ラストランとなるヒラボクビジン

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土曜中山11レース・アレキサンドライトステークスに出走を予定しているヒラボクビジン(牝6、美浦・土田厩舎)。
今回が引退レースとなる予定だ。

馬房から顔を出し、差し出した手を舐めるヒラボクビジンを見つめながら「コイツは、舐めるのが大好きなんだよね。服もよく舐められましたよ」と、同馬を担当する阿曽厩務員は笑顔を見せる。



2009年12月のデビューから共に過ごしてきた阿曽厩務員の思い出は尽きない。
「最初の頃はウルさくて。まだ馬が子供だったから、遊びたくてしょうがないんですよ。何にでも興味を持って敏感に反応していました。調教で馬場に行くときも、他の馬を探して、その後ろにくっついて誘導してもらっていました。3歳の秋頃からかな?馬が大人しくなってきて、リラックスしてきましたね。今はもう馬運車が近くを通ろうが、物音がしようがビクともしませんよ。自分の世界に入っている感じで、集中できるようになりました。今では他の馬の誘導役をやっていますよ」

「調教に関しては、昔から集中して走っていました。レースでも毎回一生懸命走ってくれます。競走馬は苦しくなったときにどれだけ頑張れるか、途中で走るのを止めないかが大事ですけど、ビジンのレースはいつでも安心して見ていられました。頭が良いから、追い切りの感じでレースが近づいていることが分かっていて、自分で体を作るんです。オンオフがハッキリしていて、競馬場に向かう馬運車に乗り込むときにはもう自分の世界に入っています。競馬場の馬房に入っても無駄なことは一切せずに、ジッとしていますよ。競馬場では大人しい馬ですけど、パドックは二人で曳きます。ビジンは人間が好きだから、両サイドに人がいると更に落ち着くんですよ。今回も二人曳きで回る予定です」

「これまでで一番の思い出は、初勝利をあげたときですね。初戦から24キロ減で、もう腹も巻き上がっていて。勝ったときも『え、勝ったの?』という感じでした。それで、ノリちゃん(横山典弘騎手)が馬から下りてすぐ『良い馬だよ。これから1年間は休ませた方がいいな』って(笑)。その一言が忘れられないね。その先もコンスタントにレースを使っていきましたけど、使うごとにしっかりしてきましたし、放牧に出て戻ってくるたびに良くなって、2011年に札幌で使ったときは482キロまで体が増えました。大きなケガもなく、疲れを取る治療はしましたが、体の痛みを取るような治療は1度しかしませんでした。期間は短いですけど、本当に『無事是名馬』ですよ。欲を言えば、オープン入りをさせてあげたかったですね」

そして、いよいよ迎えるラストラン。

「今回はマサヨシ(蛯名正義騎手)に乗ってもらいます。1週前追い切りで乗ってもらいましたが、マサヨシほどの乗り役が『出来ている』と言ってくれましたし、状態に関しては心配はありません」と、仕上がりに問題はないようだ。

「担当する馬はいろいろ替わるけど、この数年は、ビジンをやっているときが一番楽しかったなあ。出来れば、将来ビジンの子供をやらせてほしいな。こういう夢が続くところが、この仕事の良いところだよね。土曜日はもちろん勝ってくれるのが一番良いけど、とにかく無事に帰ってきてほしいな」