平林雅芳の目

トピックス

土曜阪神10R
阪神牝馬S(GⅡ)
芝1400m
勝ちタイム1.21.4

勝ち馬:ジョリーダンス(牝8、栗東・堀宣行厩舎)

ジョリーダンスが弾けて古馬の貫禄を示す。

レースが終わってもしばらく結果をスンナリと受け止めれなく、やや呆然とした視線で検量室内のレースビデオを外から見あげていると、わざわざ室内から横山典Jが外へ出てきて声をかけてくれた。
よほどガッカリさ加減がモロににじみ出てしまっていたのだろうか。
『古馬だよ。まだまだ古馬の底力が上回っているんだよ』と終ったばかりのレースをひと言で片付けてくれた。
その言葉で今の結果が何となく理解できたようで、モヤモヤがスーッと引いて行く感じであった。

では、その阪神牝馬Sのレースラップを計上しておく。

12.4~11.0~11.7~11.7~11.4~11.5~11.7で、前半3Fが35.1で上がり3Fが34.6と、前半が少しゆったりのペースだがスローではない。
ずーっと11秒台で、そこそこ流れているペースでもあった。
いつもより前々で競馬していたポルトフィーノで、少し前半で掛りそうになってはいたが許容範囲だろう。
その後ろにいたジョリーダンスなどは、頭を左右に振っている様子が伺えたほどだったが、ほとんどの馬がまずまず折り合って行けてる流れでもあった。

アルティマトゥーレがポンと前へ出て先手を取ったが、内からエリモハルカがダッシュをつけていく気を見せた。
2頭は少しの間並んで行っていたが、アルティマエリモを先に行かせた。
その前を後を追うように、ウエスタンダンサーが続いた。
ポルトフィーノは5、6番手。
オディールがちょっと前にいて、直ぐ真横にザレマが並び、すぐ後ろにはヤマニンエマイユ、その内にレジネッタ、そしてその後ろがジョリーダンスといった具合で、けっこう集団となっての競馬となった。

さすがにオープンクラスだけに、前を行く3頭は4角で横並びになったが、そのままで直線に入り、後1Fあたりまで粘っている。
後続グループが襲いかかったのは、1Fを過ぎたあたり。
馬ごみの中からいい手応えで進んでいたザレマが、真ん中からウエスタンダンサーの横を出て先頭に踊り出ようとした瞬間、外からジョリーダンスが伸び脚鋭くアッという間に先頭に躍り出て、そして押し切った。
オディールザレマの後を追うように3着になだれ込んだ。
後方からサワヤカラスカルが伸びてきて4着、レジネッタが5着。
ポルトフィーノは、4角で他馬よりも早く鞍上の手が動く感じで、みんなが伸びていくのに自分だけギアが替わってない感じであった。

勝ったジョリーダンスは、道中はレジネッタの真横ぐらいで、前にポルトフィーノザレマを観るかたちで、終始馬の中に位置していた。
その位置でポルトフィーノの横をすり抜けて、そこからさらに外へ進路をとるような感じで伸びてきた。
メンバー中一番の33.6という強烈な末脚での差し切り勝ちだった。
ポルトフィーノの前後に位置していた馬が2、3着。
後ろにいた馬が勝利するという結末となった。
同じ4歳馬は3着~5着には来ていたのに、ポルトフィーノだけが伸びない競馬であった。
1、2着は熟女であるが、同期の桜が善戦しているのだから、後は自身の精神的な成長が待たれるのみである。


日曜阪神10R
桜花賞(GⅠ)
芝1600m
勝ちタイム1.34.0

勝ち馬:ブエナビスタ(牝3、栗東・松田博資厩舎)

ブエナビスタ女王に輝く!

ひとつ前の⑨R梅田Sの出走馬がパドックを出て行ったのに、パドックの廻りで馬を観ていたファンの動きがない。
スタジアム形式のような阪神競馬場のパドック。
かなりの人数が、微動だにしないのである。
馬主席ももうすでに人で一杯で、こちらも殆ど動きがない。
大勢のお客が集まった桜花賞デー。
レースを重ねるごとに人が増えているようで、場内を移動するのもちょっと時間がかかる感じだった。

