一時は年間0勝というどん底を味わいながらも、今や大手の主戦ジョッキーとして活躍を見せる
不死鳥ジョッキー。諦めることなく復活を果たした男が日々の騎手生活を自らの言葉で紡いでいく。
菊花賞はナイママに騎乗
2019/10/17(木)
台風の影響で月火開催(東京)になった先週は、初めて乗せていただいたスマートサーブル(9人気)の3着が最高着順。転厩緒戦と相まって手探りではありましたが、時計的にもそうですし、次が楽しみになる内容。1勝クラスで十分に渡り合っていける馬です。チークピーシーズを着けて臨んだステラドーロ(3人気5着)は、前の馬に並ぶまでいかず、差されてしまうもどかしい内容。少し間隔を空けることになりそうですが、立ち回り自体は上手いので、リフレッシュして立て直せば巻き返してくれるはず。
この土曜は東京で9鞍に騎乗します。富士Sのアンノートルは今週の追い切りに乗せていただきましたが、使えば上向きそうな感じがありつついい動きでした。久々で相手も強くなりますが、週末にかけての雨予報は望むところ。ベスト条件で戦える舞台だけに楽しみにしています。2Rのバイカルは一生懸命に走る馬で、2戦目の前走がいい内容でした。この馬も時計がかかる馬場が合いそうなので、上積みと相まって前進させられるイメージです。3Rのコスモビートイットは、3戦目の前走でゲートに前進がありました。1200mなら1400mのほうが競馬しやすいので、勝ち負けを意識して臨みます。
8Rのマイネルクラフトは前走然り、東京2400mの少頭数がベスト条件。中1週での参戦も元気一杯で、ノメる馬ではないため馬場悪化も気になりません。10Rのマイネルビクトリーは使って良くなっていくタイプなので、休み明けの分がどうか。状態が伴えばコース問わずに頑張ってくれる馬です。12Rのキューンハイトは前走も2走前と同じくらい頑張っています。捌きやすい少頭数と道悪は合うので、前進を見込んでいます。
日曜は京都で5鞍に騎乗します。菊花賞のナイママは、またしても8枠が当たってしまいました。本心は今度こその内枠希望でしたが、決まった枠の中で作戦を立てて、ロスなく立ち回るしかありません。1週前にしっかりと負荷をかけたので、今週は体を大きく使わせて息を整える最終調整。状態に関しては本当に自信を持っています。スタミナはかなりあるほうなので、3000mもむしろプラスに出てくれるはず。もちろんG1で相手は強いのですが、皐月賞やダービーも人気以上の走りをしてくれており、期待を持って挑めるクラシック最終戦です。
4R(新馬)のブラックスプルースは追い切りにずっと乗せていただいており、動きがとても良くなってきました。神経質な面はありますが、毎週調教でやってきたことを出せればいい競馬になるはず。仕上がり良く、1400mという距離も合うと思います。9Rのマイネルズイーガーは、ハナでも2番手でも自分のリズムで走れるかどうか。久々になりますが、少頭数で条件は合いそうなので、持ち味であるしぶとさを活かす競馬をしてあげたい。
先週日曜分の代替開催となる月曜は東京で7鞍に騎乗します。2Rのマイネルチューダの前走はスタートを上手く出て、調教の良さが競馬にも繋がってくれました。この中間はさらにしっかりしてきた印象があり、もう一段の前進を期待しています。3Rのトロピカルビーチは、期待していたダート替わりの前走が案外の結果。ともあれ、スタートは上達して前進気勢が出ていたので、芝に戻れば変わってくれると思います。
6Rのレンズフルパワーは連闘。先週は伸びあがる感じのスタートとなり、前残りで落ち着いてしまったペースとかみ合わず。芝スタートに不安はありますが、追走面から1600mになってくれるのは歓迎。疲れはないと思うので前進させてあげたい。7Rのアルママは引き続き好調をキープしています。改めてマイルが合うことも分かったので、当日どのような馬場になるかがポイントではないでしょうか。速い時計の決着になると分が悪いので、少しでも雨馬場が残ってほしいところです。11Rのマイネルサージュは約2年振りの騎乗になります。ここのところの成績と斤量58キロで強気なことは言えませんが、かつて重賞に挑戦させてもらったりと思い入れある馬。次に繋がるような競馬をしてあげたい。
先週は金曜にトレーニングをしていたタイミングで中止の報があり、それから自宅に戻って土日は京都の競馬観戦。地元は雨風こそ強かったものの、まさかそう遠くない場所で、ここまで甚大な被害が出てしまうとは思いませんでした。競馬も代替になる影響で大きな混乱がありましたが、無事に開催できたということが何より。被災地の一日も早い復旧を祈りつつ、自分にも力になれることがないかを考えます。
プロフィール
柴田 大知 - Daichi Shibata
1977年6月18日生まれ、栃木県出身。
1996年に騎手デビュー。デビュー2年目までは年間20勝以上をマークする若手有望株として注目を浴びたが、年々勝ち星が減少。遂に2006〜2008年は未勝利に終わった。しかし、騎乗数を徐々に取り戻すと、2011年には中山グランドJで涙のG1制覇。「マイネル軍団」の主戦ジョッキーとしてのポジションも確固たるものとした。2013年にはマイネルホウオウでNHKマイルCを制し、平地・障害ダブルG1制覇を達成した。