今週末は英国ダービーと安田記念[和田英司コラム]

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6月に入る今週末は、土曜日に第234回英国ダービーがエプソム競馬場で、また日曜日は第63回安田記念が2頭の香港馬を迎えて東京競馬場で行なわれる。どちらも目の離せない注目のレースである。

英国ダービーは現在のところ15頭がエントリー。人気の中心となるのが2000ギニーまで7戦7勝、不敗で目下G1・3連勝しているゴドルフィンのドーンアプローチである。ゴドルフィン馬の優勝となると、1995年のラムタラ以来であり、ドーンアプローチは父ニューアプローチ、祖父ガリレオ、3代制覇に向けて1番人気で臨むことになる。

2000ギニーではペースメーカーの前々4番手から2ハロン残して抜け出し、残り1.5ハロンでアドバンテージを取ると最後は5馬身差を付け、タイム1分35秒84でフィニッシュした。母ヒムオブザドーンがフォーントリック産駒の未勝利馬で距離を不安視する批評家もいるが、5年前のダービー馬を父に持つ大きな血脈を忘れてはならない。

ジム・ボルジャー調教師とケヴィン・マニング騎手は、2008年のニューアプローチ以来のコンビとなる。そのボルジャー調教師は、別の2000ギニー勝馬のマジシャンを最大のライバルになると考えている。25日のカラ競馬場で行なわれたアイリッシュ2000ギニー勝馬は今季チェスター競馬場で行なわれたG3ディーSとG1アイリッシュ2000ギニーを連勝して来た。

10日に10ハロンと75ヤードのディーSを4馬身差で勝ち、中1週でアイリッシュ2000ギニーを3馬身半差で連勝、しかし、連闘での挑戦となると1週間で2つのクラシックはあまりにも大胆ではないか。エイダン・オブライエン調教師は、ディーSのリラックスした走りをいたく気に入っていて最終登録までして来た。出走するとなれば最大のライバルに浮上するのはごく自然である。

オブライエン調教師のバリードイルは3分の1にあたる5頭をエントリー、マジシャンを登録する前は、マジシャンと同じガリレオ産駒のバトルオブマレンゴがエース格だった。昨年のG2ベレスフォードSから今季はG3バリーサックスS、前走G2ダービートライアルSまで重賞3連勝、2戦目でメイドン勝ちして以来5連勝した。去年のキャメロットに続く連勝となれば、バリードイル通算4回目の優勝になる。

バリードイルが主戦のジョセフ・オブライエン騎手をマジシャンかバトルオブマレンゴのどちらに乗せてくるかにも陣営の期待度が計れる。他、2戦2勝でG3チェスターヴァーズを勝ったガリレオ産駒のルーラーオブザワールド、モンジュー産駒でG2オカール賞では僅差の3着したフェスティバルチアー、キャリア1戦で2000ギニー6着したガリレオ産駒マーズが登録している。

これに対してジム・ボルジャー調教師も防御策としてアイリッシュ2000ギニーを先行して3着したトレーディングレザーを残している。他で人気になりそうなところではG2グレフィーユ賞を逃げ切った仏オコヴァンゴ、3歳デビューでG2ダンテSを勝ったニューアプローチ産駒のリバータリアンなどが出走態勢の構えである。

安田記念の香港馬はグロリアスデイズとヘレンスピリットの2頭。グロリアスデイズは昨年の14着に続く2度目のチャレンジ、昨年の敗因は外枠で競馬にならなかった。暮れのG1香港マイルで2着、今季は1月の香港G1スチワーズカップを勝ったものの、前走G1チャンピオンズマイルは内で伸びきれず4着とがっかりさせられた。左廻りも多頭数競馬になるだけに心配である。

対してヘレンスピリットはアイルランド産の6歳セン馬。1月の香港G3チャイニーズクラブチャレンジカップで初の重賞勝ちした後、前走のチャンピオンズマイルは先行して勝ったダンエクセル(G1シンガポール航空国際カップ2着)の短頭差2着に粘った。前半47秒32は、時計差のある日本では46秒前半のペースに等しい。前々競馬が身上の馬、スピード的には十分通用してもおかしくない。

あとは枠順次第と言うことになるが、8番枠以内を引ければ連がらみのチャンスは巡って来る。父は2005年の2000ギニー馬フットステップスインザサンド、フランス時代にサンクルー競馬場のG1クリテリウムアンテルナシオナルが7頭立てしんがり負けと左廻りに不安がないとも言えないが、内に入れられればコーナーを巧く回ってこれるだろう。ジェラールの手腕に期待したい。


海外競馬評論家 和田栄司
ラジオ日本のチーフディレクターとして競馬番組の制作に携わり、多岐にわたる人脈を形成。かつ音楽ライターとしても数々の名盤のライナーを手掛け、海外競馬の密な情報を把握している日本における第一人者、言わば生き字引である。外国馬の動向・海外競馬レポートはかねてからマスメディアで好評を博しており、それらをよりアップグレードして競馬ラボで独占公開中。