今年はレッツゴードンキで中央G1初制覇を果たした梅田智之調教師だが、昨年はアドマイヤラクティでオーストラリアのG1を勝利し、それ以前にもショウナンマイティで大舞台をわかせるなど、ブレイクは当然とも言うべき結果だろう。「現代的ではない」と自身が語るように、自らの形を確立し、スタイルを貫きつつ結果を残しているのだから、そのノウハウは気になるところ。ドンキ2世の誕生となるのか?独占インタビューに答えてくれた。(取材日:6月5日)

レッツゴードンキに続く期待馬は

-:今年はレッツゴードンキで大活躍の梅田智之調教師です。よろしくお願いします。それでは、今年の2歳について聞かせていただけますか?

梅田智之調教師:よろしくお願いします。「アドマイヤ」のオーナーの3頭は、時間はかかりそうですが、ここまでいい雰囲気で来ていますね。キングカメハメハの仔(馬名アドマイヤロマン、母フローリッドコート)のデビューは早くないと思いますが、将来的には走ってくるでしょう。スペシャルウィークの仔(馬名アドマイヤピュア、母トキオタヒーチ)は函館に入れる予定だったのですが、牧場で胃潰瘍にかかってしまったということで、少し調整が遅れています。

ロックオブサリサの2013(馬名ショウナンタイザン、父マンハッタンカフェ)はまだ北海道にいますが、オーナーも、育成しているクローバーファームも「ショウナンマイティっぽい」という話です。同じマンハッタンカフェ産駒ですし、期待していますよ。


-:この仔のデビューはいつ頃になりそうですか?

梅:秋以降で少し時間はかかると思います。キタサンヒメの2013(父キングヘイロー)はキタサンサジン(父サウスヴィグラス、ダート短距離で2勝)の下になりますが、お父さんが違うので、コチラは芝も走れるかなと。

-:父がキングヘイローですが、馬体的にはどのくらいのサイズですか?

梅:450キロくらいでデビューできれば。お兄ちゃんは500キロくらいあって、一回りくらい小さいです。

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▲昨年は豪州でG1制覇、今年は桜花賞を制し、注目度も上がっている梅田師


-:フェアレストケープの2013(父ハービンジャー)は「サクセス」冠の馬主さん(高嶋哲オーナー)ですね。

梅:ええ、アウェイキングという名前です。

-:今回は「サクセス」と付かないのですね。そして、キングなのに牝馬と。

梅:ええ、アウェイク(awake)って英語の「ing系」です。それでアウェイキング。最初は「男なのか女なのか分からないな」という話をしていましたよ(笑)。気性的にも前向きで、今日(6/5)ゲートを初めて出しましたが、動きますね。ただ、ゲート試験も受かっていないので、どこでデビューするかは、まだまだ先の話ですね。

-:もう少し、身体に幅が出てきたら良いなというところですか?

梅:そうですね。

-:アドマイヤテレサの2013(父マンハッタンカフェ、馬名ブレッシングテレサ)、この牝馬はどうですか?

梅:これはアドマイヤラクティの下で、この上のヴァミューズもですが、この血統は皆奥手なので。慌てずに育てていく方が良いかなと思っています。

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▲師が真っ先にその名を口にしたアドマイヤロマン


-:早めにデビューできそうな馬というと、千葉サラブレットセール出身馬あたりですか?

梅:そうです。フェミニンタッチの2013(父スウェプトオーヴァーボード) はまだグリーンウッドFにいます。馬房が空けば入れようと思っていますが、まだ空かなくて。入れたら早めにデビューできるかな。

-:馬房が空き次第という感じですね。距離適性はどう思われますか?

