夏の主役に躍り出たアルカズィームとアンテロ[和田栄司コラム]

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6日、英サンダウン競馬場で行なわれたコーラルエクリプスはアルカズィームがライバルをなぎ倒してG1・3連勝を飾った。右廻りの距離が10ハロンと7ヤード、1番人気に推されたアルカズィームは先行するムカドラムの2馬身半差の3番手からレースを進め、直線残り2.5ハロンで2番手に上がり、ムカドラムとの追い比べに持ち込んで150ヤード残して先頭に立ち優勝した。

2馬身差の2着に残り50ヤードで2番手に上がった2番人気のクイーンアンS勝馬デクラレーションオブウォー、ムカドラムは最後ラチにぶつかって立ち上がってしまったが1馬身4分の1差3着に残った。ジェームズ・ドイル騎手で勝ったアルカズィームは目下重賞5連勝、今季は4戦4勝の成績でタタソールズゴールドカップ、プリンセスオブウエールズSに続くG1・3連勝、通算成績を12戦7勝、2着4回とした。

アルカズィームは、27日のキングジョージ6世&クイーンエリザベスSを使わずこのコーラルエクリプスを選んだ。今後の予定は、8月21日のヨーク競馬場で行なわれるジャドモントインターナショナルSから9月7日にレパーズタウン競馬場で行なわれるアイリッシュチャンピオンSを使って凱旋門賞、このプランが有力である。

この日の敗戦でムカドラムもキングジョージを回避する可能性が大きい。キングジョージは今季G1を2勝しているセントニコラスアビーが主役になる。サンクルー大賞典を勝ったドイツのG1・2勝馬ノヴェリスト、サンクルー大賞典は5着に敗れたがシリュスデゼーグル、コロネーションSもサンクルー大賞典も共に2着に終わったドゥナデンとの争いになりそうだ。

7日のメゾンラフィット競馬場で行なわれた直線のマイル戦G3メシドール賞には仏ダービー馬アンテロが出走して来た。1.3倍の圧倒的1番人気に推されたアンテロはペースメーカーのプリンスドアリエノルの3番手、6頭立ての競馬は等間隔で1本棒の展開になった。アンテロはオリビエ・ペリエ騎手を鞍上に残り200mで楽に先頭に立ち、アンテロをマークして伸びて来たメインセイルに1馬身半差を付け、タイム1分34秒フラットでゴールした。

これで6戦5勝、3着1回。唯一の敗戦は仏2000ギニー、この時は直線で前が詰まり、外に出して追い出したのは残り200m地点だった。それでも、クビ、アタマ差の3着。レースの上りが12秒21だから、10秒台の半ばの脚を使った計算になる。また、この時はペリエ騎手がヴェルトハイマー兄弟のもう1頭の馬アノディンに騎乗していた為、マキシム・ギュイヨン騎手が鞍上だった。

仏ダービーでは1番人気に推され、3番手から300m残して抜け出す楽な勝ち方で優勝したアンテロ。その後陣営から、マイル路線に進み8月11日のドーヴィル競馬場で行なわれるジャックルマロワ賞を目指すプランが発表された。ジャックルマロワ賞に向けて、直線のマイル戦で行なわれるこのメシドール賞が前哨戦に選ばれた。

「凱旋門賞についてはあまりにも早過ぎる。勿論1つの可能性ではありますが、時期尚早だと思います。もし勝つことが出来たなら、マロワの後で考えます。そしてシーズンの残りのプログラムも決めることになるでしょう」とヴェルトハイマー兄弟のレーシングマネージャーのピエール・イヴ・ビューロー氏は語った。

ジャックルマロワ賞にはG1・4勝のドーンアプローチも参戦を表明しており、3歳頂上決戦が今から楽しみになって来た。ドバウィ産駒の4歳の牡馬アルカズィームとガリレオ産駒の3歳の牡馬アンテロ、8月の2頭のレースは2013年の欧州競馬を占う意味でも見逃せないレースとなりそうである。


海外競馬評論家 和田栄司
ラジオ日本のチーフディレクターとして競馬番組の制作に携わり、多岐にわたる人脈を形成。かつ音楽ライターとしても数々の名盤のライナーを手掛け、海外競馬の密な情報を把握している日本における第一人者、言わば生き字引である。外国馬の動向・海外競馬レポートはかねてからマスメディアで好評を博しており、それらをよりアップグレードして競馬ラボで独占公開中。