平林雅芳の目

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先週土曜のニュージーランドTは関東馬、桜花賞は地元関西馬がそれぞれ優勝。
ただどちらも波乱であった。
ともに一番人気に推された馬が、その名誉に預かることなく、まったくの結果。
競馬の難しさなのか、一番人気に推された馬の状態、真相を今後の折々の取材の中で検証していきたいと思う。
まずはそのふたつの競馬から、観たままを書き連ねていきたい。

まずは記憶が遠くにならないうちに、『桜花賞』から感じたまま、観たままを記したいと思う。

私は、桜花賞のひとつ前のパドックから馬が立ち去った後も、そのままパドックのベンチで桜花賞出走馬の到着を待った。
17頭が入ってきて、パドックを周回を始めた。
いつもの年ならば、そこで第一印象で「いいな」と思う馬がいるものだが、今年はそんな雰囲気を持つ馬がいない。
外々を堂々と廻る馬も見当たらない。
僅かにエアパスカルが、実際の数字よりもドッシリと見え、落ち着いた雰囲気で周回しているのが感じられる。
トールポピーは前回のトライアルの時もそう感じたが、暮れの阪神ジュベナイルよりも良く見えない。
背中が低く、前脚と後脚が高い『背ったれ』の状態ばかりが前走同様に感じられる。
暮れの時にはまったく感じられない雰囲気だ。
鞍上が乗った後は、ちょっとイレコミ気味な感じさえ受けた。
その前を行くリトルアマポーラも、ちょっと腹目が薄くて「こんなものなのかな」という印象である。
私が『この馬』と思っていたソーマジックは、欲目なのか決して悪くない印象で、一番の懸念材料だったイレコミに、大幅な馬体減もなく、マズマズの雰囲気であった。
パドックでは、勝ったレジネッタも、2着のエフティマイアも格別訴える材料はなく思えた。
馬場入場もひと通り観て、そんなに著しく悪くなった馬もいないかわりに「いい返し馬だ」と思える馬にも出逢えなかった。

そしていよいよ武豊J抜きの桜花賞のゲートが開かれた。
幸四郎騎手のリトルアマポーラがダッシュがつかずに馬群の後ろである。
その外で2頭ばかりが出が悪い。
エイムアットビップが先手をとったが、直ぐに内からデヴェロッペが行き、ここらまでは大体誰しもが描いたシナリオどおり。
前の馬が6頭ぐらい固まった感じで3角を過ぎたが、その直後に居たのが大外⑱からこの位置へ付けられたエフティマイア
絶好位である。
トールポピーリトルアマポーラの黄色い帽子は、ちょっと後ろ目での競馬である。
ソーマジックの直ぐ右後ろにはオディール、その後ろにレジネッタがいる。
ここらが中団の後ろ目である。

最後の直線では、横一線から、先に前にいたエフティマイアが出て、その外目からレジネッタがグイグイと伸びる。
先行グループにいたハ-トオブクィーンが、最内の内ラチ沿いに進路をとり、際どく粘る。
注目のソーマジックは直線半ばで、外を勢いづいたレジネッタが通り抜ける瞬間で、内ではオディールが外へ張り出してくる、ちょっと窮屈そうなポジションに位置し、一瞬 遅れる感じで、すきまが出来て伸び出すが、勝ったレジネッタとは脚勢が違ってはいた。
それでもゴール前だけ伸びて3着に入り、力は証明した。

大外からやっと伸びだした黄色い帽子の2頭、リトルアマポーラトールポピーは、ジワジワとしか伸びず、ゴール前では、トールポピーの伸びが一番物足りないものとなり、電光掲示板にも載れず。
大混戦、と戦前の予想であった桜花賞は、その想像以上の結果に終わってしまった。
1、2着馬は、能力を遺憾なく発揮出来たように感じる。

しかし、レジネッタには、武豊Jが暮れの阪神ジュベナイルFで乗ったことがあるが、当時より数段と力をつけている事に今頃気が付くようでは、私もまだまだ観る眼がない。
前走の3着時に見せたもの凄い脚を、もっと掘り下げるべきであった。

2着のエフティマイアは、数字こそ減っていたが、著しく馬体が減っているようには見えなかった。
新潟2才Sの覇者で、実力はある馬。
久しぶりに地力を発揮しただけの話である。
阪神への輸送も二度目で、経験がプラスとなったものだろう。
内からのハートオブクィーンが来ていたら、3連単はいくらになったのだろうか? 空恐ろしい馬券が続き過ぎる感もあります・・・。

続いて、土曜日に中山競馬場で行われた『ニュージーランドトロフィー』
この日の中山では、今年競馬学校に入学した、坊主頭で制服がちょっと大きめの少年達が、教官らしき人の先導を受けて、検量室あたりをアチコチ見学していた。
横山典Jのご子息が入学した事を覚えていて、先刻彼と逢って、いつもどおりに声をかけあい、よもやま話をした時に、まずは握手をしておいた。
あっという間に時間が過ぎていって、もう、横山家では3代目のジョッキー世代となるのである。
感慨深いものがあった・・・。

さて、NZTは、パドックから出走馬を観ていて、ダノンゴーゴーは、細めのスラッとした馬体で、栗毛でもあるし、本当によく見える。
サトノプログレスも、以前に武豊Jが乗った当時よりは、スキッとして悪くない馬体だ。
そしてゴスホークケン
朝日杯当時よりは、もうひとつ仕上がり度合では緩い感じか。
しかし、大体がボテッとした体型の馬であるから、プラス体重でもあり「こんなものかな」という印象である。

いよいよレース。
競馬学校入学生達が、ゲート付近に整列して、先輩達のゲートを横で見守る中でゲートが開いた。
当然のようにダンツキッスイが行く。
3角では、後続との差は、もう10馬身はあり、悠々と先頭で風を切る。
4角手前でも、まだセーフティーリードかと思えたほど。
好位の3番手を進んでいたのがゴスホークケン
真ん中あたりにサトノプログレスが、いい手応えで廻ってきている。
武豊Jのダノンゴーゴーは、大外をまくり気味に上がってきた。
そのちょっと内に、エイシンフォワードが脚を伸ばしてきた。
直線残り1Fあたりでは、2歳王者ゴスホークケンの勝利は完全になくなった脚色だ。
アサクサダンディサトノプログレスと、未勝利戦でデッドヒートをした仲の馬がゴール前で凌ぎあう。
外からエーシンフォワードが伸びて2着であり、ダノンゴーゴーは完全に脚が止まっていた。

わが子の前で重賞制覇をしてみせる横山典J。
「なかなかにいいシーンを見せてくれるわい」と思った。
また、ゴスホークケンの負けっぷり。
ダノンゴーゴーの、1200の時と別な競馬っぷりになってしまう事実。
ここらに今後の課題を見た思いであった・・・。
(ターフライター・平林雅芳)