝っているわけだから。強い馬は良馬場でも不良馬場でも走らなければいけないし、馬場を理由にはしたくないよね。東京もだいぶ荒れてきているとはいえ、それでも馬場云々じゃなくて、良馬場でも走ってもらわないと、これから先に困るのでね。

-:肝心のコンディションに関してはいかがでしょう。

尚:今日の追い切りを見た感じでは、いい状態で本番に持っていけると思います。

-:京都大賞典の時も良かったというお話ですが、その時よりも良化していると考えていいですか。

尚:一回使って、本来はここが目標だからね。

-:輸送があるので、馬体重を気にする方もいると思います。今現在はどれくらいでしょう?

尚:馬体重はそんなに変動はないと思いますよ。500㌔から510の間では競馬できます。498とかでも守備範囲です。

-:馬体的な減りも気にしないで大丈夫ですか?

尚:今日の動きを見る限りは大丈夫かな。



天皇賞(秋)を制したジャスタウェイより立場は上

-:ジェンティルドンナ、エイシンフラッシュの強い2頭に、伏兵陣も揃っているジャパンカップですが、堂々と参戦できるということですね。

尚:乗り方を間違えなければ、この馬は絶対にやってくれると思います。ジェンティルも叩き2走目で良くなってくるはずだけど、宝塚記念で下しているから。

-:天皇賞(秋)ではジャスタウェイ(牡4、栗東・須貝厩舎)が鮮やかな勝利で、その2・3着がジェンティルドンナとエイシンフラッシュですから、今度はジャスタウェイに代わってゴールドシップが、ライバルを負かしにいくことになります。

尚:本来ならゴールドシップのほうが、ジャスタウェイよりも立場的には格上だからね。それを考えると、2頭とは対等に戦っていかなきゃいけないと思います。

-:ファンの期待は”対等以上”なので、また1番人気に支持されるかもしれませんよ。

尚:人気はありがたいことですが、それに応えるべき走りをしなきゃいけないね。



-:先生もご承知の通り、ファンも多い馬ですから、2回続けて取りこぼすわけにもいきません。ファンの皆様に意気込みをお願いします。

尚:前回はね、ゴールドシップにとって条件が悪すぎる要因がかなりあったのでね。それでも、勝たないといけないレースを取りこぼしているので、それは申し訳ないと思っています。今回、やっぱり巻き返して欲しい、巻き返さないといけない、と思っているので、グランプリホースの走りを期待して欲しいと思います。たくさんのファンがついて本当にありがたいことで、ゴールドシップ宛にも手紙もたくさんもらっているのでね……。

-:あと10日ありますけど、その期待に応えられるようにということですね。

尚:万全な状態で持って行きたいと思いますので、また、競馬場で温かい声援を送って頂けたらありがたいなと思います。


「プレッシャーを乗り越えてこそ、こういう舞台で戦えるジョッキーだと思ってますので。そこは騎手を信頼して、自分も信頼されるよう万全の状態で馬を持っていきたいと思います」


-:先生にも声援を送っていいでしょうか?

尚:いえいえ、それは(笑)。はっきり言って、僕らは裏の世界だから。表に出るのはやはり馬です。

-:先生は目立つキャラじゃないですか。

尚:そう?目立ってないよ。目立ちたくないですよ、ハッハッハッハッ(笑)。

-:天皇賞(秋)をジャスタウェイ、ジャパンカップをゴールドシップで獲れればベストですね。

尚:ゴールドシップの場合は、もう土を付けるわけにはいかない馬という地位にきてますからね。

-:内田ジョッキーもプレッシャーがかかると思います。

尚:そのプレッシャーを乗り越えてこそ、こういう舞台で戦えるジョッキーだと思ってますので。そこは騎手を信頼して、自分も信頼されるよう万全の状態で馬を持っていきたいと思います。

-:先生も調教師として、何度もG1を勝たれています。場数を踏まれて、以前よりタフになったという部分はありますか?

尚:そうですね。馬に色々と教えられています。これからも馬と一緒に頑張ります。

-:ありがとうございました。


●JCスペシャル対談 安藤勝己×内田博幸騎手はコチラ⇒


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【須貝 尚介】 Naosuke Sugai

1966年滋賀県出身。
08年に調教師免許を取得。
09年に厩舎開業。
初出走
09年3月8日 1回阪神4日目7R ワーキングウーマン
初勝利
09年3月14日 1回阪神5日目7R ホッコーワンマン


■最近の主な重賞勝利
・13年 宝塚記念/13年 阪神大賞典
(共にゴールドシップ号)
・12年 阪神JF(ローブティサージュ号)
・12年 アルテミスS(コレクターアイテム号)


父は定年により引退を迎えた須貝彦三・元調教師。自身は騎手として4163戦302勝。うち重賞は01年のファンタジーS(キタサンヒボタン)など4勝。 09年から厩舎を開業し、初年度は年間10勝だったが、年々勝ち星を伸ばし、昨年はゴールドシップ、ローブティサージュ、ジャスタウェイを筆頭に勝ち星を量産。先日はあの矢作芳人厩舎の記録を塗り替え、史上最速でJRA通算100勝を達成。一躍、関西のトップステーブルにのし上がった。 「トレセンLIVE!」でコラムを掲載している榎本優也調教助手が在籍していることでも、競馬ラボではお馴染み。


【高橋 章夫】 Akio Takahashi

1968年、兵庫県西宮市生まれ。独学でモノクロ写真を撮りはじめ、写真事務所勤務を経て、97年にフリーカメラマンに。
栗東トレセンに通い始めて17年。『競馬ラボ』『競馬最強の法則』ほか、競馬以外にも雑誌、単行本で人物や料理撮影などを行なう。これまでに取材した騎手・調教師などのトレセン関係者は数百人に及び、栗東トレセンではその名を知らぬ者がいないほどの存在。取材者としては、異色の競馬観と知識を持ち、懇意にしている秋山真一郎騎手、川島信二騎手らとは、毎週のように競馬談義に花を咲かせている。
毎週、ファインダー越しに競走馬と騎手の機微を鋭く観察。馬の感情や個性を大事に競馬に向き合うことがポリシー。競走馬の顔を撮るのも趣味の一つ。