競馬専門紙にて記者として30年余り活躍。フリー転身後もその情報網を拡大。栗東の有力ジョッキーとの間には、 他と一線を画す強力なネットワークを築く平林氏が、現場ならではの視点でレースを分析します。
【アイビスSD・解説】千直は負けない、ダイメイプリンセスが3戦3勝で重賞初制覇!
2018/7/31(火)
18年7/29(日)2回新潟2日目11R 第18回アイビスサマーダッシュ(G3)(芝・直1000m)
- ダイメイプリンセス
- (牝5、栗東・森田厩舎)
- 父:キングヘイロー
- 母:ダイメイダーク
- 母父:ダンスインザダーク
1000は日本の競馬では一番短い距離である。芝でもダートでもこれ以下はない。その1000芝でも長く感じる直線の攻防だった新潟名物。 先に手応え良く抜け出したラブカンプー。その内へと進路を誘った秋山騎手のダイメイプリンセス。あっという間に先頭へと踊り出て、最後は余裕をもっての完勝ぶり。それもカルストンライトオのレコードにコンマ1秒だけ届かないものの余裕ある内容だけに、レコードを出そうと思えば出せただろう。それだけにこの直線競馬に適性があると思える。ヨーロッパへ遠征に出かけてもいいのではと、単純に思ってしまう素人である・・・。
小倉に台風が近づいているなかでの開催。風は強いが、雨もまだ大丈夫の空模様。札幌ではディアドラが強い勝ち方で秋へ向けてのいいスタートを切った。そしてトリの新潟、1000芝。ダイメイプリンセスが強いと信じているがこの他頭数、何が起きるか判らない。 そしてゲートが開いた。ピンク帽にオレンジ帽が前にいるが、お目当てのダイメイプリンセスはその少し後ろの列。どんどんと距離がなくなっていくが、まだ前の馬のスピードが落ちる訳もない。大丈夫かと見ていると、秋山騎手は外でなく前の馬の少し内目を狙う。モズカンプーがいい感じの手応えから抜け出そうの時であった。外にはナインティルズ。この2頭がリードし始めた時に。
ラブカンプーの内にはレジーナフォルテ、前を行くラブカンプーと後ろのレジーナフォルテとは1馬身ぐらいの差はあっただろうが、間隔としては狭いもの。その2頭の間を割るように入り込んで進路を確保する秋山騎手。今日のポイントはここにあるのではないかと思えた瞬間である。 PVで見ると、秋山騎手はその前には外のレッドラウダとペイシャフェリシタの方を伺っている感じではあった。だが、前を4頭が横並びで開くのを待つには時間がない時でもあった。 そしてすぐに内へ進路を切り替え、モルフェオルフェの前を横切る様に前へと出て行く。内のレジーナフォルテの横をスリ抜け、前を行くラブカンプーの横へと出て行った。その時の脚の速いこと、一瞬にして一番前に出た。 そこで左ステッキが2発入る。さらに前に出た時にもう1発。計2発+1発、後は手綱をシャクるだけでのゴール。それでいて、ラブカンプーにコンマ2秒の差をつけたのだった。
前半のラップが2Fが21.8、3Fが32.1と入りが速い流れである。その後も澱みなく続いて、10秒台が3つ続いた。最後の1ハロンも11.6と一番苦しい時でもこの切れ具合のラップだ。 今回のレースの鍵は、Mデムーロ騎手が51キロとあまり記憶にない斤量で乗るラブカンプーであろう。1200芝で連を外れたことのない馬。あとは1000直の適性だけ。好発からほぼ最前線でレースを戦ったもの。この馬自身の54.0も、例年ならば勝ち時計である。 それをいとも簡単にねじ伏せる、ダイメイプリンセスの底力。1000直を使う度に時計をひとつずつ縮めていく適応性の高さだ。
管理する森田直行調教師は、地方重賞をキョウエイアシュラで4年前に浦和で勝利しているが、JRA重賞はこれが初めて。開業5年めにしての快挙である。 今年の成績はうなぎ昇り。今、乗っている厩舎でもある。
プロフィール
平林雅芳 - Masayoshi Hirabayashi
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、その情報網を拡大し、栗東のジョッキーとの間には他と一線を画す強力なネットワークを構築。トレセンおよびサークル内ではその名を知らぬ者はいないほどの存在。