英国ダービー、ルーラーオブザワールドが優勝[和田英司コラム]

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第234回英国ダービーは、5頭出し愛バリードイル調教馬の1頭で3番人気に推されたルーラーオブザワールドが鮮やかな追い込みを決めて優勝、対照的に圧倒的1番人気のドーンアプローチはスタート直後から折り合いを欠いて自滅、しんがりの12着に終わった。

レースはルーラーオブザワールドが最後に枠入りを完了してスタートした。50ヤードほど走ったところから本命ドーンアプローチが首を左右に振り、ジャンプして普通ではない。中団8番手の位置から丘を登り、丘の頂上から左に廻っても一向に修正出来ない。今度はかかったのか外から6番手に上がり、半ばで先頭に立ってダウンヒル、タッテナムコーナーを回って直線に出て来る。

残り3ハロン、2番人気のバトルオブマレンゴがドーンアプローチを交わして先頭に立ち、この時ルーラーオブザワールドは外の7番手、しかし残り2ハロンで2番手に上がり、1.5ハロン残して先頭に立ち最後の壁を駆け登った。1馬身半差2着は残り3ハロンで10番手だったG2ダンテS勝馬リバタリアンが大外から伸び、短頭差3着に最後ガリレオロックがバトルオブマレンゴを短頭差交わして上がった。

それにしてもドーンアプローチは奇怪な負け方をした。マニング騎手もボルジャー調教師も「理解出来ない。もう一度マイル&ハーフを使えるかは疑問だ」と口を揃えた。翌日、ゴドルフィンのレーシング・マネージャーのサイモン・クリスフォード氏は「写真を揃えて貰ったが、ゲートを出た1歩目に異常が見られる。ゲート内で何かあったのだろう」と語った。

しかし、VTRを何度も見たがゲートを出た時は正常だったように見える。距離云々は、スタート後の折り合いを欠いたことで関係ないようにも思える。いずれボルジャー調教師から何らかの説明がある筈でそれを待ちたい。ルーラーオブザワールドは3歳デビューで前走G3チェスターヴァーズ勝ちに続く無傷の3連勝でダービーを制した。

ガリレオ産駒の今季のクラシック制覇は愛2000ギニーのマジシャンに続く2頭目、翌日は仏ダービーをガリレオ産駒のアンテロが制してようやくエンジン全開と言ったところだ。ライアン・ムーア騎手は2010年のワークフォースに続く2度目の優勝、エイダン・オブライエン調教師は昨年のキャメロットに続く連勝で通算4度目の優勝となった。

第63回安田記念はロードカナロアの優勝だった。安田記念は香港でも馬券発売され、暮れの香港スプリントを勝ったロードカナロアのインパクトは強烈で単勝2.6倍の1番人気に推された。2着のショウナンマイティは2番人気で馬連も1番人気12.6倍と日本よりも低配当である。ただ3着のダノンシャークは単勝万馬券の馬なので、3連複は400倍以上、3連単は15万馬券と日本より高配当になった。

香港馬はグロリアスデイズ11着、ヘレンスピリット16着と見せ場すら作れなかった。ヘレンスピリットは11番枠からのスタートで6番手の良い位置を回れた。しかし、外のシルポートが先行、隣の好スタートを決めたヴィルシーナが2番手、前半の半マイル通過は45秒3と速い。いくら時計差があると言っても、枠順を考えるとおつりが無い計算になる。

しかも、勝ちタイムが1分31秒5。7着のガルボまでが32秒を切っているのだから、今の香港馬ではこの中に入って来る馬はいない。中団11番手の内にポジションを取ったグロリアスデイズの方は、直線で追い出そうという時に前が壁になった。例年は内にいなければチャンスがないのに、今年は外からの追い込みが上位を独占してしまったのも不運だった。

日本の高速馬場では恐らく今の香港馬では連絡みすることは出来ないだろう。それなら何故日本馬が香港のマイルをなかなか勝てないか不思議に思うかも知れない。それは香港に遠征すると、今度は香港のマイルのペースに翻弄され本来の能力を発揮出来なくなるからである。当分は、ホーム開催の強みで地元馬の優勝が続くことになりそうであるが、今のロードカナロアならそれを十分破れそうだ。


海外競馬評論家 和田栄司
ラジオ日本のチーフディレクターとして競馬番組の制作に携わり、多岐にわたる人脈を形成。かつ音楽ライターとしても数々の名盤のライナーを手掛け、海外競馬の密な情報を把握している日本における第一人者、言わば生き字引である。外国馬の動向・海外競馬レポートはかねてからマスメディアで好評を博しており、それらをよりアップグレードして競馬ラボで独占公開中。