地方競馬の最激戦区・南関東において、見事に3年連続リーディング。さらには地方全国リーディングも2年連続の獲得となった船橋の森泰斗騎手。競馬ラボでは、昨秋に行ったジャパンCイベントにも出演いただいただけでなく、テキストでの単独インタビューが約4年ぶりに実現。喜びの声が聞こえると思いきや……出てきたコメントはトップに立つ苦悩もチラリ。もちろん、2017年の展望など余すことなくタップリと語っていただいた。

(取材日：2016年12月18日 取材・構成＝競馬ラボ・小野田)

　第1章： 目標の年間300勝達成！しかし、内心は……
　第2章： トップでありながら技術面も試行錯誤の日々
　第3章： 国際化の時代 外国人騎手に負けないために
　第4章： 着実に増えた勝利の引き出し 2017年は東京ダービーを

－：昨秋、競馬ラボのイベントにも出ていただいた森泰斗騎手ですが、4年ぶりのインタビューとなりますね。よろしくお願いします！まず、2016年は目標とされていた300勝を達成されました。1年を通して振り返るといかがでしたか？

森泰斗騎手：前年(2015年297勝)が少し届かなかったので、達成できたことは素直に嬉しいのですが、やっぱり大変でしたよね。1年で300勝つって……。簡単に「来年の目標は300勝」なんて言ってしまったのですが、そう口に出すものではないと思いました。

－：その厳しさ。具体的に教えていただけますか？

森：休めないし、結果を残さないといけないですからね。やっぱりどうしてもマークされやすいし、その中で結果を出していかなきゃいけないという……。休めないから健康にも気を使わなきゃいけないですし。

－：乗り鞍を見ると、2011年くらいまでは年間1000鞍ほどという数でしたが、ここ数年は平均1500前後乗っています。やっぱり1000と1700鞍では全然違いますか？

森：いや～全然違いますね。今は朝の調教なども1頭程度なので、だいぶ良くなったのですが、数年前まではけっこう攻め馬もしていたので、けっこう辛かったですね。競馬場に来るとめまいがする……それはそれはマズイですよね(笑)。

－：これから仕事だ！というタイミングなのに(笑)。

森：体が拒否反応起こしているのか、競馬場に来ると眠くなってしまったので。でも、2016年はそういうこともなくなりました。それは周りの協力のお陰なのですが、自分なりにちゃんとそれなりに自信を持って乗ってこられたかなとは思っています。

－：4年前のインタビューを読み直したのですが、その当時は「睡眠時間が5時間くらい」と。

森：そうでしたね。今はそんなことはないですが、あの時はけっこうな数の攻め馬をしていて……。

－：その頃にちょうど減らし始めて、「調教師さんら周囲の視線が気になる」というお話で。

森：今はもう大丈夫ですね。(調教に)行っていた方がもちろん良い馬に乗れるチャンスは増えると思うのですが、こればっかりは。逆に、その体で競馬に行って、ちゃんと乗れないようでは本末転倒なので、しょうがないですね。

「今は“乗れば乗るほど競馬って難しいな”と思ってきて、逆に見えているモノが少なくて、ワッーと勢いで乗っている時の方が何かこう気持ちも乗ってくるし、けっこう良い結果になったりもするので」

－：ちなみに、今のサイクルですと、ナイターの場合はどういった1日のサイクルですか？

森：ナイターだったら8時頃に起きて、食事をして、愛犬の散歩に行ったりなど、割と時間はありますね。12時くらいに出発して、競馬をやって10時頃に帰宅。12時くらいに寝る感じですね。

－：でも、毎週・毎日が競馬ですからね。

森：それでも、正直、気持ちがけっこう疲れているというか、やっぱり何か奮い立たせる材料を見つけていかなきゃいけないなと思っているのですが、なかなか……。語弊はあるけれど、これだけの数で競馬をやっていると、どうしてもかなり集中力に欠けてしまう日もあるし、調子の波が気持ちにも出てしまうので、課題はその辺りですね。

－：それは同期の戸崎騎手も「南関東は楽しいけれど、サイクルが厳しい」と。「メリハリがなく、研究なども出来ない……」と同じことを言っていました。

森：そうそう。競馬に乗っていてフレッシュさを求めたいですよね。だから、逆にフレッシュな気持ちで乗っている若手が羨ましかったり。今は“乗れば乗るほど競馬って難しいな”と思ってきて、逆に見えているモノが少なくて、ワッーと勢いで乗っている時の方が何かこう気持ちも乗ってくるし、けっこう良い結果になったりもするので、乗れば乗るほど分からなくなるというか……。

－：でも、その壁を乗り越えた時に何かあるのか、ですね。

森：そうですね。もちろん4年前に見えてなかったモノが見えているのですが、まだまだ今の僕に見えていないモノがたくさんあると思うので。今は乗って経験を積んできた分だけ競馬って難しいなと。年間300勝したけれど、むしろ“全然勝てていない”気がしています。勢いで勝っていて、「ああ、勝った！ああ～嬉しい！」って、年間150勝くらいしている時の方が、“結果を出している”心境でしたね。今の方が精神的には追い詰められているし、悩んでいるし。

森泰斗騎手独占インタビュー(2P)
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