古馬、樫馬に真っ向勝負を誓う秋華賞馬ショウナンパンドラ
2014/11/9(日)
むしろ2000mでも忙しいくらい
-:ショウナンパンドラ(牝3、栗東・高野厩舎)の秋華賞優勝、おめでとうございます。
吉田宏樹調教助手:ありがとうございます。
-:紫苑Sで2着になった後にしては、秋華賞の人気が3番人気とは凄いですよね。
吉:皆さんよく見ていましたね(笑)。
-:まず、お聞きしたかったのですが、個人的に見た限りでは、マイラー色が強い感触を受けていました。1800mあたりで走っているイメージがあったのですが、距離に関しての不安は全然なかったのですよね。
吉:なかったですね。むしろ2000mでよく走ってくれたな、と思います。2000m以上の方がいいタイプと思いますし、ウィリアムズ騎手もカーネーションC後に「もっと長い距離の方がいい」と言っていたので。
-:ファンには分かりにくいですが、どの辺りからそう判断されたのでしょうか?例えば距離が長い方が息を入れやすい、だとか。
吉:それほどゲートも速い馬ではないので、短い距離だと急がせないと駄目なんですよね。それよりも、自分のリズムで行ったほうが、持ち味が生きるかな、と。切れ味があるので、終いは確実ですからね。やはりマイルや1800mの東京だから、ああいう結果になってしまっていたのだと思いますね。
-:この馬の特徴を挙げるとするなら、小柄でモチモチとした……。
吉:いいお尻をしていますよね(笑)。それだけに凄い瞬発力はあります。
-:とすると、ベストの距離は一体どの辺りになるのでしょうか?
吉:これまでは2000mまでしか使ったことがないのでね。オークスは元々使いたかったのですが叶いませんでしたし、2400mでの走りも見てみたかったですね。
「やはり一瞬のキレが持ち味だからこそ、馬群の内にもすっと入れたと思うんですよね。あそこでジョッキーの指示にすぐ従えない馬は、馬群を割って来られなかったでしょうね」
-:エリザベス女王杯の舞台は相手が強化されるけれども、この馬にはプラスですよね。
吉:むしろ秋華賞もよく走ってくれたな、と思います。小回りのコースじゃないですか。そこで勝てたのは、ジョッキーがうまく乗ってくれたお陰だと思います。
-:最後に内から出てきた時のことですね。
吉:やはり一瞬のキレが持ち味だからこそ、馬群の内にもすっと入れたと思うんですよね。あそこでジョッキーの指示にすぐ従えない馬は、馬群を割って来られなかったでしょうね。だから、この馬の瞬発力はかなりあると思いますね。
-:では、外回りになるというのは……。
吉:むしろ外回りのほうがいいかなと思いますね。
-:ただ、秋華賞であれだけの激走をした後、時計も1分57秒と速かったですしね。疲れなどを心配するファンもいると思うのですが、その辺りはいかがですか?
吉:レース後、慎重に過程を見ながらケアしてきた甲斐もあり、今日の調教でもしっかり時計を出せました。レースが終わってから、飼い食いも変わりませんでしたし、課題はケアだけでしたね。見えない疲れなどが出そうではあったので、そこは慎重に高野先生と相談しながら進めていきました。
目指すコンディションは秋華賞以上
-:無事に1週前の追い切りに漕ぎ着けました。朝一番の動きはどうでしたか?
吉:日々少しずつ調教ペースを上げていきました。1週前の調教は馬場が悪い中でもよく動いてくれたと思いますよ。
-:では、全く疲れもないということですか?
吉:しっかりケアできたかな、と思います。
-:あれだけの時計で走っていますから、やはり上積みを望むよりは、毎回同じコンディションを作れたら、というのが理想ですか?
吉:そうですね。欲を言えば、これを乗り越えてもっと強くなって欲しいですけれど。
-:期待通り、その無念を秋に爆発させた、ということで。
吉:本当に期待通りの走りをしてくれました。よく成長してくれています。
-:春と今でどのような箇所が違ってきましたか?
吉:春は本当に(体質が)弱くて、体重が増えて来なかったんですよね。食べてはいるのですが、輸送もあり、なかなか実にはなりませんでした。
-:そうですよね。中山、東京、東京、新潟と、遠征されていますものね。
吉:春からずっと関東圏に行っていたので、よく頑張ってくれたと思います。
-:そのローテーションで結果を出しつつ、秋の秋華賞まで繋げたのですから、やはり並の牝馬ではありませんね。3月初旬から輸送を月1、2回のペースで、しかも8月には、秋華賞に出るための賞金加算ということで、糸魚川特別と紫苑Sに行っているわけで、普通の馬なら崩れてしまいますよね。秋も結構過酷なローテーションですよね。
吉:持ってくれていますね。ただ、秋華賞で初めてしっかりと仕上げられたな、という感じでした。今までは、ちょっと弱い部分があったので、そこまで(追い切り)時計を出せなかったんですよね。
-:でも、あの週は坂路の状態が悪かったじゃないですか。そこでしっかりと仕上げるのは、なかなか難しいことだったと思うのですが、いかがでしょうか?
吉:調教で本当に動くようになり、こちらの指示にも従ってくれるので、やり易い部分はありましたね。
ショウナンパンドラの吉田宏樹調教助手インタビュー(後半)
「道悪もこなすものの理想は良馬場」はコチラ⇒
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プロフィール
【吉田 宏樹】Hiroki Yoshida
長浜厩舎に所属し、かつては第一回秋華賞などを制したファビラスラフインとアグネスゴールドを担当していた父、ビリーヴを担当していたおじの影響で、自然と競馬の世界を志す。高校時代より馬術部に入り、卒業後はグリーンウッドに就職し、足掛け9年でJRA試験に合格。
半年の待機後、高野友和厩舎でトレセン生活をスタート。デビュー時から担当した初めての馬が、厩舎にとっても初のG1馬ショウナンパンドラという、ラッキーボーイでもある。馬と接する際のモットーとして、「友達みたいに声を掛けるように、なるべくリラックスできるように話し掛けています。ペットを可愛がるのと一緒ですね(笑)」と語る。親子で秋華賞を制した異例のキャリアを持ち、更なる飛躍が期待される。
【高橋 章夫】 Akio Takahashi
1968年、兵庫県西宮市生まれ。独学でモノクロ写真を撮りはじめ、写真事務所勤務を経て、97年にフリーカメラマンに。
栗東トレセンに通い始めて18年。『競馬ラボ』『競馬最強の法則』ほか、競馬以外にも雑誌、単行本で人物や料理撮影などを行なう。これまでに取材した騎手・調教師などのトレセン関係者は数百人に及び、栗東トレセンではその名を知らぬ者がいないほどの存在。取材者としては、異色の競馬観と知識を持ち、懇意にしている秋山真一郎騎手、川島信二騎手らとは、毎週のように競馬談義に花を咲かせている。
毎週、ファインダー越しに競走馬と騎手の機微を鋭く観察。馬の感情や個性を大事に競馬に向き合うことがポリシー。競走馬の顔を撮るのも趣味の一つ。
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