競馬専門紙にて記者として30年余り活躍。フリー転身後もその情報網を拡大。栗東の有力ジョッキーとの間には、 他と一線を画す強力なネットワークを築く平林氏が、現場ならではの視点でレースを分析します。
【京都大賞典・解説】 輝きが戻った!サトノダイヤモンドが力強く抜ける!!
2018/10/9(火)
18年10/8(月・祝)4回京都3日目11R 第53回京都大賞典(G2)(芝2400m)
- サトノダイヤモンド
- (牡5、栗東・池江寿厩舎)
- 父:ディープインパクト
- 母:マルペンサ
- 母父:Orpen
今年の凱旋門賞も終わったばかり。去年の凱旋門賞に参戦し、惨敗を喫したサトノダイヤモンド。今年の初陣、金鯱賞で3着。ひと叩きした大阪杯でも、スワーヴリチャードから1秒離れた7着。1番人気に支持された宝塚記念でも、復調気配がないまま春を終えた。当然に昨年のJC馬、シュヴァルグランに1番人気を譲ってしまったのも、その結果にヤキモキするファンの心理であっただろう。 ライバルのシュヴァルグランが先に動く3角の下り。だが4角を先に廻ったのはサトノダイヤモンドの方だった。そのまま先頭に立って押し切ったサトノダイヤモンド。鋭く迫ったレッドジェノヴァが2着。モレイラに導かれたアルバートも3着と力を出し切った。だがシュヴァルグランだけが4着と、思わぬ敗退にまたファンが苦しむ結果となった……。
台風25号の影響なのか、気温がかなり上がった週末。すっかり秋めいて来ていただけに、いきなりの変化に体が慣れない。月曜には秋晴れとなって少しはましにはなったが、深夜の凱旋門賞観戦で体はだらしないまま。気持ちだけで、何とかTV観戦する京都大賞典だ。 パドックで同じ栗毛でもシュヴァルグランよりウインテンダネスの方が、陽を浴びてやけに光って良く見えた。 そしてスタート。そのウインテンダネスの出があまり早くない。押して押して前へと出て行くが、完全に先頭に立つまでに時間を要す。スタンド前はプラチナムバレットとそう差はなかったが、最初のカーブに入るまでには少し後ろを離す逃げとなった。 そのままどんどんと行く。向こう正面に入るまでに随分と差を広げた。内へ入れなかったスマートレイアーがジワっと前に出て行くのは当然の行動で、順位を上げて行く。 2角、そして向こう正面に入って外目を進出し前に取り付きプラチナムバレットを交わす勢いで上がっていった。それにつれて後ろも少しずつ動きだす。
3角に入る前に、後ろをチラっとみたウインテンダネスの菱田騎手。向こう正面ではだいぶあった後続との差が、かなり縮まって来ていた。よもや後続がそこにいるとは思いもしなかったかも知れない。それほどにスマートレイアーを先頭とする2番手集団が、一気に加速して間を詰めてきていた。 ペースを緩めることがそう出来ないまま、3角からの下りに入って行くウインテンダネス。シュヴァルグランが順位を上げて行く。それにつれてサトノダイヤモンドにアルバートも上がって行く。内の4番手にいたレッドジェノヴァには絶好の流れとなっていたはず。 4角が近づくと、後続がさらに近づく。スマートレイアーの外へシュヴァルグランが接近する。ウインテンダネスもまだ粘って先頭で直線へと入ってくるが外の2頭、いやその外からのサトノダイヤモンドが一気に仕掛けてきた。スマートレイアーとシュヴァルグランをも呑み込む勢いで、前のウインテンダネスをも抜き去って行く。
内の絶好位にいたはずのレッドジェノヴァは、いつの間にか位置が悪くなっていた。外からの勢いに負けたのか、好位にいたのが後ろとなってしまっていた。 サトノダイヤモンドの後ろから、アルバートも脚を伸ばしてきた。サトノダイヤモンドはもうマックスの勢いとなり、鞍上の川田騎手もステッキを連打する。シュヴァルグランがもうひとつ伸び切れない。 やっと内から外へと進路を確保したレッドジェノヴァが、シュヴァルグランとアルバートの間を速い脚で前へと迫って行った。サトノダイヤモンドが勝利のゴールへと最後の一歩を伸ばす瞬間に鋭く迫るレッドジェノヴァ。だが、半馬身差まで詰め寄ったところがゴールだった。 アルバートにも後塵を浴びたシュヴァルグランは4着。プレスジャーニーも電光掲示板に乗った。
ロングスパートをしたサトノダイヤモンド。最後は半馬身差と思いがけない辛勝ぶりとはなったが、仕掛けのタイミングといい勝ちに行ってのものだから気にはならない。むしろシュヴァルグランが?の負け方である。昨秋のJCでもこの京都大賞典から変身したのだが、当時は3着と肉薄する内容であった。今年は宝塚記念をパスしてと長いスパーンになったのが影響したのだろうか。そんな事は百も承知の厩舎サイドであるはずだ。この結果は後日、友道師に直接聞くしかあるまい。 本当に毎度、毎度、競馬は難しい面を見せてくれる。課題が多い奥が深すぎるスポーツ、いやギャンブルである……。
プロフィール
平林雅芳 - Masayoshi Hirabayashi
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、その情報網を拡大し、栗東のジョッキーとの間には他と一線を画す強力なネットワークを構築。トレセンおよびサークル内ではその名を知らぬ者はいないほどの存在。