第3章:国際化の時代 外国人騎手に負けないために
2017/1/27(金)
-:以前、インタビューさせていただいた時にも増して、中央競馬は多様化といいますか、国際化が進んできて、外国人騎手が増えましたね。同業として、外国人騎手の騎乗ぶりはどう感じますか?
森:いや~、上手いですね。そして、すごい時代になったといいますか、JRAの日本人ジョッキーたちは大変だと思います。僕らの若い頃にはそういう外国人騎手の騎乗を生で観る機会がなかったし、インターネットもなくて、手軽に映像すら観る環境も本当になかったので、良い効果を挙げれば、JRAの若い子など、経験を吸収する頃、自分の乗り方が固まっていく時期に、そういう人たちのレースを目の前で観るというのは素晴らしいことだと思うので、レベルアップに繋がるような気がしますよね。ただ、実際にそこで対戦するのは大変だとも同時に感じますよね。
-:やっぱり観て覚えることもあるわけですね。
森:観て覚えることは多いと思いですね。そういう世界レベルの人たちが近くにいるというのはすごいことだと思うので。ただ、簡単に勝たれては面白くないでしょうし、同じ日本人としても負けたくないという気持ちは持ってなきゃいけないとは思いますよね。そこは「敵わない」と言ってしまったら、それまでというか、それはジョッキーじゃないと思うので、そういう気持ちは持っていないとダメだなと思いますね。
-:まずは気持ちで負けないように、ということですね。同じジョッキーとして、外国人騎手はどんなところが優れていますか?
森:特にルメールは余裕がありますよね。逆に、ミルコは熱があるというか。ジョッキーそれぞれ個性があるし、馬の乗り方も動かし方もやっぱり違うので、一概には言えませんが、全体的に当たりが良いし、上手い。余裕があって、馬に隙を与えないというか、やっぱり「動かす」といいますか。
「馬って出来れば走りたくないはずなんです。走りたくない馬が苦しくなってきても(外国人騎手は)隙を与えないというか、ほんのちょっとのことだと思うのですが、そういうことがレースだとやっぱり1馬身、2馬身、3馬身と違ってくるのかなと」
-:「動かす」という点はジョッキーがわかる感覚的な表現なのかなと思います。どう違いますか?
森:馬って出来れば走りたくないはずなんです。若い頃はウワッーと走る馬もいますが、走りたくない馬が苦しくなってきても隙を与えないというか、ほんのちょっとのことだと思うのですが、そういうことがレースだとやっぱり1馬身、2馬身、3馬身と違ってくるのかなと。
-:コンマ何秒という世界で走りきらせる差は大きいですね。
森:そうです。乗っていてもガチッと来ているけども、フワッとする時もあるので。そこで緩めないというか。
-:筋力とは関係ないわけですよね。
森:筋力じゃないですね。ルメールはさすが。慌てないですからね。
-:「慌てない」という意味ではおっしゃいましたけど、ご自身はどうですか?
森:けっこう慌てますね(笑)。“慌てないように、慌てないように”とはメッチャ思っています。
-:お話している限り、冷静なイメージですが(笑)。
森:メッチャ慌てていますね(笑)。見せないようにしているんですよ(笑)。慌てているとみっともないので。
-:じゃあ、人気になればプレッシャーはありますか?
森:プレッシャーになりますね。すごく緊張しますよ。G1や重賞の1番人気などに乗ってしまうと。前よりはちょっとは慣れてきましたが、やっぱり“勝たなきゃ、勝たなきゃ”と思ってしまう方なので、メンタル面の強化をしなきゃいけないなというのはあります。
-:それは数をこなして行けば、絶対にそこは慣れそうですね。
森:絶対的にジョッキーは経験が大切ですよね。経験しないと分からないので。中央のレースなんか、僕は経験がないし、芝の長丁場なんて分かんないから、正直そのことに関して予想するなど、そういうのはどうなのかなという気もしているのですが……(笑)。まあ、それで喜んでくれる人がいるなら、という感じで。
-:それを言ったら、ファンやマスコミは馬に乗ったことがない人ばかりですからね。ただ、昔はあんなに金髪にされて、尖っていたのだったら全然動じなさそうなものですが。
森:歳をとって、変に優しくなっちゃって、丸くなって(笑)。昔は強気でしたね。“俺が一番だ!”という顔をして。でも、それじゃ勝ち続けられないですよ。たまに単発的で爆発的なラッキーパンチみたいになっても、冷静に乗っていた方が絶対に良い結果が。
-:その冷静さと情熱を上手くコントロールしたいですね。
森:そこのバランスを上手く。冷静過ぎてもダメだと思うし。