第3章「いつかリーディングを!戸崎の夢とアンカツからのエール」
2013/3/17(日)
▼動画版で歴史的対談の一部始終を目撃せよ!▼
安藤「自分が自信をもって乗る馬がいれば、もう、それは自信持って乗るしかないから。自分の馬の良さだけ活かして、もうこの馬なら大丈夫だってくらいに思って乗らないと。やっぱり、どうしても、なにか不安があるとな絶対馬に通じるもんだから。そういう点は反対に、これでダメでもしょうがない、と思って乗らなきゃ。G1だからその馬の乗り方を変えるとか、そういうことは反対にやらない方がいいっていうかね」
戸崎「周りからは『そんな風にはならないだろ?』って言われるんですけれど、めちゃめちゃ緊張するんですよね」
安藤「自分でそういう風に思うことが良くないんじゃない?」
戸崎「勝己さんは緊張するタイプでしたか?」
安藤「昔は俺も緊張したと思うね」
戸崎「ああ、そうですか」
安藤「今っていうか、最後の方はほんと緊張しなくなったけどね。だから反対にそういう意味では40(歳)を過ぎて、中央にいってよかったかもしれない(笑)。う~ん、やっぱり、昔は緊張したな。G1だからってことはないんだけれど、その馬になにか自分で不安をもっていたら、人気になっていると、その悪い部分が出るんじゃないかと思うと緊張しちゃうね」
戸崎「じゃあ、もう自信を持って乗るのが秘訣なんですね」
安藤「自信を持つっていうか、俺はその馬に乗っていて、“こういう競馬だけはしたらあかんな”“一番悪い部分だけ出さなきゃいいな”と思って乗っていたね。それで負けたらしょうがないと。大きい意味でね。だから、“こういうレースをしよう!”とかじゃなくて、“こういう競馬だけはしたくない”と思って乗るのが多かったな。ダービーのキンカメ(キングカメハメハ)なんかは全然、緊張しなかった。本当に強い馬だったから、どう乗っても勝つやろと思って乗ってたからね。
レースに関しては普段と同じように、というか、自分の馬のリズムだけ考えて乗ったほうがいいような気はするんだけれど、あとは運も必要だし、G1を勝つっていうのはね。本当にそういう部分でいい流れに乗れたのもあるしね。強い馬ばっかり回ってきたというか、乗せて頂いたっていうのもあるけれどね。それはすごく幸運なことやと思うね」
戸崎「それはやっぱり勝己さんの能力というか、僕も感じますけど」
安藤「いい馬に当たると、またコロッと変わるよ。やっぱり、強い馬に乗ると全然違ってくると思うよね。それが楽しみだしね」
戸崎「そうですね」
安藤「デットーリは光ってるね。雰囲気的にすごくオーラを感じる。あのバカに明るいところとかね。やっぱり、外国人騎手はみんな(性格が)明るいんだけれど、デットーリは飛び抜けてすっごく明るいね。俺のイメージだけれど。“ホント、コイツは考えて馬に乗ってんのかな?”って思ったぐらいに明るいし、自分で自由に乗っているというか、自由人みたいな感じ(笑)。どこに行っても、同じ感じだしね。ああいうのは、オーラを感じたし、ちょっと違うように思えたな」
戸崎「僕は外国の騎手の人はキチッとはまってるというか、馬を余さないというか」
安藤「うんうん。御すよな」
戸崎「ええ、そういうイメージはすごくありますね。だから、そういった意味でも手綱を短くってのが基本になるんじゃないかとはすごく思いますね」
戸崎「G1を勝ちたい気持ちもありますけれど、リーディングは獲りたいという気持ちが、上かもしれないですね。数字を上げるためだけではないんですけれど、トップになりたいって思いはあります。だから、レースで勝ちたいとか、そういう気持ちになっちゃって、逆にチグハグな部分があると思うんです」
安藤「俺は中央に来たのが歳が歳だったし、その時は武豊っていう大きい存在がいたから、『どっちが近道か?』って言ったら、リーディングを獲るより、G1を勝つ方が近道だったから(笑)。ただ、本当に数は全然意識してなかったね」
戸崎「数の部分では、僕もあんまり考えないようにしてるんです。わからないですしね、どうなるか(笑)」
