一時は年間0勝というどん底を味わいながらも、今や大手の主戦ジョッキーとして活躍を見せる
不死鳥ジョッキー。諦めることなく復活を果たした男が日々の騎手生活を自らの言葉で紡いでいく。
いい形で締めくくりたい最終週
2019/6/20(木)
先週はマイネルクラフト(4人気3着)が最高着順。厩舎が前走時と遜色ない状態に調整してくださって、スタートこそ案外でも大外枠から内に潜り込めてロスのない競馬ができました。上位2頭には離されてしまいましたが、プランの幅も広がる内容だったと思います。中3週だったコスモエスパーダ(5人気4着)は大きく崩れた2走前から巻き返してくれましたが、それでも自分からヤメてしまうような面が出ています。勝てるだけの力はある馬ですが、精神的に苦しくなっているのかもしれません。この時期の未勝利の難しさを感じます。
この土曜は東京で9鞍に騎乗します。1Rのラシカルガイブは心身共に幼さが残りますが、競馬を経験した上積みは大きそうなタイプ。頭数、距離と合いそうなので一歩前進に期待したい。2Rのアドアステラは休み明け3走目、持ち得る能力からも何とかしなければいけない一戦。スタートにだけ気をつけて、地力を信じた騎乗で勝ち切りたい。5R(2歳新馬)のコスモタイシは2週続けて追い切りに乗せていただき、しっかり負荷をかけています。体が少し緩い面もあるのですが乗り込みは十分。現状の力を初戦から出してくれるはず。
6Rのマイネルナイペスは慎重にスタートを決めて、内目の好位で流れに乗せていきたいタイプ。東京1400mで上手く立ち回れるイメージはできています。10Rのキューンハイトの前走は続戦の疲れが出ていたような印象。東京コースも1800mも合っているので、いい休養になっていれば緒戦から巻き返してくれるはず。11Rのローズプリンスダムは今週の追い切りに乗せていただきましたが動きは抜群。その動きが競馬で伴っていないことから、今回はブリンカー着用。スムーズに気持ちを乗せていければ変わってくれるタイミングではないでしょうか。
開催最終日となる日曜も東京で9鞍に騎乗します。1Rのアイルビーザスターは距離を延長した前走が案外。2走前の内容からも、前半ついていけないくらいのほうが直線で脚を使えるのかもしれません。コース適性は間違いないので、大きく巻き返したいところです。3Rのビジュティエはデビュー寸前で一頓挫あり、このタイミングまで延びてしまった初出走馬。今週の追い切りに乗せていただきましたが、既走馬相手でもと思わされる動きでした。ただ、かなりテンションが高いので、当日競馬に向かうまでのアプローチに気をつけたい。
5R(2歳新馬)のクルワールデジールは1週前に乗せていただきましたが、フケの影響があったようで反応がひと息。しかし、今週は完全に治まったということで、雰囲気の良さを伝え聞きました。初戦から頑張ってくれると思います。9Rのコスモビスティーは昇級緒戦の前走でも頑張っています。ゲートの中で落ち着かない面があるので、五分に出して流れに乗せれば改めてチャンスがあるはず。11Rのトミケンキルカスはここ数戦を見ても、東京芝1400mがベスト。自分が芝で乗るのは初めてになりますが、ハンデ戦と相まって十分にチャンスはあるはず。
先週は禁止薬物問題で3開催場156頭が出走取消しとなる大アクシデント。調整ルームに入っていることから土曜朝に知ったので、自分の乗り馬に取消しがなかったこともあり、最初はあそこまでの大事だとは思いませんでした。厩舎関係者や新聞社の方々は本当に大変だったと思います。そんな余波は火曜の交流競走でもあり、なんと船橋のレース(10R)にも関わらず、地方馬が大挙取消してJRAの馬が7頭という8頭立て。1番人気のアメリオラシオンで勝てず残念な結果ではありましたが、異常な事態だと改めて思いました。ファンや馬主さんの信頼を回復していけるよう、サークル内でも再発防止を徹底しなければいけません。
プロフィール
柴田 大知 - Daichi Shibata
1977年6月18日生まれ、栃木県出身。
1996年に騎手デビュー。デビュー2年目までは年間20勝以上をマークする若手有望株として注目を浴びたが、年々勝ち星が減少。遂に2006〜2008年は未勝利に終わった。しかし、騎乗数を徐々に取り戻すと、2011年には中山グランドJで涙のG1制覇。「マイネル軍団」の主戦ジョッキーとしてのポジションも確固たるものとした。2013年にはマイネルホウオウでNHKマイルCを制し、平地・障害ダブルG1制覇を達成した。