競馬専門紙にて記者として30年余り活躍。フリー転身後もその情報網を拡大。栗東の有力ジョッキーとの間には、 他と一線を画す強力なネットワークを築く平林氏が、現場ならではの視点でレースを分析します。
【ラジオNIKKEI賞・解説】雨中でも切れ味発揮!ブレイキングドーンが堂々の抜け出し
2019/7/2(火)
19年6/30(日)2回福島2日目11R 第68回 ラジオNIKKEI賞(G3)(芝1800m)
- ブレイキングドーン
- (牡3、栗東・中竹厩舎)
- 父:ヴィクトワールピサ
- 母:アグネスサクラ
- 母父:ホワイトマズル
ラジオNIKKEI賞(G3)の結果・払戻金はコチラ⇒
朝から、いや昨晩からの雨らしい。ダートも芝も不良。かと言って、不良ながらドタバタとした芝の走りではない福島開幕週。ただ外からの差しが決まっていたのは確かだった。
中団より後ろで待機のブレイキングドーン。4角手前で一気に前との差を詰めたほぼ先頭でカーブに入る。内から伸びるマイネルサーパスとの追い合い。だが伸びのいいのは外目。勢いが違ったブレイキングドーンの伸び脚。この馬場で35秒台の脚を使ったのは、勝者と3着のゴータイミングの2頭だけ。勝者の位置取り、動きだしのタイミングと雨中ながらも眩しい鞍上の手綱さばきであった。
G20サミットの影響で、空路で福島へ入るのは断念。新幹線を乗り継いで到着したが、それでも2Rの馬場入りの時だった。少しして検量室へと降りる。
そのうちに武豊騎手も前検量に現れて、それらが終わった後に話が出来た。『この馬場なら、どの馬も五分五分ですね~』と言っていた。まだ道悪が未経験の馬が多いだろうが、よしんば道悪を経験した馬でもここまで悪いのはないだろう。前に行く馬には内が悪いから不利だろうぐらいは誰にも判る。
そしてパドックから馬場入場と雨の中で進む。自衛隊の生演奏でレースが始まった。
ゴータイミングを中心に見ている。ゲート内で何やらソワソワとしている。何とかなだめて待っているが、開く少し前は一番体勢の悪い状況だった。出が他馬より遅かった。最内のギルマとゴータイミングの2頭が出が悪く、真ん中でサヴォワールエメも良くなかったうえに、出た後で外のヒシイグアスに寄られて手綱を少し引くシーンもあった。外のランスオブプラーナは悪くないスタートだったが、外から内へと行くまでに時間がかかり過ぎてしまう。ここらも馬場のコンディションも自身の斤量も影響か。
内からダディーズマインドがハナを主張して行った。ディキシーナイト、ブレイブメジャーと続き、ランスオブプラーナは4番手の外目となってカーブへ入る。
カーブを利して、マイネルサーパスが内目の3番手に上がる2コーナー過ぎ。ギルマも内から5,6番手まで上がっていた。やや内を空けて走っていたのだろうか。ゴータイミングの前にいたアドマイヤスコールが、内目をスルスルとあがって行く向こう正面。真ん中あたりまで進出して行った。けっこうな縦長の隊列となっている。ゴータイミングだけが単騎で最後方。その前は2頭ずつ重なるように並んで追走して行く。
1000mを過ぎたあたりで3コーナーのカーブへと入るが、後ろにいたブレイキングドーンがジワジワっと前へと進出しだす。
必死で手綱を動かすランスオブプラーナの後ろを涼しい顔であがって行く。4コーナーが近づく。後で映像を見ているから判るのだが、内でマイネルサーパスが持ったままでいる。ゴータイミングも中団の後ろまで上がって来た。何と、ヒシイグアスが一番最後。鞍上のアクションも忙しくなっている。
カーブへ入って行く時の勢いが一番いいのは、ブレイキングドーン。ゴータイミングはすでにステッキが1発入って促されていたが、田辺騎手のステッキはまだ左手で握られていただけ。右に持ち替えたのはあと200のハロン棒を横切った時。馬場の真ん中を真っすぐに伸びて行く。最内のダディーズマインドが粘っている処を、マイネルサーパスが抜いて伸びだす。
ゴータイミングも外から伸び出してはいるが、短い福島の直線。前を捕らえるほどの勢いには見えない。内のマイネルサーパスが視界に入った田辺騎手。最後のひと振り、ふた振りとステッキで促して、ゴール寸前では綺麗なフィニッシュのフォームだった。ゴータイミングが内の2頭を差して3着であった。
検量室へと向かう。ここは出入り口が狭く、中でビデオを見たりしている騎手と調教師達とコンダクトが取りにくい。静かに流れが収まるのを待つ。やがて松永幹師と武豊騎手がこちらに気づいて近づいてきてくれた。《良く頑張りましたね~》が二人のほぼ同じ意見であった。
火曜朝、松永幹厩舎へ。馬は無事に到着したとのこと。まだ2勝クラスに出られるゴータイミング。次走は8月18日の小倉で1800芝の特別戦がある。そこへ向けてとなりそうだ。 すでに次への戦いが始まっている。久々の福島行きだったが、競馬を生で見るのは楽しいもの。また次回を待ちます・・・。
プロフィール
平林雅芳 - Masayoshi Hirabayashi
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、その情報網を拡大し、栗東のジョッキーとの間には他と一線を画す強力なネットワークを構築。トレセンおよびサークル内ではその名を知らぬ者はいないほどの存在。