障害騎手のスタイル
2011/12/15(木)
小:話がそれまくって、何の話をしているかわからないですね(笑)。
-:じゃあ、軌道修正しましょう。小坂さんから見た高田騎手の印象を教えて下さい。
小:競馬に限らず聞けば何でも答えてくれる人ですね。レース後でも色々話をしたり、乗る馬のタイプも最近、似ているので、納得させられることが多いですね。
高:コサチュウって、俺が教えただけあって、乗り方が似ているんですよ。
小:「西谷さんと同じように乗ってこい。熊沢さんと同じように乗ってこい」と言われたって、無理ですからね。西谷さん(誠騎手)+熊沢さん(重文騎手)÷2みたいな乗り方はしたいと思いますよ。
高:俺はできないな~。
-:その乗り方のタイプをファンに伝えるとしたら、どんな感じですか?
高:熊沢さんはハミをかけて乗る方かな。
小:グイグイ系です。
白:全然違いますよ。僕らは。
高:俺とコサチュウは長手綱でプランプランとやる感じですね。馬がバランスを崩したりしたことを想定して、可動域をとっておきたいですよね。手綱を詰めて持っていると、体ごと持っていかれますし、躓いたら躓いたで、長めに持っておけば、馬が躓いても人間は残れるでしょうからね。
熊沢さんとかは鐙も短いし、膝もギュッと締めていくスタイルで、ハミを掛けて乗っていても、騎乗のバランスも良いし、けっこう人間に合わせるように走らせるので。俺が熊沢さんの真似をしろと言われてもできないですし、そこは人それぞれの考え方もあるので……。
小:でも、コウエイトライで落ちた時に熊沢さんに「そりゃ落ちるわ」って言われましたもん。馬を起こしてないからって。
高:おっ!コウエイトライの話題が遂に出てきた。
小:僕、そのあとはそれなりに乗れてきているかと思いますね。そこからは馬を起こすことばかり意識していますからね。
白:小坂はそうだよね。俺は起こすこともあるけれど、アイディンサマーとかはもうちょっと持った方が良かったなあ。
高:キングジョイもそう。
白:俺もキングジョイは掛からなかった。距離は短かったけれどね。
高:キングジョイは俺も掛からなかった。
白:でも、潤は持つ時もあるじゃない?
高:ああ~。プランプランよりは掛ける時はね。ドングラシアスとかはね。あれをプランプランにしていたら、どんどん下がって行くから。

小:間違いないですね。
白:色々な手段が出来たらいいですよね。熊沢さんの乗り方だったり、他の騎手の乗り方であったり……。
高:コウエイトライは絶対に手綱を詰めたらアカン馬だしね。
白:確かに2人は上手に乗っていたよな~。
小:(去年の)新潟ジャンプSで勝てると思わなかったね。「マジか?」と。
高:まっ、アッサリ勝たせたけどね(笑)。
(※小坂騎手の負傷で代打騎乗だった)
小:絶対、新潟とかは合わないですから。今年は9着でしたよ。
白:自分のイメージでコースに「合う、合わない」があっても、その時だけ、上手く順応させられたらいいですよね。この前の競馬(ディアマジェスティの東京ハイジャンプ)だって潤は負けてしまったけれど、別にどうってことはないですから。
小:レース前に「言っていた通りだな」と思ったレースでしたよ。中盤までは。
高:4コーナーでトラブルがあったんですよね。こんな風にロープを張って、何人か人が立っていたんですよ(※図を参照)。それで、係員の人達が叫んでいたんですよ。「コーナーを外に回れ!」とか、そういうことだったと思うのですが、レース中だったので、ほとんど聞こえなかったんです。
というと、そこに馬が寝ているという事じゃないですか?俺、落ちたのすら知らないし、先頭で走って行ったから、そこでロープのギリギリは飛べないわけですからね。2頭くらいを外に空けないといけない状況で、後ろにいる人達はレースもしやすかったし、みんな内々に入れてくるんですよ。それにディアマジェスティも全く手応えがなくなってしまって……。

小:それ、映像に写ってなかったですよね?
高:それからはダラーっと抜かれたい放題で。
白:全然違うよな。
高:馬も外に行けとロープは張っているし、人はいるし、普通、障害のところに人が立っていることもないですし。人馬共に「何?」って感じで、飛んだ瞬間にエンジンが止まったような感じでしたよ。ディアマジェスティも気を抜く馬でもないし、一生懸命走る馬なのに、そんなになってしまいました……。
小:明らかにカメラワークもおかしいと思いました。
高:3コーナーを馬なりでハナまで行っていたのにね。
白:俺もあの交わされ方を観て「やっぱり強いんだな」と思った。アクシデントはそれも競馬だとはいえね。
高:そうそう。それも競馬。たまたま俺が先頭で、わかっていたらハナには行っていないだろうし。
白:俺に行かせていたら、潤が勝っていたこともあるかもしれんしなあ。
高:3コーナーでは「ブッチギリで楽勝する!」と思っていたからね。それが敗因かと聞かれればわからないけれど、これを飛んだ時点で手応えがいきなりゼロになったのでね。でも、あんなこと、初めての出来事やからねえ。「馬じゃなくて、人が倒れて担架が来ているのかも?一刻を争う一大事なのかも?」とも思ったから。競艇でも転覆したら、外を回れという決まりもあるというし、そんなイメージだったんです。それをみんな内から来たからなあ……。
白:一瞬の勝負事やからな。内が空いたとなったら、そこは行くんやろうね。
高:そこで雄造君が「おい!潤!ゴー!ゴー!」って(笑)。
白:いや、あれ、潤にじゃなく、「潤」と「ゴー!」は別モノで、「ゴー」は自分の馬に声をかけていたんだ。

