史上2例目Vのヴィルシーナ チームで掴んだ復活劇

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14年5月18日(日)、2回東京8日目11Rで第9回 ヴィクトリアマイル(G1)(芝1600m)が行なわれ、内田 博幸騎手騎乗の11番人気・ヴィルシーナ(牝5、栗東・友道厩舎)が優勝。勝ちタイムは1:32.3(良)。

2着には半馬身差で3番人気・メイショウマンボ(牝4、栗東・飯田祐厩舎)、3着には6番人気・ストレイトガール(牝5、栗東・藤原英厩舎)が続いて入線した。
なお、1番人気に支持されたスマートレイアー(牝4、栗東・大久龍厩舎)は8着に敗れた。


近2戦も二桁着順続きと不振を極めたヴィルシーナ(牝5、栗東・友道厩舎)。長らく続いたトンネルを脱したのは初G1制覇の舞台・ヴィクトリアマイルだった。

レースでは好スタートを決めると、内枠のクロフネサプライズの行き脚が一息と見るや、鞍上は気合をつけてハナを主張。陣営が策を温めていたという先行策打つばかりか、そこからは一気にハナへ立ち、終始マイペースの逃げに。後続を引き連れるように直線を向くと、メイショウマンボらが脚を伸ばしてくるものの、他馬の動きに反応するように、そこからもうひと踏ん張り。持ち味の粘りを発揮して復活Vを決めた。

「行く馬がいれば控えていましたが、周りの動きを見てハナへ。スピードを活かしたいと思っていましたし、今の東京は止まらない馬場。少々無理をしても大丈夫だろうと思っていたんです。最近、成績が振るわなかったので一か八かの競馬でしたね。1Fが見えた時に"もうちょっとだから頑張って"という思い。なんとかこらえてくれましたし、なかなか結果が出ていなかったぶんも借りを返せたのかな」

主君の内田博幸騎手はこう振り返ったが、インからはメイショウマンボ、外からはストレイトガールが差してくる展開を凌ぎきる競馬。「両サイドから挟まれる形もこの馬にとっては良かったかな」と鞍上。ヴィルシーナにとってはレース展開も吉と出た。

それでも、自らの手を離れていた時期もあったが、その昨年の当レース以降、6戦して全て掲示板外。たとえ牡馬を相手にしたレースがあったとはいえ、かつてはあのジェンティルドンナの好敵手として、堅実な成績でクラシックを闘いぬいた実力の持ち主。スランプという言葉に片付けられない走りに、誰もが限界と思ったことだろう。しかし、2戦前の東京新聞杯での再コンビに復活の兆しがあった。

「東京新聞杯で内田さんに久々騎乗してもらったのですが、開催延期の影響などで状態がもう一つだったことがあったとはいえ、『良いころに比べると闘志が足りない』という評価だったんです。体調面はずっと良かったのに、勝負根性が影を潜めていて、なんとか気持ちを取り戻せるよう努力しました。馬具を試すこともそうですし、前走の阪神牝馬Sはあえて激しい流れを経験させ、馬込みで競馬をすることによって、気持ちを呼び起こすようにしました。オーナーの了承を得て、着順は度外視して、ここへつなげるためにということですね」

友道康夫調教師がここまでの経緯を明かしたが、その証にこの日は初めてチークピーシーズも装着。陣営の努力も結実し、大一番でのガラリ一変となった。ヴィルシーナを初めてG1馬に導いたのが内田博幸であれば、再びG1タイトルへ導いたのも内田博幸。チームとして勝ち取った連覇。その見事な返り咲きの舞台裏で、トレーナーは復調のサインを感じ取っていたという。

「トレセン、競馬場でも普段はすごく大人しいんです。今日も装鞍所ではすごく大人かったんですよ。それでも、ジョッキーが跨ると振り落とそうとするんです。今日も馬場入りで2度ほど尻っぱねをして、内田さんを落とそうとしていましたからね。それは去年のヴィクトリアマイルでもそうでしたよ。でも、去年のエリザベスは馬場入りでも並足だったくらい。落ち着いているのが良いのかと思ったら、やっぱり気合が入ってこそなんですね」

グレード制導入後、史上2頭目という連続二桁着順敗退からのG1勝利という快挙を成し遂げた今、気になるのは今後の進路だろう。それでも、最大目標をヴィクトリアマイルに見据えていただけに、具体的なプランは練られていない様子。白紙と仮定した上で、「僕はもっと長い距離のほうが向いていると思うのですが……、結果は出ているのはマイルですよね」と友道師が語れば、内田騎手も「この馬が一番走り易いレースをオーナー、トレーナーと考えていきたい。東京のマイルは合っていますよ。ただ、競馬ですから全てのレースを勝つのは難しいこと。しっかりと馬をアピールする場ができるようにレースを使っていきたいですね」と具体名は語らずも構想を語った。

「今までは年齢も考慮してソフトな仕上げだったのですが、今年は年明けから目一杯のメニューをこなしています。体だって一年前より大きくなっているでしょう」

愛馬の成長を口にしたように、トレーナーの目はまだまだ先を見据えていたが、持ち前の闘志に火がついたヴィルシーナなら、更なる活躍も期待せざるを得ないところ。復活ロードはここから始まったばかりだ。

ヴィルシーナ
(牝5、栗東・友道厩舎)
父:ディープインパクト
母:ハルーワスウィート
母父:Machiavellian
通算成績:18戦5勝
重賞勝利:
13~14年ヴィクトリアマイル(G1)
12年クイーンC(G3)







写真=高橋章夫