続・北北の話(11/7)

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 さすがに北海道、朝晩の冷え込みがきつくて、風邪気味になって東京に帰ってきました。マスク姿で東京競馬場に乗り込むと、TC社のN記者が冷ややかな視線です。

 「競馬界もインフルエンザでこの冬は大変なことになる。発端はミスターYかいな…」たっぷりと皮肉を込めての再会の挨拶です。かつて、誰も注目していなかった頃から、エイズの脅威を指摘していたほどの御仁。新型インフルエンザについても、相当の危機感を持っているようです。

 天皇賞当日の東京競馬場は10万人の入場者で大盛況でしたが、マスク姿もかなり目立ちました。確かに人が集まるところで新型インフルエンザのことを考えると、ゾッとする次第です。

 そんな中で始まった天皇賞、8歳馬カンパニーの悲願のタイトル奪取で幕を閉じました。

 「ウオッカは年齢とともにわがままになっているんだな。あれだけ折り合いを欠いていては、最後のひと伸びがきかないさ」

 府中本町駅近くの居酒屋でN記者が敗戦の弁です。何でも、ウオッカの1着固定、相手はオウケンブルースリ、サクラメガワンダー、マツリダゴッホの7枠勢という3連単で、ドカンと勝負していたとのこと。

 「折り合わないから、どうしても馬群の中に入れなきゃならない。それでも直線はうまく外に持ち出してはいるけど、かなり脚を使っちゃったからね」同席していたD社のW記者も負け組です。

 「わがままな年増なんて、手に負えないからなあ。いかに武豊でも…」N記者のぼやきは続きますが、不肖・ミスターYとしては横山典、カンパニーの「熟年」&「惜敗」コンビの快勝を素直に賞賛したい気分でした。カンパニーは13度目のGI挑戦で、悲願の、そして史上最高齢でのタイトルです。で、横山典騎手、こちらも秋の天皇賞に限れば20年連続の挑戦で初優勝でした。

 「うん、ノリは確かにあっぱれだったな。もう41歳なんだから、デットーリ・ジャンプはちょっとさまにならなかったけどさ。今年はダービーも勝ったし、いいリズムだったんだ。トミオさんが亡くなったのも、何かの因縁なのかもね」とW記者。父親で元騎手の横山富雄氏がこの9月18日に亡くなりました。メジロの馬で大活躍、障害の名騎手として鳴らし、秋の天皇賞も1969年にメジロタイヨウで勝っています。横山典騎手にしてみれば、40年の時を経ての父子制覇だった訳です。

 「ノリとカンパニーはほんと、ロスのない競馬をしていたよな。道中はウオッカのちょっと前の位置取りだったけど、ピッタリ折り合っていた。だから4コーナー過ぎで馬群が密集した時も、スイスイとばかりに抜け出せたんだ」と、いつもは辛口のN記者も、オジンコンビには脱帽です。

 数日後、北海道はすすきの馬券連の学生君から報告が入りました。

 「Hさんと門別です。息子さんの厩舎でアルバイトを始めたんです。学生最後の冬休みの資金稼ぎ。競馬も見られるし、一石二鳥ですよ」と学生君の声は弾んでいます。東京生まれの北大生、いくら競馬が好きでも厩舎作業は大丈夫なのでしょうか。

 聞けばH元調教師、付き合いがある音無厩舎の2頭を狙って、単勝で結構な配当をゲットしたとのこと。

 「そのご祝儀もあって、簡単な作業を手伝わせてくれることになったんです。朝早いのはちょっときついですけど、大丈夫。寝ワラの始末もちゃんとできましたよ」と学生君は、どこまでも前向きです。

 「それはそうと、店長氏、ついに馬券休止宣言を出しました。なんでも狙ったシンゲンが故障していたことが、ショックだったらしくて。オレは呪われている、とかなんとか訳の分からないことを言い出したんです。まあ、いつものことですけどね。禁煙、禁酒宣言よりも、もっと信憑性は薄いんですけどね。一応、今週末はすすきの場外ではなく、札幌ドームに張り付く、と言っています」と学生君。

 日本シリーズで日本ハムが2勝3敗の星取りで北海道に戻ることになり、店長氏は馬券連敗の悪しき流れを日本ハム応援の熱気で断ち切ろうという魂胆のようですが、果たして、うまく行くのでしょうか。(第62話終了)