2016年の阪神JSでJRA史上初の同一重賞7年連連対記録などJUMPレースの顔として活躍する高田潤騎手。 そして、ファンサービスの積極性は競馬界一とも噂される熱き男の生の声をお届けします!
フランス遠征を終えて(その5)
2015/6/19(金)
「フランス遠征コラム早よ全部書けや!」と後輩大下に急かされている高田潤です……(ー ー;)
自分でも薄々気づいていましたが、書きたいことが多過ぎる上に思い出しながらなんで時間がかかってしまい、いつも書いてる途中に締め切り時間になってしまっています、、
すみません。。m(_ _)m
いい訳はこれくらいにして(笑)
それでは続きをどうぞ!!
(続き)
前回はバリヤーゲートにおいてのしれつなポジション取りの説明をしましたが、何度もスタートのイメージをしていた僕は、返し馬で集団後方から障害を飛ばした直後、そのまま馬を小走りにさせながら何食わぬ顔で、前から3~4頭目あたりのポジション確保に成功しました( ´ ▽ ` )ノ
矢印が僕です(笑)
この写真のころは、スタート直前ですので、各ジョッキーのポジション確保が激しく、両サイドから馬体がバンバンあたってきました(^^;;
もちろんここでも暴れたり蹴ったりする馬は一頭もいません。
このままもう少し歩いた先で、左へUターンしてスタートします!!
人生初のバリヤースタートにドキドキしながら、Uターンゾーンに差し掛かり、、、
クルンとまわって
いざスタートォォォ!!!!
よっしゃ?!!好位の最内でスタート決めたぜ?(≧∇≦)!!!
と喜んだ、次の瞬間!!!!
一斉に各ジョッキーが手綱を引っ張り馬を止めようとしています!
ん!? まさか!?
と、前方を見ると、係りの人が大きく赤旗を振っています。
そうです…
発走のやり直しです!(◎_◎;)
日本では滅多に見ることがないスタートのやり直し。ちなみに日本では『かんぱい』と言います。
もちろん僕も初体験です(笑)
初バリヤーゲートと同時に、初かんぱいまでも経験してしまいました(^^;;
フランスでは、フライングなどによるスタートのやり直しはよくあることだと聞いていましたが、まさか自分のレースでなるとは思いませんでした;^_^A
ちなみにフライングした馬もいなかったこのスタートで、なぜやり直しになったのかはわかりません…(^^;;
多分、最後尾にいた馬が前を向ききる前にスタートしてしまったってことだと思います。多分です(笑)
20頭立てならではの『かんぱい』だと思います。
とまぁ、悠長なことを考える暇も無く、再びスタート地点に戻ります。
せっかくの絶好位も無駄になってしまったんですが、僕の跨るロスカボスもすぐに止まり、すぐさま急いで戻り、再びそこそこいい位置をキープすることが出来ました(^^;;
そして2度目のスタートォォォ?!!
最内ではないですが、好位でスタートが切れました!!
迫り来る一つ目の障害を、
しっかり踏み切ってジャンプ??(≧∇≦)ノ
うぉーーーっ!!すげぇーーっ!!
フランスの馬すげぇーーっ!!
ロスカボスめっちゃ飛ぶや~ん(≧∇≦)ノ
調教の時と全然違うや~ん(≧∇≦)ノ
重い馬場で鍛えられているフランスの馬は、飛越にもパワーがありました!!
一つ目のジャンプで、飛越の安定感を確認した僕は、好位のポジションをキープしたままレースを進めました。
ただ、20頭も走っているとあって、道中はギュウギュウの揉みくちゃ状態です!(◎_◎;)
これがフランスのレースかー!!
僕も怯まないようにロスカボスを信じて狭いところを攻めました(^^;;
コースが広くてややこしいのですが、馬場を歩いて何度も経路を頭に入れていたので、なんとかスムーズに立ち回ることができました。
2周目の向こう正面に差し掛かったところで少しポジションを上げ、最終コーナーに向かいました。
おっ!?まだ手応えがある(^^)
確かな手応えを感じながら最後の直線を迎えました!!
残りの障害は2つです!
直線の一つ目の障害を飛んだところで3番手争いに加わりました!!
いけるかもーーっ!!
障害はあとひとつ!!
頼むぞロスカボスーーっ!!
と、最後の障害を飛越した瞬間…
急にバッタリと手応えがなくなってしまいました……(T_T)
ここまでか。。。(>_<)!!!!!!
