関係者の素顔に迫るインタビューを競馬ラボがオリジナルで独占掲載中!

音無秀孝調教師

荒れた馬場で出した超抜の坂路時計

-:今日(4/30)の追い切りは雨が降って坂路も時計がかかる状態でした。その上、朝一番ではなくて荒れたときに来ましたね。そこで、なおかつ併せ馬。所属の松若ジョッキーが乗って走ったわけですが、52.5秒の時計はめちゃくちゃ速いですね。

音:先週とあんまり変わらないですからね。しかも終いが12秒台ですから。

-:晴れていたら1.5秒くらい時計が速かったんじゃないですか。

音:2秒くらい速かったんじゃないですか。馬場が良かったら終いは12.2秒とか12.3秒になっているし、51.5秒とかになっている可能性もあります。

-:新聞だと数字しか見られませんが、走った時間帯を考えるとすごいですね。

音:ここの時間帯はみんな54~5秒でした。

-:55秒を切るのがやっとくらいの時間帯ですよね。では、状態に関してはもういうことなしですね。

音:これだけやれているので、何の不安もないと思ってくれればいいです。



-:では、音無先生の久々のG1勝利が、ミッキーアイルでようやく叶いそうですね。

音:ここはチャンスあるかなと思うんですけど、初めての左回り、初めての府中です。直線が長くて坂もあります。府中の1600mって、スタートしてからすぐ坂になっているんですよね。3コーナーまで上り、直線向いてまた上り。ここを克服できるかどうかが、ポイントでしょうね。自分の競馬をするとすれば、ハナに行っているでしょうから、そういう中で、どんな流れを自分で作っていくかとか、浜中君が馬とどれだけ相談できるか、その辺がうまくいかないとね。やっぱり、勝つのは難しい、簡単なことじゃないと思います。

-:この馬は、ディープインパクト産駒の中でも、馬力というかパワーを感じるんですよ。大場所の力勝負というのは望むところなんじゃないですか?

音:懸念するとすれば、やはりスタートしてすぐ上りがあるというところです。そこでハナに行っているわけだから、他の馬よりは脚を使っているわけです。そこがひとつのポイントになるんでしょうね。3コーナーからは下り坂だから、そこを抜けられたら後は直線で脚を残せていると思います。

-:初の左回りというポイントはどうですか?

音:未知です。初めてだから馬も戸惑うかもしれないですね。

-:(コース調教が通常と逆回りになる)日曜日の走りはどうでしたか?

音:助手は悪くないと言っています。あとは浜中君がどう思うかですね。

-:能力のある馬は、馬場状態だったり、回り云々は言っていられないですね。

音:これからはどっちも走ることになると思うから“左回りは走らない”じゃ困るんですよね。

-:先週から開幕した府中コースなんですけども、開幕週にしては若干差しが利くというのは気になっているところです。

音:京都は逆に行った行ったですよね。

-:あの府中の舞台でも逃げ切れるとなったら、よっぽど強いですね。

音:その馬場に逆らわないといけないからね。



ダービーの選択肢なし。ここでG1馬に

-:相手関係としては、同世代で抜けているのは間違いないですから、あとはもう枠順とかですね。

音:スピードで押し切るタイプって難しいところがありますよ。最初のペースがどんなになるかとか、あるいは馬自体が当日どういう状態にあるかとか、今は計れないでしょう。もちろん浜中君の腕もあるし。ちょっとだけ遊んでくれたらいいのにな、って気持ちもあるんです。

前走も結構引き離して行きましたよね。で、4コーナーで引きつけて、そこだけスローになっているんですよ。それは終いの脚を残そうとした浜中君の考え方でしょうけど、そうしたら今度はソラを使ったんですよね。ところが、ステッキを入れたらまた我に返って、最後はまた後ろの馬が離れたんですよ。そういうことができるので、ある意味遊ばせたらいいんじゃないか、と思ったりもしたんですよね。行った行ったじゃないから、逆に持つかなと。そういうことが東京でも同じようにあっていいかなと思ったりします。


-:新馬戦は内にモタれたじゃないですか。今度は舞台が左回りになって、その場合はやっぱり外に来るんですか?

