ドバイワールドカップデー Vol.1『和田栄司コラム』

トピックス

30日、UAEドバイのメイダン競馬場はドバイワールドカップデーを迎えた。まだ明るい陽の光が残る中、サラブレッド競走は第2レースに組まれたタペタ馬場で行なわれるマイル戦、G1ゴドルフィンマイルからのスタートである。

UAEダービーを嫌ってこちらに回った南アフリカ産の3歳馬ソフトフォーリングレインが、ポール・ハナガン騎手を鞍上に中団の外8番手の位置から、直線400m残して抜け出した同じ勝負服/同厩のハーセクを追って55m残して捕え優勝した。ソフトフォーリングレインは南アフリカのG1SAナーサリィ勝馬で、ドバイで3連勝、デビューから無傷の7連勝を続けている。

続く芝の3200mで行なわれる2年目を迎えたG3ドバイゴールドカップは、半マイル通過55秒15、マイル通過1分48秒08の超スローペースを、中団6番手にポジションを取った地元ゴドルフィンのキャヴァリーマンが、直線300m残して抜け出し優勝した。2009年のG1パリ大賞典勝馬、他の9頭とは格が違い過ぎた。キャヴァリーマンの通算成績は30戦7勝である。

灯りがともされた第4レースはタペタ馬場で行なわれるG2UAEダービー、12頭立て。日本からはケイアイレオーネが出走した。優勝は2年連続でこのレースを制した愛バリードイルのラインズオブバトル。ライアン・ムーア騎手を鞍上に、先行策から直線残り400mで先頭に立ってライバルを一蹴した。ラインズオブバトルはこれが最初の重賞勝ち、通算成績は6戦3勝となった。ケイアイレオーネは最後方から見せ場のない10着敗退。

続く芝の直線1000mで行なわれるG1アルクォーツスプリントはフルゲートの16頭立て。マイク・デ・コック厩舎、そして南アフリカこの日2つ目の勝ち星はクリストフ・スミヨン騎乗のシェイシェイが挙げた。レースは半ばで抜け出した香港のジョイアンドファンを追ってシェイシェイが55m残して捕え、57秒の壁を簡単に破ってコースレコードの56秒41をマークした。4分の3馬身差2着ジョイアンドファン、同じく4分の3馬身差3着に香港のイーグルレジメントが入った。

第6レースはタペタ馬場で行なわれる1200mのスプリント戦、G1ドバイゴールデンシャヒーン、13頭立て。日本からはタイセイレジェンドが出走した。勝ったのはリチャード・マレン騎乗の地元UAEのレイナルドオブウィザード、BCスプリントを勝った米国の快速馬トリニバーグはタイセイレジェンドと先行争いの末共倒れ、ゴドルフィンのG1勝馬メンタルは前が詰まって惨敗した。

フラクションは 24.55-47.94 と速くはなかったが、前に行った3頭が激しくやり合った為、4番手で前の動きを見ていたレイナルドオブウィザードが漁夫の利を得た感じである。クビ差2着に愛ベルモントマスト、半馬身差3着に前年の勝馬、バーレーンのクリプトンファクター、勝ちタイムは1分12秒46と平凡だった。レイナルドオブウィザードの通算成績は18戦7勝である。

光のショータイムを挟んで、これからがDWCデーのクライマックス。その最初が芝1800mで行なわれるG2ドバイデューティーフリー、14頭立て。注目はカーニバルで、G2ケープヴァーディ、G2バランチーン、G1ジェベルハッタと3連勝して来たゴドルフィンの6歳牝馬サージャー。しかし、このレースを狙って外国勢も6頭が参戦して来た。

レースは、予想通りG1・3勝の米リトルマイクの先行で始まった。レースの流れを見るフラクションは 25.59-49.20-1:13.30 メイダン競馬場にしては珍しく速い方だが、ペースとしては平均的である。その為、前が残った。勝ったのは3番手でレースを進めたサージャー、300m残して抜け出し、1分47秒93のタイレコードでG1連勝を決めた。

1馬身4分の3差2着に一旦は先頭に立ったジアパッチ、前哨戦のG1ジェベルハッタと同じ組み合わせである。4分の3馬身差3着には中団から伸びたG1ファルマスS勝馬ジオフラが外からやっと届き、後方から中を突っ込んで来たトレードストームがクビ差4着、イグーグーは短頭差で5着に落ちた。ニュージーランドのコックスプレートなどG1・5勝馬オーシャンパークは後方のまま12着と見せ場すら作れない。

この日2勝目となったゴドルフィン主戦のシルヴェストレ・デ・スーザ(ソウサとは発音していない)騎手は、ブラジル生まれで、2011年に英国に渡り、デビューの年にポール・ハナガン騎手と壮絶なリーディング争いを演じ、161勝を挙げながら2位に敗れた22才のジョッキー。フランキー・デットーリ騎手に代わって、ゴドルフィンの主戦騎手の役割をカーニバル中もずっと発揮して来た。

勝ったサージャーはこのカーニバルですっかり馬が変わっての4連勝、通算成績を17戦8勝、2着4回とした。因みにこのレース、馬券発売した英国での人気は、英トレードストーム、新オーシャンパークと続き、サージャーは3番人気で仏ジオフラと分け合っていた。


海外競馬評論家 和田栄司
ラジオ日本のチーフディレクターとして競馬番組の制作に携わり、多岐にわたる人脈を形成。かつ音楽ライターとしても数々の名盤のライナーを手掛け、海外競馬の密な情報を把握している日本における第一人者、言わば生き字引である。外国馬の動向・海外競馬レポートはかねてからマスメディアで好評を博しており、それらをよりアップグレードして競馬ラボで独占公開中。