元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
自分に集中した結果
2018/12/13(木)
皆様、こんにちは!暖かい冬が一転、すごく寒い冬がやってきました。急な温度低下で体調を崩している人も多いと思いますが、背中にあったかいカイロを張って、栄養をしっかりとって対策してくださいね!まだまだ冬はここからですから。そして、M-1グランプリの審査員・上沼恵美子さんに対して無礼なことを言ったとして2人の芸人が問題になっています。よくあることだと思います。負けたら誰かのせいにしたいのだと思います。しかし、それを表で他の人に言いふらすのは、カッコ悪いのではないでしょうか。選ばれている以上、上沼さんも最低限の仕事をしていると思いますから。その基準は選ばれた人が決めていいと思います。周りがそれを違うと思うのは勝手ですが、選ばれていないわけですから。どちらの気持ちもわかりますが、素晴らしい大会にケチがついてしまいました。
M-1は置いておき、まずは香港競馬を振り返りましょう。今年は日本馬にとって試練のレースばかりでしたね。第1戦として行われたのが香港ヴァーズでした。その中でリスグラシューが一度は前へ出るも競り負けて2着に敗れました。やはり本質的に距離が少し長かったのかと感じさせられました。2戦目の香港スプリントには日本のスプリント王ファインニードルが出馬してきましたが、こちらは惨敗となりました。スタートで待たされたことで気持ちが切れてしまったこともありますが、日本の今のスプリントと香港では、レベル差がプロとアマチュアほど差が開いてしまっている気がします。
香港マイルではヴィブロスが検討しましたが、こちらも怪物ビューティージェネレーションには歯がたちませんでした。こちらもスプリント同様、まだまだレベル差を感じさせられましたね。そして、一番期待して香港カップですが、こちらは展開のアヤが勝負を決めたと思います。力としてはディアドラが抜けていたと思います。それでも勝ち切れずの2着。ついていなかったですね。2着が4レース中で3回と決して悪くはありませんが、何か物足りない結果となりました。香港は新しくトレーニングセンターを作るなど更なる強化を図っている今、日本馬が勝つためには次のステージに行く必要があると思います。
同日には2歳G1・阪神ジュベナイルフィリーズが阪神競馬場で行われました。力が拮抗した戦いの中、勝利を決めたのはクリスチャンとダノンファンタジーでした。戦前より折り合いが非常に大事になると思っていましたが、そこは26歳にしてフランスでダービーやオークスなど数々のビックレースを制してきたクリスチャンにとっては、慣れた環境だったと思います。しっかりと馬とコンタクトを取り、スタート後もリラックスさせることに集中しました。まるで兄ミルコを見ているような馬を信じ切った乗り方だったと思います。迎えた4コーナーではクロノジェネシスが早めに動き、ダノンファンタジーを蓋しようとしました。しかし、コーナリングの技術も天下一品のクリスチャンがハナを入れ込むと併せの形で直線を迎えました。そして、そのままクロノジェネシスを競り落とし見事な勝利を上げました。
この走りを見ていると決して抜けた存在ではなかったと再認識しました。むしろ馬としてはクロノジェネシスが勝っていたように思います。しかし、自分の競馬に集中した馬と意図しないところで相手を意識しすぎて動いた馬。このタイミングが今回の勝因と敗因になったと思います。北村友君にとっては非常に悔しい敗戦となってしまいましたね。しかし、これで彼がもう一つ上のステップにいく気がします。昔から上手いと評価を受けており、今年は自己最高の勝利を上げているだけに、まだまだここからだと思います。
牝馬が終われば次は2歳マイルチャンピオンを決める戦い朝日杯フューチュリティステークスが阪神競馬場で行われます。今年は怪物牝馬グランアレグリアにルメールが乗れないということで、牝馬ながらこちらに回ってきました。勝ちっぷりにタイムも素晴らしく、敵う相手はいるのかと正直、疑問に思ってしまいます。
それに待ったをかけたい無敗馬がアドマイヤマーズとファンタジストではないでしょうか。アドマイヤマーズは決して派手さはないですが、レースでは堅実に相手なりに走るためグランアレグリアと走った時にどんな走りを見せてくれるのか非常に楽しみです。ファンタジストに関しては、前走でも折り合いをつけ素晴らしい脚を見せてくれました。最後にモタれていたことは気がかりですが、それでも豊ちゃんが改めてJRA・G1リーチになるのか期待したいところでもあります。この秋もよく見るミルコ、ルメール、豊ちゃんで決まるのか非常に楽しみなレースです。
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。