ステイゴールド産駒の系譜を受け継ぐココロノアイ
2015/4/8(水)
理想の展開はチューリップ賞の再現
-:スタミナ傾向といえば、最近の馬場管理自体が昔に比べてソフトになっています。桜花賞の舞台の阪神も恐らくそんなに速くはならないと思うのですが。
前:ならないですよね。下手すれば1分35秒台あたりになるのですかね。34秒台かな?
-:芝丈をちょっとカットしていますし、晴れたら34秒台は出ると思うのですが、阪神の馬場状態には気を使いますね。歴代の桜花賞上位入線馬はオークスにも繋がっています。だから、「2冠のうちどちらを獲りに行く」という話も聞きますが、桜花賞を獲れるクラスの馬は歴史的にオークスも合うんですよ。
前:だから3着までには来てほしいというのがあるんです。適性でいったら、阪神の1600ではショウナンアデラに勝てないと思ったのです。チューリップ賞に出られていたら、切れ負けする可能性はありましたね。
「新馬戦も阪神JFも負けたのは内枠です。新馬戦はクセが分からなくて、ただ追ってるだけで2着に来た。その瞬間に先生が『ホント、この馬走るな』と僕に言ってきたのです」
-:阪神JFのショウナンアデラはディープインパクト産駒の良さが出ていたレースぶりでしたね。
前:モロに出ていますよね。あの馬とは戦いたくないな、と思いつつも、もう1回戦いたい、という思いもありましたから。
-:桜花賞の舞台は阪神JFでももちろん戦っているわけですが、あの時のレースは2枠4番から出て、枠的に苦しくて、動きたい時に動けずという内容で3着ですから、同じ轍は踏まずにもう少し早めに動いていけたら。
前:先生もチューリップ賞前に気付いてくれて、窮屈なところでよく頑張った3着だと。新馬戦も阪神JFも負けたのは内枠です。新馬戦はクセが分からなくて、戸崎さんも内で我慢させたら、逆に掛かっていって、終始動けず。そうなるとムチを入れませんよね。ただ追ってるだけで2着に来た。その瞬間に先生が「ホント、この馬走るな」と僕に言ってきたのです。普通は内で窮屈だと間に合わない、良さが出ないですよね。
-:桜花賞はどういったレースをしますか?
前:チューリップ賞の再現がいいですね。
馬体重増加は太めではなく成長
-:ちなみに美浦トレセンの坂路と栗東の坂路では乗りやすさは違いますか?
前:全然、栗東の方が乗りづらいですね(笑)。
-:追い越す方が逆だからですか?
前:それだけじゃなく、栗東の坂路は傾斜がジワーッと来るので掛かる馬に乗ると「キツイ」のですよ。美浦の場合は平坦で走り出して、すぐに急な傾斜になるので掛かる馬でも抑えやすいのですね。美浦とは違う負荷の掛かり方になります。しかし、栗東の坂路の頂上にはコーナーがあって、止めにくかったです。最初はココロノアイも戸惑っていましたよ。
-:以前、関東のオープン馬がこちらへ来ていて、先生に「栗東の坂路はどうですか」と聞いたら、「キツイねぇ、馬がバテちゃうよ」と。ココロノアイは大丈夫でしたか?
前:全然大丈夫です。坂路でバテる感じはないですね。体も丈夫なのです、この子は。
-:この馬の馬体的な良さはどんなところでしょうか?
前:トモの入り方ですね。走りというか、トモが柔らかく入ってきます。牧場の方もみんな「トモが凄すぎる」って。
-:肩が出るからトモが入るスペースがあると。さっきの首の使い方と一緒で。
前:背中をうまく使うのです。まだ子供なので、たまにトモがフラフラというか、テンションが上がると変に走っちゃうんですよね。それがまたかわいい(笑)。体重が徐々に増えてきていますし、それは成長の証かなと。
-:それでは、まだまだ成長しているココロノアイのファンに向けてメッセージをお願いします。
前:馬主であり生産者である酒井牧場さんとノリさんの絆があってこそ、ここまでくることができました。この馬がチューリップ賞を勝てたのもレースで乗ってくれたノリさんと尾関先生はじめ厩舎スタッフの協力があってのものです。桜花賞も厩舎一丸となって仕上げていきます。お転婆娘、ヤンチャ娘と言われていますが、愛着があるので、愛を持って応援してください(笑)。
-:楽しみにしています。
前:ファンの目で見ても凄く楽しみなレースですよね(笑)。そんな中でも応援していただけたらと思います。ちなみに、僕はココアちゃんと呼んでいます。かわいらしく。
(取材・写真=高橋章夫 写真=武田明彦、山中博喜)
ココロノアイ・前田広宣調教助手インタビュー(前半)はコチラ⇒
1 | 2
プロフィール
【前田 広宣】Hironobu Maeda
家の近くにあった馬事公苑で乗馬を経験したことから競馬の世界を志す。元々、海外志向が強く、高校卒業後にはオーストラリアへ馬の勉強に。デルタブルースが制した2006年のメルボルンCでは当時所属していたD.オブライエン厩舎の管理馬・ディマージャーが出走していた。
カジノドライヴがアメリカ遠征する際に、現在所属する尾関知人調教師、藤沢和雄調教師に同行。それをキッカケに藤沢和師に「日本に戻ってこないか」と声を掛けられたことで帰国を決意する。これまでに担当した主な馬はココロノアイ、チャーリーブレイヴ。日本でのデビュー戦で初勝利を飾るなど、自他ともに認める“馬運”の持ち主。
【高橋 章夫】 Akio Takahashi
1968年、兵庫県西宮市生まれ。独学でモノクロ写真を撮りはじめ、写真事務所勤務を経て、97年にフリーカメラマンに。
栗東トレセンに通い始めて18年。『競馬ラボ』『競馬最強の法則』ほか、競馬以外にも雑誌、単行本で人物や料理撮影などを行なう。これまでに取材した騎手・調教師などのトレセン関係者は数百人に及び、栗東トレセンではその名を知らぬ者がいないほどの存在。取材者としては、異色の競馬観と知識を持ち、懇意にしている秋山真一郎騎手、川島信二騎手らとは、毎週のように競馬談義に花を咲かせている。
毎週、ファインダー越しに競走馬と騎手の機微を鋭く観察。馬の感情や個性を大事に競馬に向き合うことがポリシー。競走馬の顔を撮るのも趣味の一つ。
■公式Twitter
@aklab0328さんをフォロー