一時は年間0勝というどん底を味わいながらも、今や大手の主戦ジョッキーとして活躍を見せる
不死鳥ジョッキー。諦めることなく復活を果たした男が日々の騎手生活を自らの言葉で紡いでいく。
スプリングSはエンに騎乗
2020/3/18(水)
日数以上に長く感じた2週間の騎乗停止が明けます。まずは、滞っていた中京開幕週の2勝から振り返らせてください。コスモエスパーダ(14人気)は調教も動いており状態の良さを感じていたので、思い切った戦法が上手くいきました。未勝利時代に悔しい思いをしてきたので、自分としては格別の勝利でした。マイネルインパクト(1人気)はまだまだこれから良くなっていく馬。久々でも負けられないつもりでしたし、今後の成長を背中で見届けていきたい一頭です。この週は無観客になってしまった初週で、口取りの際の静けさに普段の有難みを感じました。2週経ってなお状況は改善していませんが、ファンの皆さんの声援が聞こえる通常開催へと戻れることを心から願っています。
今週は変則の3日間開催。初日の金曜は中山で3鞍に騎乗します。2Rのマイネルイリャルギは3走前から内容のある競馬が続いています。乗り方ひとつという段階まできていますので、勝ち負けを意識して頑張りたい。6Rのコスモレペティールは距離が延びた前走で器用な競馬をしていました。中山なら2200m、今の馬場も合いそうなのでもうひと押しさせてあげられませんか。
土曜も中山で5鞍に騎乗します。1Rのカンノンリリーは二度短いところを使って、距離を延ばしての牝馬限定戦。追走に忙しいところがあったので、条件面での前進に期待しています。3Rのマイネルサブマリンの前走は、初芝で積極的なアプローチをしてくれました。今週乗せていただいた追い切りでは、ブリンカー効果と相まって気持ちが入っていたように思います。ダートの適鞍に戻っての前進に期待しています。12Rのコスモミローディアは新馬以来となる久々の騎乗。未勝利を勝っている舞台でもあり、順調に使えている強味で前進させてあげたい。
日曜も中山で7鞍に騎乗します。スプリングSのエンは、乗ってみて芝向きということを感じた前走ですが、何よりもよーいドンの展開が向かなかった印象。今回は初めての右回りになりますが、タイプ的にはむしろ中山向きだと思っています。規定により前走以来の騎乗も、乗りやすい馬なので心配はしていません。自信を持って勝ち負けを意識した正攻法で挑みます。
2Rのシュシュダムールはイレ込みが課題になっている馬。無観客競馬は合いそうなイメージなので、初ダートの適性と相まってここで前進がありませんか。3Rのコスモケルビンの前走は、これまでで一番感触が良かった。休み明け3走目でまだ上積みがあるはずなので、力が入るタイミングです。5Rのコスモテキロの前走は、輸送の影響か調子が良くなかったのだと思います。かなり久々になりますが、乗せていただいている中間の追い切りではそんな影響を感じません。密かに緒戦から期待しています。
6Rのマイネルポインターは小倉の前走で降着になり、色々な関係者に迷惑をかけてしまいました。中山コースも問題ないと思いますので、とにかく結果に拘りたい一戦。改めてチャンスをいただけたことに感謝を込めて騎乗します。8Rのマイネルエキサイトは時計がかかるのは悪くないのですが、道悪になると踏ん張りが利かなくなる印象。ベストの舞台の良馬場で、巻き返せると思っています。10Rのショートストーリーは背中がいい馬。前走は道悪の影響もあったので、続けて乗せていただける強味を活かして前進を目指します。
騎乗停止中は体調管理を徹底しながら、やはり週末は気になってレースをかじりついて観てしまいました。チューリップ賞で7着だったスマイルカナはスピードを活かしたほうがいいのかなと思う反面、選択肢を増やすという意味で悪い内容ではなかったと見ています。美浦に戻ってきてからは毎日乗せていただいていますが、落ち着きが増して今まではできなかったような調教がやれています。輸送とコースを経験できたことも大きいはずなので、あと数週で万全の態勢を整えて桜花賞に挑みたい。状況が状況でもありましたが、騎乗停止中にゆっくり家族と過ごせたのは今週からのパワーに繋がると思います。
プロフィール
柴田 大知 - Daichi Shibata
1977年6月18日生まれ、栃木県出身。
1996年に騎手デビュー。デビュー2年目までは年間20勝以上をマークする若手有望株として注目を浴びたが、年々勝ち星が減少。遂に2006〜2008年は未勝利に終わった。しかし、騎乗数を徐々に取り戻すと、2011年には中山グランドJで涙のG1制覇。「マイネル軍団」の主戦ジョッキーとしてのポジションも確固たるものとした。2013年にはマイネルホウオウでNHKマイルCを制し、平地・障害ダブルG1制覇を達成した。