このところ、「水色・白山形二本輪」あるいは「水色・白山形二本輪・袖白縦縞」の勝負服がやけに目立つ。岡田牧雄氏、そしてノルマンディー・サラブレッドレーシングの勝負服だ。これら以外にも、個人馬主名義(山田弘氏、サウンドトゥルーなどを所有)など、岡田スタッド関連馬が大活躍している。それもそのはず、昨2016年度のリーディングブリーダー争いで、ノーザンF、社台F、社台コーポレーション白老Fに続く堂々の4位に健闘したのだ。では、その大躍進の裏に何があったのか?岡田スタッドの代表、岡田牧雄氏に話を聞いてみた。

第1章


-:本日はよろしくお願いいたします。去年は大御所(ノーザンF、社台F、社台コーポレーション白老F)に続くリーディング4位という結果でしたが、躍進の理由はどこにあるのでしょう?

岡田牧雄氏:いくつかの理由が考えられるのですが、私的に最も大きかったのは、中期育成用として「えりも分場」を設けたことのような気がします。1歳の時、馬をえりもに移すのですが、ここは自然環境が厳しくて、芯の強い馬づくりに大きく貢献しているんですよ。

-:なるほど。その「厳しい自然環境」とは、具体的にどのような感じなのですか?

岡:冬場の厳しさがハンパないんですよね。寒いのはもちろんなのですが、とにかく風が強くて、一般的な木造の厩舎とかでは強風で吹き飛ばされてしまうほど。えりもの厩舎は、鉄筋とコンクリートでなければムリですね。いつだったか、テレビでニュースを見ていたとき、えりも地方が吹雪いて通常では考えられない強風に見舞われているという話が飛び込んできたので、現地の従業員に「今日のところは、馬を厩舎に戻そうか(※岡田スタッドでは夜間放牧を実施しているので馬たちは夜も放牧地にいる)?」と電話したところ、「社長、私を殺す気ですか!馬を入れる前に、私が死んでしまいます」なんて、即座に拒否られたほど(笑)。それくらいとんでもない状況にさらされる土地なんですよ。もっとも、そんな時でも馬の方は全頭無事でしたが……。

岡田牧雄

▲岡田スタッド生産馬であり、現在は種牡馬として活躍するマツリダゴッホと

とんでもないのは気候だけではありません。熊や鹿が平気で出没する場所なので、馬は終始危機感を抱いていなければならない。「自然」、「野生」に極めて近い環境に置かれているわけです。つまり、過酷な自然に打ち勝ってきた馬は、心身ともに芯が強くなるといえるわけですね。実際、早田牧場やノースヒルズさんがメチャメチャ走っていた頃は、えりもで育成していた時期と重なっているような気がします。

-:ちなみに、えりも云々は別にして、昔から「育成環境を変えるのはプラス」という考え方がありましたよね。昭和の頃でも、浦河で生産されたミスターシービーが群馬に移ったとか、シンボリルドルフが門別から千葉に移動したとか。いわゆる「二元育成」というやつです。

岡:その考えは正しいと思いますよ。社台グループにしても、宮城の山元トレセンとか、栗東近くのしがらきがありますからね。ウチも小野町(福島県)に育成施設を持っています。それと、単に場所を移すというだけでなく、放牧地の広さも重要ですね。その点、えりもは放牧地1区画あたりで40町歩、総面積で1000町歩というとてつもない広さを誇っています。まさにケンタッキーのレキシントン並み。こういった広い放牧地なら、フツーに駆け回っているだけで豊富な運動量を確保できることになるんですよ。

岡田牧雄

-:牧雄さんの関連馬がタフなのは、そのあたりに秘密があるのかもしれませんね。

岡:だと思いますよ。ただ、丈夫なのにはもう一つの理由があります。若駒は体が出来上がっていなかったり緩かったりで、早い時期からキツい競馬をさせると消耗が激しかったり、致命的な故障をしたりで、競走生活が短くなってしまいます。ですから、若いうちはあまり無理をさせず、体が出来上がった古馬になってから本格的に稼働させるという方針なんですよ。また、生産馬の配合やセリなどで購入する際も、早熟ではなく比較的晩成、そして丈夫な馬を作る(あるいは購入する)という点を重視しているのです。ちなみに、中央競馬における1頭当たりの出走回数は、1年で4.2回というのが平均値なのですが、ウチの場合は6回。この数字は「馬が丈夫」ということの証左にほかなりません。我ながら、「誇れる」数字だと思っています。

-:素晴らしいですね。では、育成以外の要因もお聞かせください。例えば、スマートファルコン(母ケイシュウハーブ)、サウンドトゥルー(母キョウエイトルース)の活躍からもわかるように、インターナショナル牧場を買い取ったことも大きかったと思えるのですが。

岡:まったくそのとおりです。インターナショナル牧場の牝馬から2頭のG1ホースが出たわけですからね。本当にいい買い物をしました。ほかにも、カントリー牧場やマツケン農場、ABCファームなどを購入していまして、それぞれが重要な役割を果たしています。なお、旧ABCファームは、「岡田スタッド」ではなく、「ノルマンディーファーム」名義で育成専門の施設として稼働しています。

-:そうなんですか。最近の活躍と併せ、なにかものすごい勢いで拡張している印象を受けます。

岡田牧雄
岡田牧雄

▲育成牧場としてグループの屋台骨となっているノルマンディーファーム

オーナーブリーダー・岡田牧雄氏スペシャルインタビュー前編(2P)
「第2章:レックス・スタッドの三本柱」はコチラ⇒