一時は年間0勝というどん底を味わいながらも、今や大手の主戦ジョッキーとして活躍を見せる
不死鳥ジョッキー。諦めることなく復活を果たした男が日々の騎手生活を自らの言葉で紡いでいく。
1勝1勝の重みをかみ締めて
2015/8/6(木)
実はその前のレース、マイネルフレッチャの②着でへこんでいたんです。前が流れていたので、あの位置取りでもハマるのではないかという感触で構えていたのですが、最内枠からの勝ち馬に上手く乗られてしまいました。絶対に勝たせてあげないといけない馬なので、差し傾向になるはずの次こそは決めたいです。メイショウユメゴゼ(9人気②着)は休んでリフレッシュされていました。あれでも体に余裕があったので、次走はもっと良くなってくるはず。外枠も好走のポイントだったと思います。アイビスSDのリトルゲルダ(5人気⑤着)は、スタート直前に内側の馬が突進して、それに怯んでほんの少し出遅れてしまったが痛かった。昨年より斤量が2キロ増えた中で頑張ってくれましたが、敗因のポイントが明確なだけに悔やまれます。改めて重賞2勝馬という力は感じました。
この土曜は新潟で8鞍に騎乗します。1Rのマイネルツィールは調教でいつもいい動きをしているのですが、競馬に行くと相手を気にして追い通しになってしまうのです。今回はチークピーシズを着けて臨むので、集中して流れに乗れればそう差はないはず。2Rのブラスリングは当日のテンションが課題。返し馬でとにかくなだめて、どう競馬に持っていくかがポイントです。そういう意味でも、距離が短くなるのは悪くないと思います。6Rのコウギョウゴールドは約7ヶ月振りの実戦。使えば更に良くなると思うのですが、地力がある馬だけに楽しみです。
7Rのコスモフィンセントは使いつつ良くはなってきた印象。万全であればいい脚を使える馬なので、叩き3走目の上積みに期待します。9Rのペルソナリテは先週追い切りに乗せていただいて凄くいい印象をつかめました。体がない馬なので当日の気配が鍵になりそうですが、オープンでも通用しそうなキレる脚を持っています。11Rのドリームコンサートは、揉まれずに運べれば着順を上げられるイメージ。ゴチャゴチャした競馬は向かないので、枠なりの作戦を考えて臨みます。
日曜も新潟で10鞍に騎乗します。1Rのコスモレティクルムは、初戦で思っていたよりもおっとりしていて、ゲートをスムーズに出られませんでした。一度使ったことでピリッとしてくれれば変われる力はあると思います。5R(2歳新馬)のクアルティエーレは、ずっと追い切りに乗せていただいています。牧場の期待も大きい馬なので、実戦に行っての走りが楽しみです。8Rのマイネルシャルフは降級の前走が案外でした。それでも新潟内回りは合いそうなイメージがあるので、そろそろキッカケを掴みたいところ。12Rのウインネオルーラーは気難しい性格がネックも、十分に勝ち負けできる力を持っています。調教では相変わらず凄くいい走りをしているので、気分を損ねないように乗れるかどうかがポイント。勝手は知っている馬なので、何とか結果を出してあげたいです。
先週は300勝を達成するまで苦労しましたし、ナオスで勝った後もあと1勝を上積みすることはできませんでした。改めて、ひとつ勝つことは大変なことなんだなと身にしみています。そんな時に鞍置きが近い内田博幸騎手が雰囲気を悟って「1勝1勝の重みをもっとかみ締めながら乗れっていう事なんだよ」とアドバイスを下さり、地方騎手時代からあれだけ勝たれている先輩の言葉はズシッと心に響きました。多くの馬に乗せていただいていることに感謝を忘れず、これからもひとつでも上の着順を目指して頑張ります。
プロフィール
柴田 大知 - Daichi Shibata
1977年6月18日生まれ、栃木県出身。
1996年に騎手デビュー。デビュー2年目までは年間20勝以上をマークする若手有望株として注目を浴びたが、年々勝ち星が減少。遂に2006〜2008年は未勝利に終わった。しかし、騎乗数を徐々に取り戻すと、2011年には中山グランドJで涙のG1制覇。「マイネル軍団」の主戦ジョッキーとしてのポジションも確固たるものとした。2013年にはマイネルホウオウでNHKマイルCを制し、平地・障害ダブルG1制覇を達成した。