現在の胸中と競馬界の未来について
2013/2/17(日)
-:後輩騎手たちに、何かアドバイス的なものはありますか?
安:「学校の教え方が一緒だろうからね。同じような騎乗というか、個性が見られないというか。騎手だから何もかもうまく乗ろうって思うのは当然なんだろうけど、中には合わないなっ、て馬はいるからね。馬に合わせようとして個性を失くすより、なるべく自分に合いそうな馬に乗ったほうが上達が早くなるような気がするんだけどね。
やっぱりね、苦手なものを克服しようと思うと、馬乗りは自分のいいものを抑えちゃう。馬にも色々なタイプがいるから、どれもこれも馬に合わせるってのはなかなか難しいよね。そうすると伸ばすべきところをつぶしちゃうような気がするよね。昔は調教師が騎手を育てるっていう感覚だったけど、今はそういう感覚があまりないからね。随分昔と変わってきたね」
-:武豊騎手の騎乗についてどう思われていましたか?
安:「俺はずっと思ってたけど、豊ちゃんなんかはほんとにデビューした頃から強い馬乗ってるから、強い馬に乗せたら見事にソツなく乗ってくるよね。グリグリの本命馬とか、普通ああいう風に乗れないよ。ほんとにミスなくね、知らん間に不利のないところにいてね、やっぱり強い馬の乗り方をすごく知っているというか、うまく乗るよね」
-:現在の競馬をとりまく環境についてどう思われますか?
安:「日本の馬のレベルがものすごく上がったのは間違いないからね。だから、生産者の方も大変だと思うわ。やっぱ社台グループがすごい強い馬ばっかり出すから、どうしても日高の方なんかは厳しいよね。オグリキャップみたいな馬なんてそうそう出ないからね。だけど、正直、ああいう馬がでてこそ競馬は面白いと思うよね。高い馬ばっかり走っててもね」
-:現役で一番乗ってみたい馬は?
安:「どうだろうね。元々そんなにどの馬に乗りたいっていうのはなかったからね。どれ乗りたいこれ乗りたいっていうよりやっぱ気持ちよく乗れる馬がいい」
-:気持ちよくっていうのは、人間関係なんかも含めて?
-:ディープインパクトは?
安:「ディープはおれ絶対合わないと思ってるから(笑)。ああいう敏感な馬はね。だから正直ね、ダイワスカーレットの時も俺じゃないほうがいいんじゃないかなって。豊ちゃんのほうがあってたんじゃないかなっ、て思ってたの。豊ちゃんには言ってたんですよ。多分、豊ちゃん乗ってた方が走るよって(笑)」
-:走る馬を見抜くにはどうすれば?
安:「色々な見方があると思う。騎手からの馬の見方もあるだろうし、調教師さんからの見方もあるし、生産者、蹄鉄屋、厩務員さんからもね。色々な部分からの馬の見方ってあると思う。とにかく言えるのは、やっぱ成長力のある馬じゃないとダメだね。これが難しいんですよ(笑)
セリの時にすごくいい馬でも、その後そのままの馬じゃ案外走らないし、あの時こういう馬だったのがすごく変わったなってのが走るんだよね。本当に馬は難しいけど、それが面白いよね」
-:本日は長時間、ありがとうございました。これからも「アンカツ流」の独特な視点で競馬界を盛り上げてくださいね。
安:どれだけできるかわからないけど、まあ、なるようになるわ(笑)」
プロフィール
安藤 勝己(あんどう かつみ)
1960年3月28日生まれ 愛知県出身
76年に笠松競馬でデビュー。78年に初のリーディングに輝き、東海地区のトップ騎手として君臨。笠松所属時代に通算3299勝を挙げ、03年3月に地方からJRAに移籍を果たす。同年3月30日にビリーヴで高松宮記念を勝ちG1初制覇して以降、9年連続でG1を制覇。JRA通算重賞81勝(うちG1 22勝)を含む1111勝を挙げ、史上初の地方・中央ダブル1000勝を達成した。13年1月惜しまれつつ騎手人生に終止符を打った。今後は「競馬の素晴らしさを伝える仕事をしたい」と述べており、さらなる競馬界への貢献が期待されている。
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