平林雅芳の目

トピックス

土曜東京11R
ユニコーンS(GⅢ)
ダ1600m
勝ちタイム1.36.5

勝ち馬:シルクメビウス(牡3、栗東・領家厩舎)

シルクメビウス、3連勝で重賞勝利!

田中博Jの初重賞勝利となったユニコーンS
小倉戦からコンビとなったシルクメビウス
京都で端午Sにもわざわざ関東から呼び寄せた領家師。 当時引き上げてきた鞍上に、大きな○を両手でこさえて『満点』と乗り方を褒めてあげた光景を目の当たりにした。
今日は果たしてどんな言葉をかけてあげたのか後日聞くこととするが、若いジョッキーにチャンスをあげて、それに応えた田中博J。
これでまたひと皮むけて、一人の大人の騎手が誕生した事だろう。
アッパレである。

カネトシコウショウが直接対決をして先着しているのに、一番人気はシルクメビウスが堂々支持されていた。
そして二番人気はグロリアスノア
これも小林慎一郎Jと、ずーっとコンビを組んでいる馬である。
3戦2勝、ダートでは負けしらず。最終追い切りで、スーパーホーネットの外側でパートナーをつとめただけに映像でお馴染みなはずだが、カネトシを抑えての2番人気支持は凄いものだ。

ゲートを出て最初の芝の部分を超えたあたりで、内からシンゼンオオジが外へもたれてしまった。
外からも、内へと進路をとりだす処だけに、真ん中が窮屈になる。
4、5頭が大きく被害を蒙った様子だが、一番ひどかったのがフォルミダービレであった。
そんな出来事を尻目、スッと前に出たのが厚い支持を受けたグロリアスノア
しかし、大外からダッシュ利かせて先手を主張したのがゲットフルマークス
そして内からシンゼンオオジと続いた。
その後に、ワイズドリームドクターラオウが続き、グロリアスノアは好位置に収まっていた。
そのすぐ内目に、カネトシコウショウも内から追いついてきていた。
シルクメビウスはと観ると、中団より後ろめ。
領家師が『ジックリ行けよ』と言ったのかも知れない。

早々に審議ランプがついたが、スタンドにいる大勢のファンには、何が起きていたのかは判っていなかったことだろう。
私も後でパトロールビデオを見て判ったぐらいの出来事であった。

4角まで、おおかた位置取りも変わらずきていた。
外目を廻ってアズマタイショウが追い上げてきていたが、まだシルクメビウスは大きく動いておらず。
しかし、流れ的にはちょっと速めだとは思えた。

直線に入って前と後ろが入れ替わり、スルスルッとグロリアスノアが前へと踊り出た。直線1Fでは、2馬身ぐらい出たのではないだろうか。
そこへカネトシコウショウも前へと出てきたが、直線でエンジンのかかったシルクメビウスの脚色がよく、アッというまにグロリアスノアをも飲み込み、さらに差をつけて歓喜のゴールへと飛び込んだ。
凄い脚で突っ込んできていたのが、フォルミダービレ
カネトシコウショウに迫る猛追を見せていたのが印象的でもあり、後でビデオをみると、スタート直後のあの不利がなければと思わせた一番の馬だろう。

領家師は検量室前で大勢に祝福されていたが、すかさず握手だけはしておいた。
ちょっと一段落した時に、この後『大井のジャパン・ダート・ダービーへと向うが、調整をちょっと抑え目にしないと』と、今日の仕上がり過ぎを反省していた。
ここらがもうすでに次を見据えてのもの。
今年3歳のレベルアップしているのがよく判る感じだ。
そして若手にチャンスを与えて成長させた、この心意気はアッパレだ。


日曜東京11R
安田記念(GⅠ)
芝1600m
勝ちタイム1.33.5

勝ち馬:ウオッカ(牝5、栗東・角居厩舎)

凄すぎるウオッカ!勝利への執念で安田記念連覇。

地下道を先に引き上げてきたディープスカイ四位J。
馬の上から、『まともなら5、6馬身は千切られていたよ~』と声をかけて通って行った。
しばらくして現れたウオッカ中田担当、そして鞍上武豊J。
手を伸ばして握手させて貰った時の第一声が、『馬に助けて貰った』だった。
いやいや、本当にちょっと数分前は、ドキッとして心臓が驚くほど痛かった。
でもそんな冷や汗ものの気持ちも、どんどんと歓喜へと変わっていった。
勝利の味は格別なものでした。

馬場入りして、スタンドに一番近い芝の大外ラチ沿いを歩くウオッカに、大勢のファンが声をかけていた。
そしてキャンターとなって、最初のカーブへと走り出すともう声援が拍手となっていった。
ウオッカの人気は想像以上である。
やはり競馬には、スーパーホースが不可欠。
少し後にディープスカイが返し馬へと去っていった時も、ファンの声がスタンドで広がった。
そしてGⅠファンファーレと、いつもの手拍子でスターターが壇上に上がる瞬間には、ボルテージは最高潮となった。

ウオッカが横の馬と重なって見えづらいほどの、各馬一斉の好スタートだった。
前走はただ1頭だけが先にポンと出たが、今回はほぼ互角。
前に行けるぐらいの出であるが、外側の馬が前へ前へと出て行き、自然に7、8番手ぐらいの位置どりとなった。
しかし内ラチ沿いを進む馬では、前から3頭目と実にいいポジションだった。
コンゴウリキシオーが押して行ってローレルゲレイロの先となり、ペースはしっかり速そうだった。
ウオッカの少し後ろでは、ディープスカイがじっと追走していた。
最後方にファリダットといった態勢で、各馬4角へと向った。

ウオッカは、直線入り口では少し外目に出したようだった。
その瞬間に、後ろを追走していたディープスカイが内へ入り込み、ウオッカの前へと躍り出た。
ここらは各馬が進路を決めるために殺到するところで、寸分の隙間がなくなってしまうのだ。
ウオッカは瞬間に位置が悪くなり、前にズラッと壁が出来てしまった。

ディープスカイは、NHKマイルCの時のようにスルスルと前を行く馬の間を抜けて先頭へと進んで行った。
ウオッカはとみると、まるで行く場所がなく、しばらく何も出来ないまま馬群の後ろを漂っていた。
『もう時間がない、届かない』と思った瞬間、左へ右へと馬体をねじこむように間を抜けて前にスペースを作ると、いつのまにか、先に出ていたファリダットの横からかわしていった。
さらにディープスカイに追いすがり、そして並ぶ間もなく、抜き去っていた。
ステッキを一度も使う暇もなく、手綱さばきで馬の合間を縫っていったウオッカ
馬首を横にしたり体をねじまげたりするような苦しい体勢からの、馬群を縫っての進撃であった。
後で言葉でいうのは簡単だが、その時は思わず目をつぶりたくなるほどに敗戦を覚悟した瞬間であったが、ゴールで1馬身近くまで前に出たウオッカの凄さは、思わず背筋がゾクっとするものだった。
ウオッカ自身が『負けたくない』と思っているかのような、見事な勝負根性。 本当に頭が下がる思いでした。

検量室の前で安田記念のレイを首に飾られて歩いているウオッカを見ていても、あの劇走の後なのにケロッとしていた。
この心臓の強さが物語る。牝馬で10億円ホースであるゆえんである。
GⅠ6勝の貫禄。
ディープスカイとのダービー馬対戦はまだまだ続くが、今回の安田記念、着差は僅かながら、実際は大きな差をつけて勝ったに等しい内容だったといえよう。
まずは、『ウオッカは凄い』と思えたレースでありました・・・。