安藤「また、いい時もあれば悪い時もあるわけだから。だから、悪い時にいかにいいリズムに戻すか、ということもね。数を勝つことを考えない方が早く元に戻れるっていうか、そんなような気がするけれどね。やっぱり、(成績が)悪いと、だんだん考えて考えて……、考え過ぎちゃって、数にこだわってると、そうなっちゃう可能性もあるからね。
リーディングっていうのはたとえば目標みたいなもので、それのために誰かを負かすとかそういうのじゃないから、そういう意味じゃ、それを目標にするのは、俺がG1を目標にするのと一緒で同じ事だと思う。まずは、第一に自分の良さを見つけて、自分の欠点も自分である程度、把握して、自分をよく見てそれに合った乗り方をするってのが上達するための近道かな。それで、自分に合った馬に乗るっていうのが近いかなっていう気がするしね。あとはもう精神面の問題やな」
戸崎「そうですね。そっちの方が大きいかなって思いますね」
安藤「でも、本当に騎手っていうのは勝つことが一番の薬。その勝つにも、勝ってリズムに乗るっていうのが一番の薬だから。まず、そういう風にうまく自分のリズムで勝ち出すと、そのまま、ポンポンってG1も勝てるようになるだろうし。そんな気がするよね」
戸崎「はい。早くそうなれるように頑張ります」
-:まだまだお二人の熱い競馬論を聞いていたいのですが、本日はそろそろお時間となってしまいました。お二人ともありがとうございました。これからも競馬ラボでは戸崎騎手を全力で応援していきます!
戸崎「ありがとうございます。早く中央のファンからも認められるような騎手になれればと思っています」
-:また、定期的に今回のような場を設けたいと思いますので、安藤さんも戸崎騎手の活躍をこれからも見守っていてくださいね。
安藤「今度は酒でも飲みながら、ざっくばらんな話がしたいね(笑)。戸崎君、それじゃあ、頑張って!」
戸崎「ありがとうございます。頑張ります!」

戸崎「僕にとって安藤勝己さんは、競馬の騎手の神様っていう存在なので、とても緊張しましたけれど、こういう機会を得られて色々な話を聞けてすごく勉強にもなりましたし、ためになったので、これを活かしてまた次のレースに臨みたいと思います」
安藤「今日は初めて戸崎くんとこうやって対談してみて、中央に来てちょうど2週間くらいになるんだけれどね、ほんともう力入ってる様子もなく安心しました。これからも間違いなく活躍すると思います」
プロフィール

安藤 勝己(あんどう かつみ)
1960年3月28日生まれ 愛知県出身
76年に笠松競馬でデビュー。78年に初のリーディングに輝き、東海地区のトップ騎手として君臨。笠松所属時代に通算3299勝を挙げ、03年3月に地方からJRAに移籍を果たす。同年3月30日にビリーヴで高松宮記念を勝ちG1初制覇して以降、9年連続でG1を制覇。JRA通算重賞81勝(うちG1 22勝)を含む1111勝を挙げ、史上初の地方・中央ダブル1000勝を達成した。13年1月惜しまれつつ騎手人生に終止符を打った。今後は「競馬の素晴らしさを伝える仕事をしたい」と述べており、さらなる競馬界への貢献が期待されている。
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戸崎 圭太 Keita tosaki
80年7月8日生まれ、栃木県出身。
公営・大井競馬所属の騎手。1998年に騎手デビュー。
08年に年間306勝を挙げて、初めて地方全国リーディングに輝くと、2009年は387勝、2010年は288勝、2011年は327勝をマーク、2012年には地方通算2000勝を達成した。中央への参戦も積極的に行い、2011年の安田記念ではリアルインパクトとのコンビでG1初制覇を挙げている。
2013年に中央騎手免許試験に合格。1月末に引退した安藤勝己氏に入れ替わるように3月1日付で中央入りした。(美浦:田島俊明厩舎所属)今、ファン・関係者から最も将来を嘱望されている騎手の1人である。
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週刊!戸崎圭太