天皇賞のレッドカドーと香港QEⅡCに注目[和田英司コラム]

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28日の日曜日は、京都競馬場で行なわれる天皇賞(春)のレッドカドー、そして香港シャティン競馬場で行なわれるクイーンエリザベスⅡ世カップのエイシンフラッシュに注目して下さい。

カドージェネルー産駒の7歳のセン馬レッドカドーは、英エド・ダンロップ厩舎のワールド・トラヴェラー・ホースとして、これまでフランス、アイルランド、オーストラリア、日本、香港、UAEと転戦、昨年暮れの香港ヴァーズでジャガーメイルを下して初のG1優勝、そして記憶にも新しいG1ドバイWCで優勝馬アニマルキングダムに2馬身差まで詰め寄ったあの馬です。

馬主は以前香港ジョッキークラブのCEOだった英国人ロナルド・アカーリ氏です。香港では春最大の国際競走QEⅡカップが行われる同じ日に天皇賞(春)がぶつかってしまいましたが、香港JCはジェラール・モッセ騎手の渡航申請を早々に認めています。ジェラールはレッドカドーに近3走で騎乗して3戦1勝、2着1回の成績の成績を残しています。

距離は2012年のメルボルンカップを2着しているほどですから問題ありません。ジャパンカップは不利があって8着に敗れましたが、この時はジョッキーズインクワイアリーを宣誓して激しく抗議したと聞いています。その甲斐あってか、香港ヴァーズでは中団から直線1馬身差の5番手に上がり、残り200mからジャガーメイルとの叩き合いを短頭差制して優勝しました。

DWCでは4コーナーで抜け出したアニマルキングダムを、直線8番手の位置から内ラチ沿いに入れて強襲。その末脚は、ラスト800mの上り48秒86、400mが24秒13とメンバー中最速でした。元々人口馬場のポリトラックで7戦2勝、2着3回の成績を残していましたが、初めてのタペタ馬場で、それも世界最高賞金の競走でマークしたのですから並外れた能力を秘めた馬と思われます。

京都競馬場の馬場、内が開けば上位入着は間違いないでしょう。相手は1頭、何回もギアを入れられるゴールドシップ、この馬の走りはとてもシーザスターズに似ています。しかしレッドカドーは1度もシーザスターズと対戦したことがありません。同期生でしたが、3歳デビューのレッドカドーは、当時はハンディキャップ戦専門で2勝しか挙げていませんでした。今が1番の充実期を迎えたレッドカドー、ゴールドシップをシーザスターズと仮想して戦って貰いたいものです。

そしてQEⅡカップ、こちらはルーラーシップに続く日本の連覇をミルコ・デムーロ騎乗のエイシンフラッシュに期待しましょう。オーナー平井豊光氏の馬が勝つとなると2003年のエイシンプレストン以来になります。G1・2勝のエイシンフラッシュの国際レイティングは121、今年の出走メンバーの中では3番目に高いレイティングになります。

レイティング124でトップはG1・7勝(国際G1は2勝)の2シーズン香港年度代表馬に輝いたアンビシャスドラゴン、2011年の勝馬です。但し今シーズンはマイル専門に使われていて、翌週のG1チャンピオンズマイルにも登録していることから、レイティング通りの評価は妥当とは言えないでしょう。

レイティング122で2位はG1・2勝、暮れの香港カップを連覇した香港カリフォルニアメモリーです。香港カップを連覇したものの、QEⅡカップは昨年が5着、一昨年が2着、しかも前哨戦となった香港ゴールドカップ11着は、スローペースの後方待機策が裏目に出て全く良いところがありませんでした。

エイシンフラッシュに続く119のレイティングは香港ミリタリーアタックです。香港ゴールドカップを好位差しで制し初めての香港G1勝ち、続く1800mの香港G3ザプレミアプレートを道中早めに先頭に立ってトップハンデ60.5キロを克服しました。移籍3戦目で香港G1香港ダービーの出走権を得て、期待通り勝ったアキードモフィードはレイティング110よりは上の馬だと思われます。

香港馬は10頭、サムザップ、イリアン、ザイダン、アシュキール、クラッカージャック、ラスオブファイアも名を連ねています。外国馬4頭、エイシンフラッシュを除く3頭はドバイを使って香港入りしました。シャージャーはドバイWCデーでも活躍したゴドルフィン馬、もう2頭は南アフリカのマイク・デ・コック厩舎のトレジャービーチとイグーグーです。

中でもキングズベスト産駒の6歳牝馬シャージャーはエイシンフラッシュと同じ父を持つ同期生。メイダン競馬場で4連勝、G1を連勝して国際レイティング117で乗り込んで来ました。前々から攻めるだけにスローペースが予想されるQEⅡカップでは要注意。主戦ジョッキーのシルヴェストレ・デ・スーザ騎手で臨みます。

デ・コック厩舎の2頭、クールモアのトレジャービーチにはジェイミー・スペンサー騎手が騎乗、イグーグーには香港でも騎乗経験豊かな主戦ジョッキーのアンソニー・デルペッチ騎手が乗ります。G1・4勝馬のイグーグーは、長い休養から復帰して、ドバイで3戦して3着、6着、5着の成績、特に前走は粘り切れず3番手から順位を落としただけに、直線400そこそこのシャティンではもう少し粘れそうな気もします。

枠順次第で各馬も作戦を練り直すでしょう。特にカリフォルニアメモリーは内に入れば前々からの攻め方になります。期待するエイシンフラッシュですが、天皇賞(秋)のようにラチ沿いぴったりに走り、前が空くのを待つ策は通用しそうもありませんから、ビクトワールピサで勝ったDWCのような臨機応変のテクニックをミルコ・デムーロ騎手に期待したいと思います。

蛇足ながら、ブラックキャヴィアの引退が決まりました。オーナー側と調教師の間に現役を続けるか続けないか、大きな溝があったように思えます。結果はオーナー側の条件を呑む形で引退となりました。ブラックキャヴィアのアスリートとしてのキャリアは25連勝で終わりましたが、今後は繁殖生活で良い成績を残してくれると期待しています。

海外競馬評論家 和田栄司
ラジオ日本のチーフディレクターとして競馬番組の制作に携わり、多岐にわたる人脈を形成。かつ音楽ライターとしても数々の名盤のライナーを手掛け、海外競馬の密な情報を把握している日本における第一人者、言わば生き字引である。外国馬の動向・海外競馬レポートはかねてからマスメディアで好評を博しており、それらをよりアップグレードして競馬ラボで独占公開中。