昨年の雪辱晴らし障害G1連覇へ オジュウチョウサン
2016/12/22(木)
中山グランドジャンプでG1初制覇を飾ったオジュウチョウサン。昨夏からコンビを組む石神深一騎手とともに、二人三脚でビッグタイトルを手に入れた。東京ジャンプS、東京ハイジャンプと向かうところ敵なしの強さで、春秋障害G1連覇に王手をかけたと言っても良い。この馬の強さを一番近くで感じている石神騎手に、中山大障害への意気込みを語ってもらった。
第一印象は「気の悪い馬」だったNo.1ジャンパー
-:オジュウチョウサン(牡5、美浦・和田郎厩舎)とは昨年の6月からコンビを組まれていますが、最初に跨った時の印象を聞かせてください。
石神深一騎手:気の悪いところがある、というのが第一印象ですね。攻め馬に乗せてもらいましたが、緩くてまだまだ完成されていなかったので、良くなる余地があると感じました。
-:精神的な気の悪さというのはどういったものだったのですか。
石:最初に乗った頃は、走るのも嫌、飛ぶのも嫌、競馬でも出来れば走りたくない、全てが嫌々という感じでしたね。
▲オジュウチョウサンの追い切りに跨る石神騎手
-:その後も石神騎手が付きっきりで調教に乗られていましたね。
石:何回か乗って、体を一杯に使えないから馬も走る方に気が向かないのでは?と思ったので、まずは体を使えるように調教をしました。しばらくすると、体をうまく使って動けるようになってきて、気持ちの面でも走りたいという前向きさが出てきたのです。
-:体の使い方で変化を感じたのは、いつぐらいからですか?
石:去年の中山大障害(6着)ですね。中山大障害から体がだいぶしっかりしてきて、トモに力が付いてきたのが感じられるようになってきました。それでもまだ一所懸命走っていなかったので、今年はメンコの耳あてを外しました。
-:それまでは気持ちを向けるために、耳付きのメンコを着けていたのですか。
石:やっぱり気が悪かったので、耳付きのメンコを着けていたのですが、このままじゃダメだと思ったのです。全力で走っていない中山大障害で6着に入りましたが、全力で走って6着だったら、諦めもつきますけど、まだ余力があるならレースで全力を出させるようにしなくてはならないと思いました。
-:年明け緒戦からメンコの耳あてを外していましたね。
石:イチかバチか外してみて、結果はニホンピロバロンの2着に負けてしまったのですが、すごく良いレースが出来ました。調教で外すと、ときおり悪さを見せるのですが、競馬では逆に良い方に出ましたね。
-:その次のレースから3連勝、さらに馬が良い方に変わってきたタイミングというのは感じましたか?
石:馬に自信が付いてきたのか、飛越も勝手に馬が合わせて飛んでいく感じで、集中力がかなり付きましたね。障害レースって3~4分走っているわけじゃないですか。その中でどこかで気を抜いたりしていたのが、ゴールするまで集中して走れるようになりましたよね。
▲3連勝となった東京ハイジャンプ 鞍上も笑顔を見せる
人馬ともに初のビッグタイトル 眠っていた能力が開花
-:石神騎手にとって初めてのG1タイトルとなった春の中山グランドジャンプですが、レースに向けての手応えは感じていらっしゃったのですか。
石:ステップレースが、すごく強い馬だと思っていたニホンピロバロンに1馬身1/4差でしたからね。斤量もオジュウの方が1キロ重かったですし、本番は相手がサナシオンでも好勝負できるだろうという気持ちがありました。
-:中山グランドジャンプを振り返っていただけますか。
石:前走の失敗を踏まえて、いかにスムーズに競馬をさせることだけを考えていました。向正面で外回りに出た時に手応えが良くて、サナシオンとの距離もそこまで離れていなかったので、差し切れるかもしれないと思いました。レースでもスムーズに行けたことが勝ちに繋がりましたね。
-:改めて、G1初制覇した気持ちはどうですか?
石:勿論、嬉しいです。ただ、やっぱり未勝利でもG1でもレース中にやることは一緒なので、勝って嬉しい気持ちはどんなレースでも変わらないです。
-:ずっと調教を付けてきて、思い入れも人一倍ありますよね。
石:僕は普段、結構厳しく攻めますので、それで結果を出してくれたらやっぱり嬉しいですよね。
▲悲願のG1制覇 担当厩務員とがっちり握手
-:その後も重賞を勝ちましたが、今回の調整過程についてお伺いしたいのですが。
石:11月20日ぐらいに厩舎に帰ってきたのですが、東京ハイジャンプのダメージはほとんどなかったので、すぐに乗り込めましたし、追い切りの動きも良かったですよ。
-:現在のオジュウチョウサンを調整する時に気を付けていることはありますか?
石:何が何でも落ちないように気をつけています(笑)。1回落馬をして放馬してしまった時に走り回ってしまったので。ケガはさせられないですからね。
-:ここが変わってきたら、さらに良くなるという点はありそうですか?
石:いや、もうほとんどないです。普段はたまに立ち上がったりしてうるさいですけど、そういう元気があるから競馬で走れているのかなという感じもしますからね。このまま無事に走り続けてくれるのが一番です。
-:去年は手応えを掴むきっかけになった中山大障害ですが、今年の意気込みをお願いします。
石:王者として挑む一戦ですが、ここでもやることは一緒です。この馬なら結果を出してくれると信じていますよ。
-:石神騎手も今年14勝を挙げて、障害リーディングのトップです。リーディングに向けての思いを聞かせてください。
石:やっぱり、JRA賞はジョッキーをやっていれば誰でも欲しいと思いますし、獲れたら最高ですけど、1つ1つの積み重ねで初めて獲れるものですからね。ここまで結果を出してくれた馬たちに感謝して、毎週、勝つための努力を続けていきたいと思っています。
プロフィール
【石神 深一】 Shinichi Ishigami
01年3月に騎手デビュー。初年度から4年連続で二桁勝利を挙げるなど順調なスタートを切るも、落馬による怪我の影響もあり、騎乗数が減って11年には勝ち星が0となってしまう。07年より障害騎乗を始め、13年新潟ジャンプSをアサティスボーイで勝ち、重賞初制覇。その後も障害で安定した成績を収め、今年の中山グランドジャンプをオジュウチョウサンで制し、悲願のJG1初制覇を遂げた。今年は14勝を挙げてリーディングトップに立っており、障害のトップジョッキーとして地位を築き上げている。