高:ウソ?飛越飛んでから、俺の方向いて言っていたで。
白:ホンマ?好きだったのちゃう(笑)?
-:(笑)。レース中に話してはいけないという決まりもあった気がしますが、どの程度なら大丈夫なんですか?
三人:あくまで簡単に声を掛け合うくらいはありますよ。
高:俺は雄造君とまこっちゃん(西谷誠騎手)とは、よく話すな。
小:西谷さんは割と周りが動いた時に反応しますよね。
白:それは色々駆け引きもあるよね。
高:俺はまこっちゃんと競り合うことは殆どないからなあ。例えば、デンシャミチという馬が小倉で勝った時、マックスチャンプにまこっちゃんが乗っていたけれど、勝負処で勝ち負けになるのは、もう2頭だけで、後続が全然いなかったけれど、全然動かへんからね。レース観たらわかるけれどね。最終障害を飛んでからの勝負。
白:いいね。2人だけの競馬というのも。それは聞かないと知らないことだし、初めて知ったわ。
高:必ずそういう風になるわな。
白:やる事が一致しているからだろうな。
高:そう、そこまで来たら、必ず強い馬が勝つはずだから、やりあう事はない。同じペースで来ているわけだし。後ろから来る馬に差されることはあってもね。だから、得なことはないし、競ったことは一回もないね。
小:レースに乗る時は人を観ますね。「誰の後ろでレースしようとか」。誰のポジションがいいとかじゃなく、そのポジションに着いた時に、周りの人によって、乗り方を考えるというか。そこを避ける事もありますし。それでいて、その人が乗っている馬の癖もありますし、障害は乗っている間の時間もあるので、一個二個と飛越の飛び方をみて、考えますね。
白:俺は“大体”かな。
小:“大体”くらいが間違いはないんじゃないですかね?
白:自分に自信を持っている時は強いですね。去年は北沢さん(伸也騎手)が強い時もあれば、誠さんが強い時、熊沢さんが強い時だってありますから。勝つべく人が勝っているというかね。
小:予期せぬ動きをされる時はあるじゃないですか?それは困りますね。
白:その人それぞれのビジョンもあるからね~。
小:あと、障害を前にして、追える人は凄いと思います。そうして生き残っているのは植野さん(貴也騎手)くらいじゃないですかね?
高:俺は追えないなあ。
白:また、あの人なりのビジョンもあるだろうね。
プロフィール

高田 潤
(Jun Takada)
1980年11月3日生まれ、大阪府出身。
1999年に騎手免許を取得すると、同年6月12日エアウィンスレット号で初勝利。2006年にドリームパスポート号で神戸新聞杯を制し、2008年中山大障害ではキングジョイ号で悲願のJGI制覇を果たした。
09年11月20日に師である松田博資調教師の元を離れ、フリーに転向。自ら厳しい道を選び、更なる活躍が期待される。
一方で、その明るい人柄から競馬界の内外を問わず交友関係は多彩。関ジャニ8のメンバーや、サッカーの松井大輔選手らとの親交も深い。

白浜 雄造
(Yuuzou Shirahama)
1979年9月25日生まれ、長崎県出身。
1998年に騎手デビュー。同期には池添謙一、太宰啓介、酒井学、中谷雄太騎手ら。初年度から障害レースにも騎乗していたが、デビュー2年目・1999年の東京ハイジャンプをレガシーロックで制し障害重賞初勝利をマーク。
いち早く重賞を制したこともあり、その後は障害レースに重きを置き始めると、05年にはテイエムドラゴンで中山大障害を制覇。障害JG1初勝利をマーク。
07年には嘉堂信雄騎手が持つ障害重賞最多勝利記録を更新。若くして、障害界の第一人者としての活躍を続けている。なお、海外での研修を積極的に経験。ニュージーランドでは厩務員として従事、フランスでは障害レースで勝ち鞍を挙げたことも知られている。

小坂 忠士
(Tadashi Kosaka)
1983年2月7日生まれ、兵庫県出身。
2001年に境直行厩舎所属で騎手デビュー。同期には川島信二、大庭和弥、難波剛健騎手ら。
デビュー2年目に平地で19勝を挙げるなど、現在でも平地・障害、どちらにも騎乗。03年に阪神スプリングジャンプをカネトシガバナーで制し、障害重賞初勝利をマーク。
また、史上初の障害重賞8勝を挙げた障害の名牝・コウエイトライの主戦ジョッキーとして活躍。うち7勝を小坂騎手自身の手で挙げている(残る1勝は高田騎手によるもの)。現在はダートのオープンクラスで活躍しているシャアとのコンビも印象深い。