エリザベス女王杯/平林雅芳の目

トピックス

日曜京都11R
エリザベス女王杯(G1)
芝2200m
勝ちタイム2.13.6

勝ち馬:クィーンスプマンテ
(牝5、美浦・小島茂厩舎)

テイエムプリキュアが逃げてクィーンスプマンテが2番手。
なんて勝手に思っていたが、どうやらそこは2頭いる逃げ馬の屋根は思う処があったのだろう。

スッとクィーンスプマンテが出て、テイエムプリキュアが2番手の態勢が決まり、2コーナーを廻って、前の2頭が2馬身ぐらいしか離れないで先行したのだが、その後ろの3番手が大きく差がついた。
どうやら、リトルアマポーラがその位置でレースを進めているようだ。
前の2頭は脚をタメる気持ちでなく、どんどんと前へ前へと進んでいる感じだ。向う正面に入って、カワカミプリンセスも前に上がったのが判った。
まだ、後ろの馬は当然じっとしていた。

3コーナーをとっとっとと、前の2頭が通過して坂を下っていった。
しばらく、かなり間があってから、後ろのグループがその3コーナーを通過。そんな感じであった。
前の2頭が、4コーナーを廻った時に坂の下りに入ってきたように思えた。
いくら何でも離れすぎていると、スタンドの大勢の観客も気が付いた。
しかし、ガタっと前の2頭の脚が止まるだろうと思いながらも、その前の2頭が内ラチの方に行かずに、馬場の真ん中より少し内目を、衰えない伸び脚で進むのを見て愕然とした。

大外を廻ってブエナビスタが来ていた。
しかし、前を行くテイエムプリキュアにまだ遠く、その先のクィーンスプマンテには遙かに遠かった。
そして場内が騒然とする中を、クィーンスプマンテが誰にも並ばれずに先頭のままでゴール。
テイエムプリキュアも2着を死守した。
ブエナビスタ3着。
そこから離れて好位にいたシャラナヤが4着。
芦毛のメイショウベルーガも道中白い馬体で確認していたが、精一杯の伸びで5着であった。

2頭で大逃げ。
2番手のテイエムプリキュアがガードとなって、先頭のクィーンスプマンテには格好の逃げ舞台となった。
当然、テイエムプリキュアが殊勲賞なのだろうか。
もし、逆の形になった時にはどんなペースとなっていたのだろうか?そこは判らない。
何せこの逃げ馬2頭が怪ペースを演出して、2頭で大逃げ。
後続馬のジョッキー心理をついた感じだ。

最後の1ハロンだけが12秒台の後半。
ずっと12秒台前半での流れを造り出し、最後の坂の下りから残り800メートルでは11.8~11.7とペースアップ。
ここが後続とはすごく離れた時。
前の2頭が4コーナーを廻る時に、後続が3コーナーを下り出したぐらいに差があった気がした。

検量室前の枠場、一番左の1着のところでクィーンスプマンテの鞍を外していた田中博Jに、近づいてきた領家師が声をかけた。
もう大泣きの彼だが、領家師と握手を交わした。

今日も新馬戦でひと鞍乗せてあげた領家師。
そう、今年シルクメビウスのユニコーンS重賞制覇のコンビである。
春の小倉で、シルクメビウスで勝った縁でずーっと乗せてあげて、ついに重賞までたどりつかせたその心意気。
そして今回のG1初勝利だが、その前に京都コースの芝でひと鞍でも乗れるのは大きかったはず。

目に見えない処で勝利への道は続いていく。
展開に恵まれた勝利では、決してない。
自分たちでペースを、流れを造っていっての勝利なのだ。
2頭の逃げ馬が大逃げを打った。動けない有力馬。展開面は確かにそうだろう。
でも自力で勝ち獲った勝利なのである。
これが競馬だ。競馬は必ず生きている。
いろんな事が有り得るのが、キングオブスポーツの所以である。