馬場の重いフランスの競馬場では、バテてしまうと全くと言っていいほど前に進まなくなってしまいます…
このレースでも落馬はありませんでしたが、5頭が力尽きて途中で止まってしまいました。
そんなフランスの洗礼を浴びながら、なんとか8着でゴールしました。
それでも、ロスカボスは70㌔の斤量を背負い、チカラのいる深くて重い馬場を3900m一生懸命走ってくれました。
ゴールした瞬間、感動と興奮と同時に、「あぁ、遂に終わってしまったのか…」って思いました。
でもやっぱり、どんな馬でもレースで負けると悔しいものなんで、その後に悔しさや、「自分の持っている力はちゃんと出せたかな?」とか、「もっとああしとけばよかったかな?」とか、いろいろなことが頭をよぎりました。
なかなか自分が納得できるレースっていうのはないので、だいたいのレースの後は悔しさが残るものなんですが、
そんな悔しい想いの中、レースの終え引きあげてくると、厩舎の皆さんが待ってくれていました。
そして帰ってきた僕に、
『ナイスレースだったぞ!!結果は気にするな!』
その言葉を聞いた瞬間、、、
この一週間、厩舎の皆さんが僕の為に本当にいろいろと教えて下さり、力になってくれたこと、一生懸命になってくれたことが一気に溢れでて、感情を抑えることができませんでした。。(T ^ T)
涙が止まりませんでした。。
馬からおりた後も、
ジョッキールームでガロリニ厩舎所属のジョッキーのみんなが待ってくれていました(T ^ T)!!
ジョッキールームのおじさんも、シャンパンを片手に『お疲れさん!緊張しただろ?まぁ一杯飲みなよ!』とシャンパングラスを持ってきてくれました!!
ここまで歓迎して下さるフランスの皆さんの温かさに、感激と感動で本当に胸が一杯になりました(T ^ T)!!
本当にめちゃくちゃ嬉しかったです。
帰りの車の中では、感極まってか、ずっと頭がグルグルまわっていました。
いや、間違いなくシャンパンをひと口飲んだからだな(笑)
あっ、それと!!
パリ大障害が行なわれたこの日の『レーシングプログラム』もいただいてきましたので、抽選で5名の方にプレゼントします!!
しっかりと僕の名前も刻まれています;^_^A
今回のフランス遠征では、フランスの馬や障害レースの文化を学ぶために来ました。
せめてなんとか調教だけでも乗せて貰えないかと、そんなダメ元で飛び込んた場所にもかかわらず、現地ではトップトレーナーのガロリニ調教師やフランスで開業する小林調教師を始め、本当にたくさんの方々が力になって下さいました。
1週間という短い期間でしたが、馬の扱いや調教方法においても日本とは全く違うことがたくさんあり、毎日が驚きの連続でした。本当に1日1日が勉強になることばかりで、有意義かつ濃密な時間を過ごすことが出来ました。
そして何と言っても、ガロリニ調教師のご厚意で、フランスで最も盛り上がるパリ大障害(G1)が行なわれる日に同じオートゥイユ競馬場でレースにまで参加させていただけたことは、言葉では言い表せない程の感謝の気持ちでいっぱいです。
これは自分の為だけではなく、ガロリニ調教師が日本の競馬の発展の為に「今回の経験とフランスの競馬文化をしっかりと日本に持ち帰ってくれよ!!」と僕に託して下さったことと受け止め、ガロリニ調教師が僕に伝えたかったことは何なのか?をしっかりとよく考えて、これからの日本の競馬の発展に努めていきたいと思います。
今回の遠征に携わって下さったすべての方に感謝します、ありがとうございました。
※5回にわたってお届けして参りましたシリーズ『フランス遠征を終えて』は今回で終了です、いかがでしたでしょうか?皆様の感想をお待ちしております。
なお、文中にありました高田潤騎手からの「レーシングプログラムプレゼント」は、後日改めてサイト内で募集させていただきます。いま少しお待ちください。(競馬ラボ運営部)
プロフィール
高田 潤 - Jun Takada
1980年11月3日生まれ、大阪府出身。
1999年に松田博資厩舎所属から騎手デビュー。デビュー当初から、平地・障害の垣根を越えた活躍を続けると、2006年にはドリームパスポートで神戸新聞杯を制覇。これが平地重賞初勝利となった。
一方、2008年にはキングジョイとのコンビで中山大障害を制し、キャリア初のJG1勝ち。2013年には待望の障害リーディングに輝いた。
また、2009年には師匠である松田博資師の元を離れ、フリーに転向。2012年にも生涯の伴侶を得るなど、公私ともに充実期を迎え、障害競走の次代を担う存在として更なる活躍が期待される。