一時は年間0勝というどん底を味わいながらも、今や大手の主戦ジョッキーとして活躍を見せる
不死鳥ジョッキー。諦めることなく復活を果たした男が日々の騎手生活を自らの言葉で紡いでいく。
アルテミスSはタイドオーバーに騎乗
2017/10/26(木)
先週はコスモイグナーツ(6人気)で勝つことができました。メンバー的なものや馬場状態から、スタート前からハナに行こうと決めていました。むしろ速い時計になった場合に懸念があったので、条件もかみ合ってくれました。菊花賞のマイネルヴンシュ(11人気④着)も馬場は苦にしていなかったのですが、周りの動きに馬が圧倒されてしまってあの位置取り。強風や雨も相まって追っ付けども進んで行かず……。それでも、結果的にはタフなレースとなり、手応えが怪しくなった後に最後もうひと伸びしてくれています。想像以上にスタミナもありますし、改めて今後が楽しみになりました。一方、富士Sのマイネルアウラート(12人気⑨着)は滑るような走りで、主たる敗因は道悪だと思います。ただ、寒い時期に状態を上げる馬で、近走から上向いている感じはありました。綺麗な馬場であれば、この先に巻き返してくれると見ています。
この土曜は東京で10鞍に騎乗します。アルテミスSのタイドオーバーは難しいところがある馬なのですが、3走目の前走は競馬が上手になっており、厩舎の方々の工夫が反応から伝わってきました。今はコントロールも良くスムーズに流れに乗っていけるはずなので、そこからハミ抜いて、最後にもうひと脚を使わせるようなイメージ。今週の追い切りも重たいウッドでしっかり走れていましたので、道悪になってもこなしてくれると思います。2Rのコスモミクニグロの初戦は馬が周りに気を使って、流れに乗り切れなかったという印象。レースを覚えていて慣れが見込めれば、もっとやれていい雰囲気を感じます。
5R(新馬)のヴィルジェンは今週の追い切りに乗せていただきましたが、気持ちが前向きで好仕上がり。あまりにも馬場が悪くなると分かりませんが、芝向きの走りで力は出せる態勢です。9Rのペルソナリテは1400mだと少し前半が忙しくなるものの、最後はしっかりと脚を使ってくれます。ここのところ自分の競馬はできており、イメージもあるので引き続き期待しています。10Rのオニノシタブルの前走は、今までで一番の時計で上がりも優秀。脚質的に馬場が速くなるのは歓迎ではありませんが、状態面の上積みもあるはずで馬は頑張ってくれると思います。
日曜は京都で7鞍に騎乗します。10Rのマイネルバサラは使いながら調子を上げてくるタイプ。休み明け3走目で走ってくれる頃合ですが、この馬も時計はかかってほしいクチ。クラス実績もあり期待していますが、当日の馬場状態は気になるところ。11Rのマイネルハニーは雨が降って時計がかかる馬場はむしろ歓迎。1週前追い切りに乗せていただきましたが、レースを一度使って反応が良くなっていました。今週も順調と聞いており舞台は申し分ないので、勝たせてあげたい関西遠征です。12Rのマイネルパラディは北海道の洋芝で走っていますし、実績からも馬場が重くなるのは問題なさそう。前半戦の騎乗馬しかり、予習をしっかりして臨み力を出し切ってあげたい。
来週は金曜からの3日間開催で、あっという間にまた競馬を迎えることになりそう。騎乗は金曜が福島で土日が東京になりますが、とりわけ福島は大好きな競馬場で今から楽しみにしています。例年になかった番組編成なので、得をしているような気持ちすら。慌しい1週間になりそうですが、一日早い進行でコラムも更新できるように頑張ります!
プロフィール
柴田 大知 - Daichi Shibata
1977年6月18日生まれ、栃木県出身。
1996年に騎手デビュー。デビュー2年目までは年間20勝以上をマークする若手有望株として注目を浴びたが、年々勝ち星が減少。遂に2006〜2008年は未勝利に終わった。しかし、騎乗数を徐々に取り戻すと、2011年には中山グランドJで涙のG1制覇。「マイネル軍団」の主戦ジョッキーとしてのポジションも確固たるものとした。2013年にはマイネルホウオウでNHKマイルCを制し、平地・障害ダブルG1制覇を達成した。