梅:スウェプトオーヴァーボードの産駒なので、ダートの短いところかなと。

-:たまに芝を走る馬もいますね。

梅:見た印象では胴も長いし、芝でもいけるかなと思いますが、まだしっかり見られていないので。楽しみですね。

アドマイヤロマン
牡、栗東・梅田智、キングカメハメハ×フローリッドコート
POGシメイ

-:梅田厩舎といえば、レッツゴードンキが北海道デビューから札幌2歳Sと活躍していました。今年、同じくらいの期待ができる馬と言われればどの馬になりますか?

梅:すでに挙げたところですが、アウェイキングは牝馬で一番期待していますね。牡馬ではアドマイヤの3頭すべて期待しています。どれも良い舞台まで行ってくれないかなと思っていますよ。

-:キングカメハメハ産駒もいますからね。

梅:今年大ブレイクですからね。


「全然“現代的”ではないですね。厩舎に入れて10日で走らせる、という使い方はまずしませんから」


-:フローリッドコートの2013ですが、距離は持ちそうですか?

梅:そうですね。

-:梅田厩舎の馬の作り方を見てみると、いい意味で現代的というよりは、ゆっくりと作っていく感じですよね。

梅:ええ、全然“現代的”ではないですね。厩舎に入れて10日で走らせる、という使い方はまずしませんから。

-:時代に逆行しているというよりも、古き良きスタイルを貫かれている厩舎だと思います。そういう育て方は意識されているのですか?

梅:自分で見て育てていかないといけませんから。牧場サイドは「この仔は短い距離で」とか「馬が弱いからゆっくり育てた方が良い」「ダート馬だ」「うるさい面がある」などと、扱い方に関しての助言は言ってくれますが、実際自分たちで触ってみて、方針が変わることもあります。もちろん、牧場を信頼していないわけではないですよ。意見を取り入れつつ、ですね。

-:牧場での時計や状況から、さらに一歩進んだところが栗東トレセンということですね。

梅:やっぱり牧場とトレセンは違いますね。牧場で“15-15”の調教を積んできていても、トレセンで坂路70秒台のレベルであっぷあっぷの馬は多数いますから。それが牧場との信頼関係に反映されるといいますか。それは経験則ですよね。


「先入観があると、それしか見えなくなってしまうことがあるので、そこはスタッフの意見を一番に取り入れています。助手が『ダートが良い』と言ったので使ってみると走った、ということもありますよ」


-:実際に、レッツゴードンキの母マルトクはダートの短距離で活躍していた馬です。お母さんの競走成績のイメージとは違う場合は、どのように接しているのですか?

梅:父はキングカメハメハですし、お母さんはダートで5勝だから、普通はダートの新馬戦でおろすところですが、走りも軽かったですし、牧場からも「芝でも走れます」という話だったので。血統に囚われないで使っていかないといけませんね。先入観があると、それしか見えなくなってしまうことがあるので、そこはスタッフの意見を一番に取り入れています。血統で「何故この馬をダートで走らせないといけないのか」と思っても、助手が「ダートが良い」と言ったので使ってみると走った、ということもありますよ。先入観に囚われると、その先の可能性が広がりませんからね。

-:近年では2歳の重賞が増えて、早めに賞金を稼がないとクラシック出走のボーダーラインに乗らないことがあると思います。その辺りの戦略などはありますか?

梅:全くないですね。馬任せです。馬が仕上がってきてからね。こちらから馬に合わせてくれということはないですし、無理やり牧場から厩舎に戻すこともありませんよ。

-:梅田先生のように、管理頭数が多いところは入れ替えが大変じゃないですか?

梅:そのタイミングが一番難しかったりします。できれば2歳馬は1頭ずつ入厩させて、ゲートの練習をしたいですね。まとめて入れたい気持ちもありますが、そうなるとまとめて放牧に出さないといけなくなるので。

POG・梅田智之調教師インタビュー(後半)
「現2歳は少数精鋭の戦略で」はコチラ⇒

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ブレッシングテレサ
牝、栗東・梅田智、マンハッタンカフェ×アドマイヤテレサ
POGシメイ