第2章「楽しんで馬に乗れ!馬のリズム、自分のペースを大切に」
2013/3/17(日)
▼動画版で歴史的対談の一部始終を目撃せよ!▼
-:お二人が一緒に乗ったレース(2012年ラジオNIKKEI賞)についてのお互いの感想をお聞きしたいのですが?
安藤「ぜんっぜん!正直、覚えてない(笑)」
戸崎「ハハハ(笑)」
安藤「俺の特技は忘れることだから(笑)。でも、自分(戸崎騎手)の馬(ファイナルフォーム①着)も強かったよな?」
戸崎「強かったです」
安藤「もう並ぶ間もなかったから」
戸崎「後ろで手応えバツグンでした(笑)。勝己さんの馬を見ながらと思って。前の騎手がしっかりした騎手だと、こう、安心感がありますね。それに付いて行けば道は開けるんじゃないかな、っていうのがありまして」
安藤「俺はあんまり自分のレースでは他の騎手のことを気にしたりしてないから。競馬に行っても、どれが相手とか思って乗ったことないし」
戸崎「勝己さんは、競馬新聞はご覧になるんですか?」
安藤「いや、全然見ない。それはもう中央に来る頃から見ないようにしてるというか、反対に見ないほうがいいっていうか……。だから、たまに自分の乗るレースの距離がわからんことがあった(笑)」
戸崎「そこまで見ないんですか!?それはびっくりですね(笑)」
安藤「あんまり位置取りを考えるより、自分の馬のリズム考えた方が大事だよね。“自分のいいリズムで行ったな”と思っていても、勝てない馬は多いからね。自分の中の経験で“いい位置だな”って思うことあるよ、もちろん。でも、反対にペースが速かったり、例えばハナに行って、“スローペースでいいな~、いいな~”と思っていて、それがいいかといったら、その馬には合ってない。逃げ馬でも、そうスローに落としたらダメな馬もいっぱいいるし、あまり楽に行くと良くない逃げ馬もいるしね。だから、位置はあまり関係ないね。まあ、思ったようにいかないよな?競馬って」
戸崎「いかないですねえ」
安藤「自分の思ったように全然いかない。だから難しいんだけどね」
戸崎「地方の少頭数とかだったら、まだ、なんとなくイメージが湧くんですけど、やっぱり(中央は)頭数も多いし、他の馬の出方っていうのも、また変わってくると思うので」
安藤「地方の頃って、だいたいメンバーが似たような感じだよな。特に上の方のクラスなんかは。それで、レースを何回かやってるとだいたいわかるけど、中央は上のクラスも、色々とメンバーが変わってくるしね。それで1頭2頭、違う馬が入っただけで、全然流れ変わっちゃうからね。それは読めないよな」
戸崎「僕も新聞を見ても“なんだか(レース展開が)わからないな~”って時があるんです」
安藤「ハハハ(笑)。変に考えるより考えないほうがいいよ、かえって。俺はそう前から思ってた。“どうせわかんねえなら考えないほうがいいや”って(笑)。その方がシンプルで、絶対にいいと思うね。馬乗りってね、不思議なもんで、その日によってリズムは変わるし、いい時はポンポンと勝つのよ。だから、案外、馬乗り自体もリズムって、すごく大事だしな。そういう部分で言っても、悪いことは忘れた方が、いいリズムに乗れるっていうか。尾を引くと、もうずっと悪いままのリズムだから。どの騎手を見ていてもそうだけど、いい時はポンポンと勝てる。そんなもんだよ」
安藤「南関東はもう随分進んでるからね、今は特に。そういうのもいるのかもしれないけど。笠松あたりは全然そんな感じじゃなかったからね。俺はいい制度だと思うけどね」
戸崎「南関東もそうですね。制度自体はまだ、きっちりとは決まってないんですけど。僕なんかもずっとやっててもらっていました。自分じゃ、やりきれない部分が絶対あると思うんですよね」
安藤「乗ることに専念していたいよな」
戸崎「そうですね。ありがたい制度なのかなって思いますけど」
戸崎「僕は、今まではずっと地方競馬でやってきたので、勝つことで気分転換にもなるし、土日で時間が空いた時なんかは、家族と一緒に過ごしていますね」
