名牝ブエナビスタの初子 コロナシオン注目の2戦目へ
2016/11/9(水)
名牝ブエナビスタの初子として、競馬サークルの注目を集めるコロナシオン。新馬戦では、不安説も何のその。直線で鮮やかな末脚を披露し、鮮烈なデビュー戦を飾った。第一の目標阪神JFへ向け、選んだ2戦目は黄菊賞。血統背景からも多くのファンの眼差しは避けて通れぬ宿命。「自分自身でも楽しみです」と語る池添学調教師が送り出すキャリア2戦目、そして、今後のビジョンに迫る。
豪脚炸裂のデビュー戦 今後の可能性とは
-:黄菊賞に出走するコロナシオン(牝2、栗東・池添学厩舎)ですが、まず、新馬戦はゆったりとしたスタートでしたね。
池添学調教師:出遅れは仕方ないと思ってました。練習でもワンテンポ遅れて、その後シッカリ取り付ける脚を使っていたので、心配はしていなかったのですが、思っていたよりも出てからがズブかったですね。
-:ジョッキーの手を見ていても、向正面で構早めに動いていました。
池:ずっと促しながらでしたね。馬の性格がすごく慎重なので、その辺りが出たのかなと思います。経験していけば全然、これからドンドンと道中で付いて行くのも大丈夫だと思います。
▲開業2年目、若干36歳ながら超良血馬の管理を託された池添学調教師
関係者の期待と信頼が窺える
-:その辺りは成長して変わっていくという感じですね。
池:競馬を覚えて良くなっていけば良いかなという感じに思っています。
-:前走は1800mでした。距離はどうですか?
池:距離は1600以上かなと思っていて、中距離路線じゃないのかなとは思っていました。
-:次走に黄菊賞を選んだ、その経緯というのは?
池:やっぱり乗っている感じでも、まだ来年の馬じゃないかなと思うのですが、新馬の勝ち方が鮮やかだったので、血統的にどうしても欲が出ますね。使った後、慎重に状態を見て、全然反動的なものを感じなかったので、阪神JFを目指すのなら、一番ローテーション的に調整しやすい黄菊賞かデイリー杯2歳Sと思っていました。前走の競馬の感じだと、やっぱり1600mだと、2戦目でいきなりスピードに対応できるかなという問題もあったので、2000mの内回りでも道中の行きっぷりなどをもう1回だけチェックしてから、黄菊賞で結果を出せば、阪神ジュベナイルFへ行きたいですね。ローテーション的にも今回と同じローテになるので、そう考えて黄菊賞にしました。このレースに使いたいからという感じよりも先々を見て、という感覚の方が大きいです。
-:マイルに対しては、いきなり短くするよりはというところですかね。
池:そうですね。2戦目でいきなりマイルのG2デイリー杯2歳Sに挑戦するとなると、ペース的にもちょっとしんどくなって、結局前走みたいな競馬だと、道中からもっと促さないとダメになっちゃうし、そこで、この馬自体の精神的な部分で崩れてしまうのも嫌ですから。
-:中間の過ごし方はどういう感じだったのでしょうか?
池:前走後はずっと厩舎にいます。9月にこっちに連れて来て、ゲート試験からずっと置いています。
▲厩舎でリラックスした表情を見せるコロナシオン
-:前走のレースが終わってからの競走馬としての成長というのはいかがですか?
池:徐々にですが、体質は強くなってきているなという感覚はありますね。
-:昨年、体を診た時に「お母さんと比べると、ちょっと筋肉質でシッカリしているイメージがある」という話をされていたと思うのですが、その辺りの成長はどうですか?
池:前走後からちょっと腹周りがスッキリしているかなという見た目ですけど、中間の馬体重は増えているので、その分の筋肉量的なものがあるのかなと。冬場なので、どうしても牝馬でちょっと脂肪が乗りやすいというか、そういう部分があるので、そこだけ注意して調整しています。
牡馬との対戦 距離延長で挑む黄菊賞
-:レース1週前の動きですが、直線の伸びを感じたとの事ですが。
池:競馬を使って初めての追い切りだったので、松山ジョッキーを乗せて、もう一段階グッと伸びる手応えの手前で止めてくれ、という指示でした。馬場も雨の後で、中間のハロー明けだったのですが、ちょっと時計が掛かっていたかなという感じですね。
-:イメージとしては、もう少し時計を出す予定だった訳でしょうか。
池:いや、別に全体の時計とかは気にせず、馬の雰囲気で追い切りをやったので。当週はルメールさんに乗ってもらって、スイッチが入ったらちょうど良いかなという感じですかね。
▲最終追い切りはルメール騎手を背に快走(3頭併せ中央がコロナシオン)
-:調教をするに当たって、特徴や変わったことはありますか?