音:そのことはずっと僕も頭にあったんです。ひいらぎ賞の時に、ムーア騎手に直線は内にモタれるというアドバイスをしました。ところが、ムーア騎手は外を叩いたんですよね。レース後に、内にモタれなかったねって聞いてみたら「どっちも行きますよ」って言われました。あと「この馬はまだ子供だからフラフラするね」とも言っていましたね。浜中君は、「内にしかモタれない」って言っていたんですよ。ところが彼も、アーリントンCでソラを使った時、外から叩いたんですよ。彼はそれまで外から叩いたこと一度もなかったんです。だから、左回りだとしても、内でも外でも行くんじゃないかなと思います。


「僕は調教師になって20年目なんですよ。いろんな馬を担当してきて、G1勝ち馬も作りましたけど、これほどの馬は見たことないんです。何がすごいかと言ったら、レコードで勝ったのも含め、全部自分で作ったレースなんですよね。特にG1とか重賞でそういう馬はなかなかいません」


-:東京だと、左側にラチを置いて、外から叩いて真っ直ぐ推進力を保つかもしれないですね。これだけ能力がある馬ですから、楽しみの方が不安より多いです。

音:もちろんそうです。ただ、人気を背負うから、今度は不安が大きくなるね(笑)。だけど、そういうところもくぐり抜けていかないとね。このレースだけではなく、先もあるわけだから。僕が試したいところを考えているんです。1600はちゃんと走れているのだから、もう短くはしたくないわけです。なので、今は1600一本で来ていますけど、どこかで1800とかを考えていきたいとは思っています。

-:もし、NHKマイルCの成績が良かった場合、ダービーという選択はあるんですか?

音:それはありません。

-:最後に、1番人気に支持されると思うので、ミッキーアイルを応援しているファンに強気のメッセージをお願いします。

音:僕は調教師になって20年目なんですよ。いろんな馬を担当してきて、G1勝ち馬も作りましたけど、これほどの馬は見たことないんです。この馬、新馬戦以外は全部逃げ切りましたよね。しかも時計が速いです。何がすごいかと言ったら、レコードで勝ったのも含め、全部自分で作ったレースなんですよね。大概、レコードとか時計が速いレースは引っ張る馬がいて、それにつられて時計が速くなるんです。だけど、この馬は全て自分で作っているわけだから。みなさんご存じのように、特にG1とか重賞でそういう馬はなかなかいません。何とかみなさんの期待に応えて、いい結果を出したいと思います。ご声援お願いいたします。

-:カメラマンとしては、外から差してきた馬がいて際どいようなゴール前写真を撮るよりは、一人旅で帰ってきてほしいです。

音:僕もそう願っています。

-:ありがとうございました。

ミッキーアイルの音無秀孝調教師インタビュー(前半)はコチラ⇒

1 | 2





【音無 秀孝】Hidetaka Otonashi

1954年宮崎県出身。
1994年に調教師免許を取得。
1995年に厩舎開業。

初出走:
95年6月24日 3回中京3日目12R キーペガサス
初勝利:
95年7月23日 2回小倉4日目11R イナズマタカオー


■最近の主な重賞勝利
・14年 アーリントンC/シンザン記念(共にミッキーアイル号)
・13年 ジャパンダートダービー(クリソライト号)


1979年に騎手デビュー。1985年のオークスをノアノハコブネで制したが、通算は1212戦85勝と決して振るわなかった。脚光を浴びるようになったのは厩舎を開業させてから。開業年にイナズマタカオーで重賞を2勝。 以降も坂路を主体とした調教方法で実績を積み重ねると、オレハマッテルゼ、ヴィクトリー、オウケンブルースリ、カンパニーらのG1馬を輩出。常にリーディング上位に名を刻む栗東のトップステーブルとして、地位を固めている。


【高橋 章夫】 Akio Takahashi

1968年、兵庫県西宮市生まれ。独学でモノクロ写真を撮りはじめ、写真事務所勤務を経て、97年にフリーカメラマンに。
栗東トレセンに通い始めて17年。『競馬ラボ』『競馬最強の法則』ほか、競馬以外にも雑誌、単行本で人物や料理撮影などを行なう。これまでに取材した騎手・調教師などのトレセン関係者は数百人に及び、栗東トレセンではその名を知らぬ者がいないほどの存在。取材者としては、異色の競馬観と知識を持ち、懇意にしている秋山真一郎騎手、川島信二騎手らとは、毎週のように競馬談義に花を咲かせている。
毎週、ファインダー越しに競走馬と騎手の機微を鋭く観察。馬の感情や個性を大事に競馬に向き合うことがポリシー。競走馬の顔を撮るのも趣味の一つ。

■公式Twitter