安藤「うん。その時は家に帰って、ビデオとか、テレビとを観て忘れる。そういう日がほとんど。日曜日が寝れねえのが嫌だったな」
戸崎「それはレースのことをやっぱり(考えてしまってるからですか)……?」
安藤「うん。やっぱり、それだけ(競馬のことを)思ってるんだろうな。寝ようと思っても、寝れんからまたビデオを観て……。ずっと、そういうのはあったね。だから、案外、切り替えるのに時間がかかったのかもしれないね、今になって思うと。その代わり、その後はすぐに飲んで忘れると(笑)」
戸崎「飲むことが一番いいかもしれないですね(笑)」
安藤「若い時は酒を飲むのも負けたくなかったなあ(笑)」
戸崎「やっぱり、負けず嫌いなんですか?」
安藤「本来はそうだった。若い頃は特にね。恥も何もねえもんな。勢いで飲んでた(笑)」
戸崎「僕は嫁さんにお酒を教わったって感じなんですよね。若いうちから一緒だったんですけど、(嫁さんは)すごく飲んでいて。当時、僕はまだ飲めなかったんですけど、それでこうどんどんと。“男が飲めないのもカッコ悪いから、じゃあ”って。そんな感じでしたね。やっぱり、毎日、(奥様と)二人で飲んだりするんですか?」
安藤「ほとんど(毎日)飲むな。やっぱり、家にいてホッとするのはいいことだと思うよ。家がうまくいってねえと、多分、仕事もうまくいかねえんじゃないかって思うもん。リラックスができるし、気をつかわなくて済むからな」
戸崎「中央の試験の勉強してた時に、僕は毎朝早く起きてやってたんですけど、コーヒーを毎朝作って出してくれて。すごくあれが嬉しかったし、やる気にもなったし。すごく心の支えっていうかね、そういうのもあって、すごく気持ちよくレースに臨めるっていうか。やっぱり、奥さんの存在ってすごい大事ですよね」
安藤「と思うね。おれはどっちかっていうと、働きたいタイプじゃなかったから(笑)」
戸崎「働きたくない……(笑)?」
安藤「嫁さんが尻叩いて動くっていう感じだから(笑)。馬でいうとズブいタイプ(笑)。
一同:「(笑)」
安藤「自然にそこに気を遣わなくてもいれて、楽しんでやれれば一番いいけどね。競馬もなるだけ気をつかわないように、できるだけ気をつかわないことが、俺も楽で。楽なことばっかり思って(笑)」
戸崎「いや~、でも、それは素晴らしいですよね」
プロフィール

安藤 勝己(あんどう かつみ)
1960年3月28日生まれ 愛知県出身
76年に笠松競馬でデビュー。78年に初のリーディングに輝き、東海地区のトップ騎手として君臨。笠松所属時代に通算3299勝を挙げ、03年3月に地方からJRAに移籍を果たす。同年3月30日にビリーヴで高松宮記念を勝ちG1初制覇して以降、9年連続でG1を制覇。JRA通算重賞81勝(うちG1 22勝)を含む1111勝を挙げ、史上初の地方・中央ダブル1000勝を達成した。13年1月惜しまれつつ騎手人生に終止符を打った。今後は「競馬の素晴らしさを伝える仕事をしたい」と述べており、さらなる競馬界への貢献が期待されている。
■公式Twitter■
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戸崎 圭太 Keita tosaki
80年7月8日生まれ、栃木県出身。
公営・大井競馬所属の騎手。1998年に騎手デビュー。
08年に年間306勝を挙げて、初めて地方全国リーディングに輝くと、2009年は387勝、2010年は288勝、2011年は327勝をマーク、2012年には地方通算2000勝を達成した。中央への参戦も積極的に行い、2011年の安田記念ではリアルインパクトとのコンビでG1初制覇を挙げている。
2013年に中央騎手免許試験に合格。1月末に引退した安藤勝己氏に入れ替わるように3月1日付で中央入りした。(美浦:田島俊明厩舎所属)今、ファン・関係者から最も将来を嘱望されている騎手の1人である。
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週刊!戸崎圭太