競馬専門紙にて記者として30年余り活躍。フリー転身後もその情報網を拡大。栗東の有力ジョッキーとの間には、 他と一線を画す強力なネットワークを築く平林氏が、現場ならではの視点でレースを分析します。
【セントウルS・解説】雨の中、G1馬ファインニードルが貫禄勝ち!!
2018/9/11(火)
18年9/9(日)4回阪神日目11R 第32回セントウルS(G2)(芝1200m)
- ファインニードル
- (牡5、栗東・高橋忠厩舎)
- 父:アドマイヤムーン
- 母:ニードルクラフト
- 母父:Mark of Esteem
ラブカンプーにネロが絡んで、前半3Fが33.3のハイペース。2頭が後ろを離しての先行となった。好位の外めで進めたファインニードル。直線入口からあっと言う間に前へと進出。ラスト1ハロンで前を捕らえる勢い。最後までステッキを一度も抜かないソフトな締めくくりと完勝劇。 グレイトチャーターがブービーの位置から大外を一気に脚を使って、ラブカンプーに際どく迫る脚。雨中の決着はG1馬の格を見せつけるものであった・・・。
朝から雨が降り続く。パドックで周回している時に、雨音が変わるほど落ちてきた。芝は重発表となったが、イメージは不良馬場。 そのパドック、雨に濡れるとどの馬も良く見えるもの。ラブカンプーは8キロ増だが、細く見えるぐらいの仕上げ。アンヴァルが松若騎手が跨って、最後の周回の時にゴネだす。3歳牝馬、元々テンションの上がるタイプとは思うが、あまりいい傾向ではない。こんな時にドシっと構えているぐらいの馬がいい仕事をするもの。期待はできないかも知れないと思った・・。
パドックからいつもの場所に戻る前に馬が入場して、返し馬に入る。ダクからキャンターに移る時を観たいのだが見れない。後ろ姿を観るだけとなった。 それにしてもの雨である。まるで梅雨時の降り方かと思えるほどに、大粒の雨が落ちてくる。ゲートの後ろでファンファーレを待つのが可哀そうになるぐらいに、さらにズブ濡れになっていく出走馬。
ゲートはラブカンプーがロケットスタート、ダイアナヘイローはいつもなら早いのだが、今回は馬群の中で他の馬と同じぐらいだった。ネロも早くない、そこから押して押して前に出て行った。ラブカンプーに並んだのが1ハロンを優に越した時。一気に交わして前へと出ようの考え、一旦は1馬身ぐらい前に出たか。
ところがラブカンプーも引かない。引くわけがない。この2頭で後ろを2、3馬身離して行く。ラインスプリット、レジーナフォルテにダイアナヘイローが続く。ファインニードルがダイアナヘイローの後ろに潜りこんでいた。ブービーにグレイトチャーターでドンジリは1頭離れて、マッチレスヒーロー。3つに分かれる塊だ。 ラブカンプーは、半馬身からクビぐらい前に出ての先行。しかしビッシリとネロのプレッシャーは厳しい。2列目の後ろにいるダイアナヘイローには願ってもない展開と、内心でほくそ笑んでいた。そして直線へと入ってきた。
ダイアナヘイローに視線の中心をもって眺める。いい感じで上がってきていたが、内の赤い帽子、外のピンクの帽子の馬の勢いに適わない。内はラインスプリットで、外はファインニードル。ファインニードルはジワジワと言うよりも、一気に前に接近して行く勢いである。 そして1ハロンを過ぎるあたりで、もう先頭に立つ勢い。ネロを振り切ったラブカンプーが何とかMデムーロのステッキで粘っているが、勢いが違い過ぎる。内めをコウエイタケル、外をグレイトチャーターが伸びてくるが、最後にグレイトチャーターがグイっと前に出たのが見えた。 ファインニードルが、1馬身と少しの着差以上の完勝で秋緒戦を終えた。それもダメージのそう感じる勝ち方でなく、ソフトなフィニッシュであった。
ラブカンプーが単独で行けていたら、ネロが内枠だったら、もっと雨が降っていたらとかいろんなファクターを考えても、勝ったファインニードルのレースの進め方を観ていると、1頭だけここでは次元が違う馬の印象である。 G1馬で58キロを背負っての今回。しかしスタートからすっと鞍上の意のままに動いていけるポジション取りの巧さでもある。ここらが抜けているのでは、他の馬には太刀打ちできないだろう。後はここに出ていないレッドファルクスやらアレスバローズらとの戦い。 いやいやこのまま秋のG1緒戦、スプリンターズSにも視野に入る、力が充実しているファインニードルだと拝見させて貰った。
プロフィール
平林雅芳 - Masayoshi Hirabayashi
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、その情報網を拡大し、栗東のジョッキーとの間には他と一線を画す強力なネットワークを構築。トレセンおよびサークル内ではその名を知らぬ者はいないほどの存在。