苦戦の続いたG1レースとは裏腹に、独走逃げ切りの形を決めたのがリーディング争い。かねてから恩師・川島正行調教師の訃報に奮起し、リーディング奪取を誓っていたが、有言実行の形に。移籍2年目でえた感覚、一気の勝ち星量産となった要因など、シーズンを通しての騎乗も振り返ってくれた。

恩師に捧げる契のリーディング獲得

戸崎圭太

-:「G1を勝てない」という声があったとはいえ、その一方で年間を通しての成績は、しっかりと残せていたと思うので、そこの大目標であったリーディングについて触れていただきたいです。

戸崎圭太騎手:ようやく(一年が)終わったな、という感じですね、今年は。常々リーディングというのは目指しているものですし、目標としていることで、気持ちに変わりはないのですが、今年は川島先生(恩師である船橋の川島正行調教師の訃報)のことがあったので、今年獲れたことに意味があるし、今年獲れたというのは重い、大きいですね。

-:夏頃から意識を高めたというか、高まったということで。

圭太:そうですね。終盤は自分でもなかなか勝ち切るレースが少なかったので、歯痒い思いが続いたのですが、ようやく終わって、逃げ切れたなという感じですね。

-:やっぱり先生のバックアップというか、指名があって南関で実績をつくれるようになって、そのステップアップもあるからこそ、こういうステージに来られたわけですよね。

圭太:まあ、川島先生がいなかったら……どうなっていたのか。そして、これも感謝し尽くせないのは川島先生との出会いというのも、ホースブリードの社長の本多さんに大井でお世話になっていて、その方の紹介もあって、川島先生も紹介してくれたのです。本多さんがいたからこそ、先生の馬も乗れるようになり、なおかつ、あの先生がいなかったら、中央にも移籍出来たかも分からないですし、自分がこうなったというのも分かんないですよね。やっぱり先生に対する感謝は強いですよね。

戸崎圭太

戸崎騎手と故・川島正行調教師 右は川島師の息子・川島正太郎騎手


-:今年1年を振り返ると、序盤は少しダッシュが利かなかった時期があって、それが段々勝ち星を重ねられるようになってきたと思います。その要因というのはあるのですか?

圭太:3月15日までは、僕もしっくり来ない乗り方をしていたんですよね。3月15日をキッカケに、競馬でレースに乗っていてもしっかり乗れるようになりましたね。ただ、それでも、競馬の内容としては多々ミスもあるし、判断を誤ったりというのはありますからね……。ひとまずは僕自身がきちんと乗れるようになったというのは、その辺がキッカケでありましたね。

-:そのキッカケというのは、どういったものだったのですか?

圭太:上手く説明出来ないですが、色々試行錯誤しながら僕自身が変な方向に行ってしまっていて、答えが見つからずにいたところを、色々な経験の中から、それも少しずつ取り入れながら元に戻ったという感じですかね。

-:経験を踏まえつつ、マイナーチェンジしたと。

圭太:そうですね。オールチャンジじゃなくて。

-:それは、自身で考えてやったことですか?

圭太:そうですね。自然とそういう風になって。馬に乗ったことがない人では分からない話かもしれないですが……。

-:それは、周りの人からも言われるものでもなく?

圭太:それはないですね。まあ、ちょっとしたことなのでね。

戸崎圭太騎手マネージャー:余程、注目して見ていないとね。それに、根本的な思考もダメだったのでね。変な方に行っちゃってて。

戸崎圭太

快進撃の起点となった3.15の勝ち星


メンタル面も解消した一年

-:そのメンタル面と技術的な面の噛み合いが。

マネ:バランスが完全に崩れていましたから。

-:そのメンタル面のリフレッシュは、上手く出来たものですか。それはそれで難しいことじゃないですか?

マネ:誰もが1回は経験するんじゃないですか。あれだけ人気をする馬に乗ったりするようになってくれば。

圭太:まあ、地方競馬とは違い色々な方々の、今までとはニュアンスが違う訳じゃないですか。今までずっとやってきた流れとは違う風に感じ取る部分も自分にあるし、少し戸惑いがありましたね。それは1年目の途中からそんな感じが始まって、ダラダラと2年目の3月……。調べたら、それが3月15日だったんですよね。15日からしっかり乗り始めたのがあるんですよね。緊張して、プレッシャーが掛かってどうというのではないんですよね。それは地方競馬でも感じていたことなんで。ただ、こっちに来て芝だったり、ダートだったり、色んなシチュエーションがあったりするんで、その中での乗り方だったり、指示だったり、色んなシチュエーションの中で自分がこんがらがってしまったというのがありますね。

-:こちら側の競馬の方が、色々な人が指示を出してきたりだとか、一頭に関わる人数が多い訳でしょうからね。

圭太:何が良いのかが分からなくなったというのはありますよね。

マネ:自信を持っていたものが崩れて。

圭太:まあ、長かったけどね。1年弱。

マネ:自分の中で色々あるでしょうから、僕なんかは芝も乗ったことがなければ、大きいコースやアップダウンのコースは乗ったことがある訳じゃないし、色々と本人が感じるものがあるんで、自分の中で色々とやっているみたいだったから、見守ってはいたんです。

圭太:ドンドン変な方向に行っていたみたいで。

マネ:最終的には「何がしたいんだ、お前!?」みたいなことは言いましたけど、ハハハ。

戸崎圭太

-:先輩であり、サポートしている人からの厳しい叱咤もあった上で?

圭太:そうですね。自分1人じゃ解決出来なかったんで、やっぱり分かってくれる人が傍にいるのは良かったと思いますしね。

-:そのスランプ的なものは、去年の夏の福島ぐらいからでしたか。

圭太:いや、もっと前じゃないですか。もっと前ですよね。6月くらいから?

-:話し方はハキハキとしていて、挨拶もきちんとされる方で、他のジョッキーよりもスポーツマンらしい爽やかさのあるジョッキーだと思っていますが、ストレスとか、どういったところで悩みは出るもんですか?

圭太:ストレスというか、やっぱり悩みの方が大きかったですね。

マネ:答えがないじゃないですか。数学的な完璧な答えがないですから、結局は色々なことで周りから埋めていくというか、そこで答えというか、ある程度結論を導き出すしかないですから。ああしてみて、こうしてみて。

圭太:まあ、今も結果が出た訳じゃないですからね。(結論は)完璧な結果というものはないですし……。常に新しいモノが入ってくる訳ですからね。そうすると、それも取り入れて自分も成長しなきゃいけないし、その成長の仕方がちょっと方向が違って、そういう風になっていったかなという感じですね。

マネ:明らかに言えることは、移籍してきた当初よりも確実に考え方は変わっている。良い方かどうかは、それは分からないですが。

圭太:自分たちは良いと思ってやっているよね。

マネ:吸収して引き出しも増えたのかなと思っています。

圭太:成長は出来ている自分はいると思います。

マネ:またあとは、色々と入れていくだろうし、最終的には色々なものを削ぎ落してシンプルに出来れば一番良いんでしょうが、そこに行き着くのはなかなか。達観できているのは安藤さん(安藤勝己)ぐらいじゃないですか、ハハハ。最終的にそうなったのは。といっても、きっと最初からそうだった訳じゃないけれど、やっぱり凄く頭の良い人で、そういう考え方に行き着いたんだと思います。

インタビュー(後半)
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戸崎圭太

元騎手で現在はバレットを務めるマネージャー(左)が多岐にわたるサポートを行っている