元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
えーん、えーん、えーん
2022/7/13(水)
皆様、こんにちは!先週の日曜日から大相撲・名古屋場所が始まりました。本来であれば競馬も中京で行われていた時期だけに、競馬に行くと力士の皆さんを見かけることも珍しくなかったのではないでしょうか。今開催のスケジュールは小倉、福島、函館のため被ることはありませんが、スポーツ選手の最小と最大が同じ場所で開催していたというのは少し面白いなと思っていましたので、また同じ時期に開催してもらえたらなと思います。
そして、今週11日・12日には世界最大といっても過言ではない2022年セレクトセールが行われました。今年は円安の影響から海外の購買者も増えている気がしていて、例年以上に日本の血統が海外へと流れていくのを心配していましたが、逆に日本の血統が世界でも求められているというのは誇らしいことでもあると思っています。今年もセール記録を更新し、257億円の売り上げとなったようです。
期待の血統も今回が最後となってしまうドゥラメンテ産駒から新しい希望サートゥルナーリアやアドマイヤマーズ、ルヴァンスレーヴといった才能あふれる新米パパにも期待が現れた金額になったと思います。この中から、未来のダービー馬が現れるのか。非常に素晴らしいセリでした。終わるといつも頭に残るのは「1億えーん、2億えーん」のコールですが、今回もより高くなった金額を見て「買えませーん、買えませーん」と頭に流れました(笑)。
先週は福島で七夕賞、小倉ではプロキオンSが行われました。特に気になったのはプロキオンSの方で、レースはスタートから砂を被りたくないエアアルマスとトップウイナー、メイショウウズマサらがやりあう形となりました。1コーナーが入った後には落ち着くかなと思っていましたが、やりあう形を見て、控えながらも息を上手くいれながら乗ったのがゲンパチルシファーと川田君でした。レースの流れを見ながら馬のリズムを整えたことで、向正面ではすでに勝つなと思わされるほど完璧なレースだったと思います。最近の彼は流れを俯瞰でき、馬の呼吸やリズムを瞬時に理解し、走らせることができるからこそ勝ち星を量産できるんだと納得させられる騎乗でした。
2着にはヒストリーメイカーが入りました。年齢を重ね、暑い小倉でどうなのかなと思っていましたが、非常に素晴らしい走りだったと思います。騎乗した小沢君にとっては勝ち切りたかったところでしたが、展開やこの馬の良さを最大限に活かしたレースだったと思います。こういった技術もあり、馬のことを考えながら乗れる騎手にはもっともっと伸びてほしいなと思います。期待していたサンライズウルスは東京の大きな競馬場から小さい競馬場になって戸惑っているように見えましたし、今回は力負けというよりは気持ちの面で馬も走りにくかったのかなと感じました。こちらは次走に注目したいと思います。
早い物で北海道シリーズの函館が最終週となります。最後を飾るべく土曜日に函館2歳S、日曜日には函館記念が行われます。函館2歳Sはデビューしたばかりの2歳世代最初の重賞だけに難しいレースですが、予想のしがいがある高配当も期待できると思っています。函館記念ではサンレイポケットが注目を集めそうです。なぜか勝ち切れないレースが多いのも特徴だと思っていますが、新潟で重賞制覇しているようにもう1度、この馬の勝利を期待しています。
そこに待ったをかけたいのが、目黒記念では2着に入るも重賞にあと一歩届かないマイネルウィルトスになるのではないでしょうか。この馬も力としては足りているだけに、あと一歩が出るかがポイントになります。そして、私が期待しているのはアラタになります。函館の馬場でも結果を出していますし、相棒の大野君がフランスで頑張っているだけに馬も頑張る!となる気がしています。ここで勝利を上げ、アラタな可能性を見せてもらいたいと思っています。
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。