苦労人・柴田大知、デビュー18年目の初G1に「夢のよう」

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13年5月5日(日)、2回東京6日目11Rで第18回 NHKマイルカップ(GⅠ)(芝1600m)が行なわれ、柴田大知騎手騎乗の10番人気・マイネルホウオウが優勝。3コーナー通過時点で、後方3番手通過から差し切り勝ち。勝ちタイムは1.32.7(良)。

2着にはクビ差で6番人気・インパルスヒーロー(牡3、美浦・国枝厩舎)、3着には8番人気・フラムドグロワール(牡3、美浦・藤沢和厩舎)が続いて入線。1番人気に支持されたエーシントップ(牡3、栗東・西園厩舎)は7着に敗れ、3連単は123万5600円の大波乱となった。

マイネルホウオウに騎乗していた柴田大知騎手は、障害グレード導入後、熊沢重文騎手以来となる、史上2人目の平地&障害のG1制覇。平地G1はデビュー18年目にして初勝利となった。


レース後からこみあげてくるものを抑えつつ、検量室前に引き上げてきた柴田大知騎手。

「嬉しいです。(レース中のことは)よく覚えていないです。本当に、本当に嬉しい。(レースのポイントは)わからないです。覚えていないんです。夢中で乗っていたので。
(自身の200勝目ともなったが)先生(調教師)とレース前に『そうなったらいいね』なんて話をしていましたが、夢のようです。この馬に乗せてくださった関係者の方々、ありがとうございました」

レース直後のインタビューでは、何度も言葉を詰まらせながら、人目をはばからず、大粒の涙をみせた。

「進化論」でも書かれていたとおり、イメージしていたポジションは中団も、実戦では想定より後ろからの競馬。終始、馬群の外を回る形も、直線で懸命にスパートをかけると、そこからのマイネルホウオウは素晴らしい伸び脚。最後までインパルスヒーローも応戦したが、クビ差凌ぎ切った。

「あんまり背中にグッと力を入れて踏み出してる感じじゃなかったので、ゲートからヨロっとしていました。ちょっと肩ステッキいれて出すくらいの感じだったんですけれど、(ゲートを)出なかったら出なかったで、後ろで最後に脚を使えれば、しっかり伸びるんじゃないかな、と思っていたので、切り替えました。最後にしっかり脚使ってくれたら、と思っていたので、馬を信じてました」

平地G1初勝利の興奮。いつも通りに引き上げようとしたが、周囲のジョッキーも祝福。ウイニングランを促した。

「花の12期生」と称される世代で、1996年にデビュー。この日も所属する斎藤誠厩舎の仕事で競馬場に訪れていた、柴田未崎元騎手と双子ジョッキーとしても注目を集め、ルーキーイヤーに27勝、2年目には重賞勝ちをマーク。
順風満帆な騎手人生を歩んだかに思われたが、福永祐一、和田竜二騎手ら、実績を残していく同期とは裏目に、3年目以降は勝ち星が減少傾向。遂には06~07年は未勝利、06~09年の4年間でも3勝にとどまった。

「くさった時期もあった」と自身は素直に語るが、騎手を続けることに諦めはなかった。そんな折に「マイネル・コスモ」の冠名でお馴染みの岡田繁幸氏らのグループに見出され、徐々に成績も上昇。一昨年にはマイネルネオスで中山グランドJを制し、昨年は自身最高となる年間38勝を挙げた。

「デビュー前に牧場で乗せていただいた時から、速い時計が出ていて『この馬は凄いな』とは思っていたんです。でも、新馬を走って、競馬をわかってから、持ち前のスピードがありすぎるので、それを落ち着かせるのが大変でしたね。最初は気持ちが先走る感じがあったのに、よく落ち着いて走れるようになりました。
きょうは自身もしっかりと乗れたとは思いましたが、G1は本当にすごいものなんだな……と。まだまだ、僕もそんなにG1では数を乗っていませんし、自分にも自信になります」

節目のJRA通算200勝目で、35歳にして掴んだ夢の勲章。パートナーの名も「マイネルホウオウ」。決して騎手をあきらめなかった“不死鳥”柴田大知には奇しくもピッタリの馬名だ。
苦労人の涙とガッツポーズ。ファン、関係者からも惜しみない拍手がなりやまなかった。

≪関連リンク≫
『柴田大知の進化論』
:柴田大知騎手による公式コラム