コースの方では、ゴール前での攻防に沸いているようだ。
場内放送から僅かに遠く流れてくる音声で、そんな雰囲気がイメージできた。
そして桜花賞のパドックへ出走馬が入ってきて周回を始めた。
大きな馬体重の変動もなく、各馬が静々と周回をし出した。
大勢のファンからの注目を浴びながら、ブエナビスタはいつもどおり落ち着いてしっかりと歩を進めていた。
パドックの大外一杯に廻る馬、二人引きでグイグイと前を見つめた眼差しが鋭い馬と千差万別であるが、総じて落ち着いて歩んでいた。
ブエナビスタは、今日も素人目には格別凄く見える馬体には見えなかった。
ゼッケンをつけて山口厩務員氏が引いているから、ブエナビスタと判る程度だ。素人同様の私には、ルージュバンブーの仕草や雰囲気や、レッドディザイアの大きなお尻が凄くボリュームがあってよく見えてしまう。
ダノンベルベールあたりは小さくまとまって見えて、別段良くも見えなかった。
ルージュバンブーの後ろのジェルミナルの雰囲気も悪くなかった。
そんなことを感じながら、周回する馬を見ていた。

いつもはジョッキーが跨るのを見てから馬場の方へと向うのであるが、今日のこの人の多さでは行きたいところへ行くには相当時間がかかりそうである。
よって、まだ周回が終っていないうちにパドックを切り上げてスタンドへ向った。
各馬が馬場入りして思い思いの返し馬に入るのをジーッと見ていた。
ブエナビスタは、本当にノビノビと返し馬をしていて、柔らかそうな感じを受けた。落ち着いて気負いもなく、いい仕事をしそうだなと直感した。

桜が外ラチ沿いの傍でまだ何とか開いている中、今年の桜花賞がスタートした。
内でダノンベルベールの出があまり良くなかったようだ。
ワンカラットも後ろからの競馬となった。
ブエナビスタのゲートはそんなに悪くなかったようだったが、出てからの位置はかなり後ろの方であった。

前がソコソコ飛ばして行った。
コウエイハートが先頭を奪って主導権を握った。
サクラミモザが前を行く2頭を見る形で3番手、けっこう流れて行っているペースとなった。
3角過ぎ、場内放送が『ブエナビスタはまだ後方から2番手』と告げると、どよめきが起こった。
でも安藤勝Jは、急かず慌てずユックリであった。
3角から4角でも、そんなに馬の位置は変わらないで来ていた。
長い直線を意識しての仕掛けであった。
直線入り口では、集団が凝縮して前と後ろの馬がそんなになくなってきていたが、ブエナビスタは外目であるが位置としてはまだ後ろにいた。

直線に向いたところで、レッドディザイアの鞍上四位Jの手がいち早く動き出していたが、その後ろのブエナビスタ安藤勝Jは、まだゴーサインを出していなかった。
レッドディザイアが先に伸びだして、グングンと加速して行った。
ルージュバンブージェルミナルの⑦枠2頭も伸びているが、前を行くレッドディザイアの伸びの方が良かった。
少し外から馬場の真ん中へと寄りながら追い出していった。
その時、直線で前の馬2頭の外目に出したブエナビスタが、鞍上の安藤勝Jのステッキ一発のゴーサインでグイグイと伸びた。
アッと言う間に前を行く馬を抜き、レッドディザイアをも抜き去ってしまった。
ステッキは計4発ぐらい入ったようだが、最後はグイグイと手綱を押す鞍上に呼応するように、伸びがまったく他馬とは違う感じであった。
安藤勝Jがいつもの癖なのか、相手馬を観ながらのゴールだった。

ちょっと次元が違う脚である。
3角から4角手前まで大外を廻ってきていたが、4角直線に入る前は一息入れるというか、ワンタイミング呼吸を置いてまだ前の馬を交さず。
その後、廻りきってから少しして、一番外へと出してからの追い出しであった。
短い間のゴーサインに瞬時に反応したブエナビスタ。 キャリア3戦目のレッドディザイアも一旦先頭で夢見たはずだが、相手が悪かった。この馬自身の潜在能力の高さは十分証明できただろう。
そこから少し離れてジェルミナルが3着。この馬も力は出し切っている。
ワンカラット4着。ゴール前は一番の脚を使っていたのではなかろうか。
枠順が内で、直線で外へ出して追えたのはゴールのちょっと前だけで、あの脚は光った。
ルージュバンブーは直線入り口あたりではオッと思わせるところもあったが、最後は5着と伸び脚が前の馬タチとは違った感じであった。

単勝1・2倍と凄い支持率のブエナビスタの着差以上の勝利。
完成されているにしても、搭載エンジンの違いが明らかだ。
現時点では同世代の牝馬では抜けた存在だろう。
いや男馬に混じっても凄いのは、新馬戦が証明している。
きっとこれから歴史に名を残す名馬になっていくにちがいない。
そんな桜花賞を堪能させて貰いました・・。