池:取りあえず、どこを乗った次の日とか、どこを乗った午後とかの歩きなどを見て、どれだけダメージがあるのか、ここを乗ったらダメージがないのか、ここをこれだけ乗ったらダメージがあるとか、そこだけを考えて色々なコースを乗って、結果負荷も必要ですよね。その組み合わせで、デビューの3週ぐらい前にようやくこういう調教過程を組み立てられたかなと。
今回のレースが終わってからも、疲れや調教をしてみて次の日にどれだけダメージがないかを見て、デビュー前よりも次の日の感じが良かったですね。その辺で体質が強くなっているというのを感じました。調教に関しては、次の日の歩様や硬さは、いつも注意して乗っていますね。
-:先生は体のバランスをすごく大事にされていますよね。
池:馬によりけりですけどね。コロナシオンの場合は、血統的に硬さがキーポイントなので、いかに疲れを残さず、かつ良い時と比べるかということですね。
-:レースのメンバーレベルは上がりますね。
池:そうですね。さすがに、こうやってクラスが上がれば当然ですが、メンバーもドンドン強くなっていくので、一つ一つクリアしていけば良いかなと。僕のイメージでは来年のクラシックで、一番はオークスの舞台に万全の状態で立たせてあげたいなという気持ちが大きいです。
-:目標はオークスに向かって、2400mの体をつくっていくイメージなのですね。
池:そうですね。馬の体の成長を見ながらやっていって、そこに一番良い状態で迎えられれば良いかなとは思っています。あんまり調子良くないのにガンガン使って、変なレース選択は出来ないですしね。どうしてもまだ体質が弱いので、徐々に徐々に、本当に徐々にですが、入厩してからずっと右肩上がりで良くなってきているので、そこは壊さず慎重にやっています。
-:普段の気性面はどうですか?
池:すごくおとなしいんですよ。でも、やっぱりスイッチは入るとすごく勝ち気なところがありますね。
-:勝ち気な部分とはどのようなところですか?
池:自分からは行かないんですよ。初めての経験の時はやっぱりすごく慎重になるのですが、あとは普段乗っていて、他の馬が暴れると一緒になって怒っちゃいますね。
-:そういった所はどうでしょう。まだ幼さが残るというか。
池:成長してくれると思います。普段は扱いやすいし、おとなしいですよ。
-:これから先、そういった部分をレースにベクトル向けてスイッチが入るようにというところですね。
池:賢い馬ですからね。多分賢いから、そうやって無駄なことに力を使わないのでしょう。けど、たまに怒ったりするのですが、それも段々馬が分かってくると思うんですよね。今は寒くなってきて、時季的にもちょっと馬が元気な頃なので、多分そういうのも影響していると思います。
「新馬戦ではこっちが思っていたよりもはるかに超えるパフォーマンスを見せてくれたので、今回もどういった競馬をしてくれるか僕自身が楽しみにしてます」
-:先ほど阪神JFという話があったのですが、現時点での目標としてはそこに。
池:視野に入れての黄菊賞なので、コース形態は全然違いますが、やっぱり競馬を経験するという意味でこのレース選択ですね。あとはローテーション的にも間隔的にも、このレース選択です。
-:まだ2歳馬で、この先を占う一戦になりますね。
池:前走後からどれだけ馬が変わっているか、調教云々じゃなくて競馬に対して、馬がそれだけ理解できてきているかというのを見たいので、それで結果が付いてくれば最高です。
-:重要な一戦になりますね。血統的にも競馬ファンがすごく注目している1頭だと思うのですが、改めて、この馬の強みやキャラクターはどんなところになりますか?
池:そうやって注目してもらっているというのはすごく調教師冥利に尽きるというか、やっていてもすごくやり甲斐があるというか、日々緊張しながらやっています。みなさんの期待に応えられるように、この馬が結果を出すというのは当然のように考えながらやっています。あとは馬も若いですし、体もまだ幼いですが、新馬戦ではこっちが思っていたよりもはるかに超えるパフォーマンスを見せてくれたので、今回もどういった競馬をしてくれるか僕自身が楽しみにしています。
普段の調教とはまた一味違うところがあるんだ、というのをね。この血統がそういう馬というのを(生産側から)聞いているので、見栄えとか調教とかじゃなくて、競馬で本当にすごいパフォーマンスを見せるというのを聞いていました。最初は、半信半疑だったのですが、新馬戦でその通りのレースをしてくれたので、今回もそういう面ですごく楽しみにはしています。
プロフィール
【池添 学】Manabu Ikezoe
父は池添兼雄調教師、一つ上の兄は池添謙一騎手という競馬界サラブレッド一族に産まれる。当初は騎手を目指すが、体格面を考慮した末に断念。父と同じ調教師を志す。
学生時代に馬術の勉強を始め、明治大学では馬術部のキャプテンを務めるまでに、その名を馳せた。2008年から父の元で厩務員となり、調教助手を経て、2013年に調教師免許を取得。自身の調教スタイルも馬術で培った技術を遺憾なく発揮。新進気鋭の厩舎として、多方面から注目を集めている。兄の謙一騎手は「弟の管理馬でG1を勝つという夢が出来ました」と語るように、JRA初となる騎手、調教師の兄弟コンビが誕生。夢の兄弟G1制覇へ向けて、日々、精進を続けている。