競馬専門紙にて記者として30年余り活躍。フリー転身後もその情報網を拡大。栗東の有力ジョッキーとの間には、 他と一線を画す強力なネットワークを築く平林氏が、現場ならではの視点でレースを分析します。
【キーンランドC】武豊騎手は今年こそ念願の勝利を手中にできるのか
2020/8/25(火)
さすがに北の地のスプリント戦のキーンランドカップでは、小倉の様に32秒台で飛ばすラップは過去にない。過去14回でいちばん速かったのは2011年のカレンチャンが勝った時の33.0で、カレンチャンは2番手から抜け出している。
昨年もダノンスマッシュで勝利した安田隆厩舎は、短距離路線は相当なる強さを持っている。ロードカナロア産駒は長くても強いが、短距離は格別であろう。
今年はダイアトニック。58キロの斤量は重いが、短距離戦ではそれほど苦にならない過去でもある。このレースは14回の歴史であるが、鞍上の武豊騎手はまだ勝っていない。今年こそ、念願の勝利を手中にできるのか。
立ちはだかるのは、前走2着のダイメイフジ。ライトオンキューも昨年以上の臨戦態勢である。そして3歳馬ヤマカツマーメイド、やはり51キロの軽量は魅力過ぎる。
【札幌記念の回顧】
20年8/23(日)2回札幌8日目11R 第56回 札幌記念(G2、芝2000m)
- ノームコア
- (牝5、美浦・萩原厩舎)
- 父:ハービンジャー
- 母:クロノロジスト
- 母父:クロフネ
札幌記念(G2)の結果・払戻金はコチラ⇒
4角へ入って行く時に先頭へ出て行くラッキーライラックはともかくも、他の馬がもがいているのに、ただ1頭、持ったままでスッと上がって行ったのがノームコア。それまで内でジッと動かなかったノームコアだったが、4コーナーを廻って来る時の動きは俊敏そのもの。それも最高の手応えで直線へ入って来た。
先頭へ躍り出たラッキーライラック。だが直線半ばにも達しないうちに、伸びが止まり気味となった。と言うか、ノームコアの勢いが凄すぎたのである。前を行く息子、和生騎手のトーセンスーリヤの横を並ぶ間もなく通過して、アッと言う間にラッキーライラックの傍へ。
ラッキーライラックのMデムーロ騎手がステッキを入れる同じタイミングで、ノームコアにも入る。すぐに抜き去った後はそんなに追うこともなく、やや流し気味でゴールを目指す。ゴールの少し前、左手を、人差し指を1本真っすぐ大空へと掲げた。真っ青な大空へ。完璧な騎乗から勝利へと導いた流れるような動き。まるで作品の最後の仕上げだった様だ。
ペルシアンナイトがノームコアの通った後を追うように伸びて、ラッキーライラックをも交わして2着。ハービンジャー産駒のワンツー、終わってみればG1馬のワンツースリーだった。
だが思惑とは違った着順ではあった。ノームコアの3戦前の高松宮記念への出走がどうしても気になっていた。G1と言え、距離は1200。その参戦の意味合いが読めずにいた。その後のG1マイル戦での内容を考えれば、まったく問題ないのではあるが。だからどうしてもラッキーライラックへの期待へとなってしまっていたと反省する。《下手の考え休みに似たり》がピッタリであった。
この日、横山一家は親父が2勝、和生騎手が1勝、武史騎手が2勝。札幌記念へも3人とも騎乗で、それぞれが納得の着順であった様である。
円熟の極みである横山典弘騎手。ノームコアの秋の戦いは、当然に日本最強馬のアーモンドアイとの戦いでもある。人馬ともに圧巻の札幌記念でした。
プロフィール
平林雅芳 - Masayoshi Hirabayashi
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、その情報網を拡大し、栗東のジョッキーとの間には他と一線を画す強力なネットワークを構築。トレセンおよびサークル内ではその名を知らぬ者はいないほどの存在。