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小倉もイン タツゴウゲキが内からグイッと出て重賞初勝利!【平林雅芳の目】
2017/8/8(火)
17年8/6(日)2回小倉4日目11R 第53回小倉記念(G3)(芝2000m)
- タツゴウゲキ
- (牡5、栗東・鮫島厩舎)
- 父:マーベラスサンデー
- 母:ニシノプルメリア
- 母父:Singspiel
ハンデ戦らしい一戦となった。全場重賞制覇の意気込みで臨んだ戸崎Jのサンマルティン。4コーナー手前から外を一気に上がってきた脚色から、達成!と思えたところへ、内で脚を貯めていたタツゴウゲキがスルスルッとゴール前で並んで、頭の上げ下げで並んでゴールへと入った。 MデムーロJ落馬で乗り替わった秋山Jと戸崎Jが、顔を見合わせてのゴール過ぎ。どちらも勝ったのか負けたのかが判らない雰囲気を感じた。だがスロービジョンでは、内のタツゴウケキの鼻づらが前に出たところを映しだしていた。 前回の七夕賞から格上挑戦が続くが、見事に2戦目で勝利と厩舎の意気込みのとおりの勝利となった…。
1番人気のストロングタイタンは、前回の中京でレコード勝ち。暑いさなかの快挙で、逆にその反動を心配してしまうファン心理。関東からのサンマルティンは、前回で条件を卒業したばかりの重賞初チャレンジ馬である。母はあのディアデラノビアだが、すでに去勢されてから1年を経つ。展開を考えみても、どうにも荒れ模様と馬券を買う身には面白いレースとワクワク感でいっぱいであった。
前売りが始まり、単勝オッズが判る。サンマルティンが人気は判る。戸崎Jの全場重賞制覇がかかる。馬はあのディアデラノビアの子供で、前走勝って昇り調子ではある。 だがタツゴウゲキの人気は何なんだろう?と思って前走、七夕賞のビデオを見る。確かに内で詰まって外へ出しての6着と、けっこうな脚を使ってはいる。だがあれがなければとは思えない。あの時は流れが急で、差し馬向きの展開でもあったと素直に迎え入れない。 52キロの軽量にMデムーロJが乗るのは確かに魅力があるのだろう、だが…と否定項目ばかりを見つけて、出来るだけ外す方向で考えていた。 まして落馬で乗り替わりである。時間が経ってから秋山Jに決まった。52キロで乗れるジョッキーもいなかったのだろう…ぐらいに考えていた。
スタートは大外のバンドワゴンを見ていた。時々、まともに出ない時があるからだ。最後に入ったバンドワゴンは、まずまずのスタートを切った。 ベルーフとシャドウパーティーがすぐに後方となる。内のヴォージュが先頭となるのかの1ハロンと、少し先を行ったあたりでバンドワゴンが外から前へと出た。内でタツゴウゲキが3番手。フェルメッツァにストロングタイタンと続く。ドンジリは少し馬群から離れてシャドウパーティーで、スタンド前を過ぎて行く。 バンドワゴンの逃げは引きつけ逃げ、2番手ヴォージュで1馬身もないぐらい。半馬身でタツゴウゲキが続き、ストロングタイタンがそのすぐ後ろ、最内のスピリッツミノルで流れて行く。
向こう正面に入って、隊列はだいぶ短くなる。1000M通過は58.3と、そんなに速くもないだろうが、遅い流れではない。3コーナーのカーブに入って行くあたりで、先頭のバンドワゴンに後続がかなり接近していく。小倉の勝負処である。
バンドワゴンの和田Jの手綱が、少しずつ早く動きだす。中団の外目にいたサンマルティンが、一気にスパートして上がってきた。4コーナーのカーブに入ろうとする時には、バンドワゴンにはもうステッキが入った。その外をヴォージュ、ストロングタイタン、サンマルティンの3頭が並んで行く。真中のストロングタイタンの川田Jのアクションが大きくなって、余裕がない。その後ろにタツゴウゲキが持ったままで待っているのが見える。
カーブを廻って直線に入って来た時は、サンマルティンが体ひとつ前に出ていた。馬場の4分ところを廻って先頭になったサンマルティン。戸崎Jが左肩ムチで馬を促す。そして左ステッキを1,2発と入れて追いだす。その時に内ラチ沿いを選択したタツゴウゲキが鋭く伸びだしてきた。 先に伸びて行くサンマルティンの内を、馬体を合わせに行く秋山J。やや頭の高い走りのサンマルティンに対して、少し低い位置で動くタツゴウゲキの頭。頭の上げ下げが続いてゴールへと向かう。 外が優勢だったのはゴール少し前まで。ゴールを通過した時は、ハッキリと内のタヅゴウゲキの勝利が見えたものであった。
その2頭のデッドヒートの3馬身後に、フェルメッツァがベルーフとの追い合いに負けないで3着を確保。カフジプリンスがヴォージュを交わして、5着に上がった。ストロングタイタンは8着と敗退。逃げたバンドワゴンはクランモンタナにも差されて、11着であった。 直線で、サンマルティンが少し外へ逃げ気味に感じた、その瞬間に内からタツゴウゲキが忍び寄ってきて、並んで勝利をもぎとった。
それにしてもの騎乗ぶりであった。好発から内で脚を貯めて、4コーナーでも前が開くのを待ってからの追い出し。秋山Jの、ものの見事な乗り方であった。迷いのない騎乗とも言えようか。何でも、同じ七夕賞で騎乗していたそうである。レース後にジョッキーはパトロール室でレースのビデオを見る。そこでいっぱいインプットされていたのであろう。
父マーベラスサンデーは、15戦10勝で全てに武豊Jを背に共に戦った馬である。重賞4連勝とかをして、宝塚記念をバブルガムフェロー相手に勝った馬。1997年には最優秀5歳上牡馬のJRA賞を戴いた。有馬記念は2年連続で2着。最後のレースは1997年の有馬記念、勝ったと思ったところを、シルクジャスティスに頭差交わされた。その子供で、何か似たようないぶし銀の様な感じのタツゴウゲキのレースぶりであった。 七夕賞が初めての重賞挑戦で2走目での快挙。ハンデうんぬんでなく、まだ秘めたるものがありそうな馬であろう。
つくづく自分の競馬センスのなさを実感した今年の小倉記念でもあった…。
平林雅芳 (ひらばやし まさよし)
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。
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