フェノーメノ悲願のG1制覇、天皇賞を制す!…平林雅芳の目

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13年4月28日(日)
3回京都4日目11R 第147回天皇賞(春)(G1)(芝3200m)


フェノーメノ
(牡4、美浦・戸田厩舎)
父:ステイゴールド
母:ディラローシェ
母父:Danehill

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勝負どころの2周目の坂の下り。中団の少し前のフェノーメノとその直後のトーセンラーは、いい感じで上がっていく。だがゴールドシップの動きがもどかしい。4角に入る前には、いよいよゴールドシップの動きがもたつきだす。鞍上の内田Jのステッキが入るのまで見える。
フェノーメノが持ったままでカーヴを廻る。それに喰らいついていくトーセンラー。その2頭が直線に入って一旦並んだ様に見えた。しかし内へ切れ込む様にフェノーメノが先頭となって、追いすがるトーセンラーの伸びをシャットアウト。結局1馬身と少しの差をつけて、晴れのG1勝利をはたした。
これでゴールドシップとの対決はダービーと今回と二度ではあるが、ともに先着。それも今回は決定的な差をつけてのゴール。同じ父を持つ4歳馬だが、フェノーメノはゴールドシップには負けない意識がある様だ。
それにしてもゴールドシップはどうしたのだろう…と思える後半の勢いであった…。

場内のアナウンスが『一点の曇りもない青空…』に思わず空を見上げてしまう。《あれ!、あそこに少しあるけどな…》と苦笑しながらもゲート入りを待つ。それにしても、凄い人がスタンドのテラスに溢れている。ゴールドシップが少しうるさいが、いつもの事。

ムスカテールが最後に収まってゲートオープン。ポーンと出たのがトーセンラーだ。好発は最大の武器である。逆にゴールドシップはいつもどおりに出が鈍い。最後方に白い馬体が置かれる。その前がデスペラードだ。レッドカドーも同じ様な位置となる。
押してサトノシュレンが出て行く。どうやらこの馬が先手を取って今年の天皇賞はスタートした。

1周目の坂を下っていく。わがトーセンラーは10頭目のインだ。そのすぐ前にレッドディヴィス。並んで行くのがアドマイヤラクティ。フェノーメノが少し前にいる。デスペラードとゴールドシップは最後方を並走している。1000メートル通過が59.4と、オーロラビジョンに表示された。
ホームストレッチを、サトノシュレン先頭でトウカイパラダイスとムスカテールが2番手で、1周目のゴールを過ぎる。見ている眼の前を通っていく。トーセンラーは絶好のインで行きっぷりもいい。フェノーメノが折り合っていい感じで前を行くのが見える。
1角を過ぎ2角を廻っていく。トーセンラーはそのまま内を進むのだろうかと見ていると、向こう正面に入る前にマイネルキッツの外へと出した様だ。

先頭を行くサトノシュレンはさらにリードを広げて行く。単独の2番手となったトウカイパラダイスとの差が5馬身、6馬身と開いて行った。これも作戦か。3コーナーのカーブへと入る前に各馬の動きが出てきた。3番手以下の馬群がにわかに凝縮されてきた。
フェノーメノが早めに上がって行く。それと同じ様にトーセンラーも行き出す。ゴールドシップもいつものロングスパートをかけて上がって行く。坂の真ん中あたりではトーセンラーの直ぐ後ろまで迫るが、何か勢いがいつもと違う。4コーナーを廻る時には、フェノーメノとトーセンラーがいちばん前で並び加減となる。その外へ白い馬体も来ているが、被せる様な勢いにはない。

直線に入ってきた。もう早めに先頭となっていくフェノーメノ。それを追うトーセンラー。ゴールドシップは、後ろから来たジャガーメイルに外から交わされてしまう。内にレッドカドーも入ってきている。フェノーメノはやや内へと切れ込む様に入る。トーセンラーが必死に追いすがるが差が縮まらない。レッドカドーがその内から脚を伸ばしてくる。ジャガーメイルが前に入ってしまい進路がやや窮屈になったゴールドシップ、外へ立て直して前を追う。しかし、むしろ内のアドマイヤラクティの方が伸びて行く。

検量室前の枠場。2着の所で馬の帰りを待っていた。藤原英厩舎の助手達もいる。共に晴れ晴れとした顔つきである。
隣りのまぶしい栄光の枠場に戸田師が現れた。すると藤原英厩舎の荻野助手が戸田師の傍へ行って、抱きついて祝福する。もう勝負が終わったらアッサリするのがこの業界である。

両方の馬が帰ってきた。武豊Jも《いや~残念だ…。形は出来ているのだが、馬が前を交しに行く気がない。闘志がないわ~…》と独特の言い回しでいう。そうだったのか…と知る。

ゴールドシップがこれ程に負けた競馬は、今まで見た事がなかった。だが前回の阪神大賞典がいつも程に破壊力がなかったとは感じた。それは武豊Jも同じように言っていた。同じ様に観ていた人は多かったと思う。しかし、だからと言ってここまでいつものゴールドシップらしさがないとは予測出来なかった。ここらが競馬の難しさであろうか。

そして表彰式を遠くで見ていた。市川海老蔵が来ていた。そうかキーワードは《エビ》だったのか!と今頃になって気が付く。
それにしても、ここのところの関東馬の攻勢。今年になって、何度この想いをしている事であろう…か。まあ、トーセンラーも最後は残念だけれども、力は発揮してくれたし次を楽しみに、そして来週以降も楽しみな馬が多いからと、少しは明るい気持ちで空を見上げたのでありました…。


平林雅芳 (ひらばやし まさよし)
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。