荒々しくも力強く、ベルラップが重賞初制覇!

ベルラップ

14年11月29日(土)5回京都8日目11R 第1回京都2歳S(G3)(芝2000m)

ベルラップ
(牡2、栗東・須貝尚厩舎)
父:ハーツクライ
母:ベルスリーブ
母父:シンボリクリスエス

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圧倒的人気のティルナノーグは、ゲートのタイミングがやや悪く後方からの競馬となる。向こう正面は内目から順位をあげて行くが、坂の下りで前との差が縮まらない。
好位の4番手の外目でレースをしていたベルラップが、直線でも馬場の少しだけ良さげな外目を伸びる。ややゴール前で左右にふらついて、大外から伸びてきていたダノンメジャーに接触する。長~い審議の末、降着もなく確定。またしても新たにやってきた外国人騎手、W・ビュイックJの重賞勝利。それにしてもラフな騎乗が目立つ最近である…。


夜半の屋根を叩く雨音もけっこうだったが、競馬場へ向かう高速道路で遭遇した雨は、まるで夏の降り方。ワイパーを最高にしても、視界が利かない。ハンドルを取られるほどの水しぶき。パシャパシャの中を運転して競馬場に着く。そして馬場発表をみると、ダート重で芝は稍重。《レースが近づけば芝も重になるんだろう…》と思っていたが、ダートは不良となったが、芝は終始そのまま。見た目は確かに悪くはないのだが、あれだけ降ったんだからと、発表以上に悪いはずと感じてはいた。

返し馬をスタンドのテラスに座って見ていた。ティルナノーグは、手脚を手一杯に伸ばしていくフォーム。《惚れ惚れするな~。まるでキズナとかの感じに良く似ているな~》と、後ろ姿をずーっと見つめていた。ウイナーズサークル傍の、いつものポイントに移動して観戦。ところがゲート入りしだすうちに、ティルナノーグが中でガタガタしはじめる。ついには開いた瞬間に上へとジャンプする様な出となって、後方からの競馬となってしまった。今回はこの少頭数だから何かを試みてみるのではないかと思っていたが、後方からではこの2戦と同じ戦法となるのか。
エイシンライダーが行くのかと思いきや、外からアイオシルケンが出ていった。当然にゆったりの流れで推移する。向こう正面は13秒台のラップになった。そこでティルナノーグは内目から少し前目へと出ていった様子。ダノンメジャーの少し前へと位置する。

しかし3コーナーからの下りでは、相変わらず内目で動かない。段々と4コーナーが近づいてくるが、いっこうに上がって行く気配には見えない。と、言うか、この馬数で却ってバラけなくなり、馬群が密集して外へ出す隙間がないのに後で気がつく。素人の短絡な考えと、実際に乗っている騎手の瞬時の判断の違いである。カーブを廻って直線に入る時には、外にいるダノンメジャーがまだまだ余力が残っているのに、ティルナノーグの武豊Jの手綱は何か反応がなく感じる。

ラスト300mのあたりで先行した2頭が内ラチの方へ、追い上げていく好位組が外へと二つに分かれて、ティルナノーグの前がパカっと大きく開いた。一瞬に伸びてくるのかとまだ希望を持って見ていたが、馬が反応してない。外の組のベルラップ、フローレスダンサー、その外へ出たダノンメジャーの伸びがいい。
どんどんとゴールが近づいていく。ティルナノーグは何も伸びていかない。まだその後ろにいたシュヴァルグランの方が伸びていく。
ベルラップが、グングンとゴールを目指して脚を伸ばしていく。大外のダノンメジャーの伸びがなかなかにいい。フローレスダンサーを交してさらに前へと迫って行く。シュヴァルグランも、馬場の真中をかなりの伸び脚で加速していく。しかし先頭のベルラップは、もうゴールがまぢか。

その瞬間に、外へヨレたベルラップ。追い上げてきたダノンメジャーの体勢が揺らいだのは見えた。それがゴール前なのかゴール過ぎなのか。小牧Jの手綱が一瞬だけ止った様に見えた。けっこう長い審議ランプがついていたが、結果はそのまま確定。

後刻、ビュイックJには5万円が2回の制裁が科せられていた。火曜の朝、橋口師に聞いた。《先生、二度の不利と小牧さんのコメントに書いてありますが…》と尋ねると、『そう、4角で①番の馬とうちのが外へ張られたんだ、そことゴール前の二度だった。特には4角の方が痛い。カーブに入るところだから、かなり外へ振られる。あれは痛かった』と言う。報道関係に《ダービーへの賞金としてはまだ足りない。最初からホープフルS(中山・最終日・芝2000》を予定していたし、そのつもりだ》と語っていた。

帰りに松永幹厩舎へ寄って、ティルナノーグの馬房へ向かう。元気にカイバをほおばっているティルナノーグの姿に安堵する。そして担当さんの《良馬場でやりたかったですね~》。あの雨を悔しがる想いであった。あの綺麗な飛びでは、あの馬場コンディションでは無理。次こそ良馬場で頑張るしかないだろう!と雪辱を誓いあった…。


平林雅芳 (ひらばやし まさよし)
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。